第14話 王女様と不良
ある夜、雄一が家に帰ると、リリィが10代のやんちゃな少年たちを連れ込みゲームをしている。
「おい、リリィ、彼らは何?」
「この間、近くの公園で絡まれましたので異世界の魔法で少し遊んであげましたら、皆さん下僕になりたいって仰るから、わたくしの衛兵にして差し上げましたの」
「要は力でねじ伏せたってわけか……」
雄一はリリィが警察の厄介にならないことだけを心配した。
「雄一、わたくしこの少年たちと冒険者パーティを組みましたの。パーティ名は『ブラック・プリンセス』ですのよ!」
「いや、それ多分、冒険者パーティじゃないと思うよ……」
雄一はおそらくリリィが不良集団のトップになっているのだろうということを理解した。
少年たちとリリィで騒がしいリビング、そこにかおりやクリスも帰宅する。
「どうしたの? 騒がしいけど」
「リリィのお友達らしいんだ」
雄一はこのままたむろされたら困ると思い、リリィや少年たちに寝室のテレビでゲームをするように伝えた。
「ったくうるせぇな、このインテリメガネが!」
「なんだとクソガキ、口の利き方に気をつけろよ!」
生意気な少年たちにキレそうになる雄一であったが、かおりとクリスに抑えられ、なんとか冷静さを保つ。
「あなたたち大人しくなさい! あのインテリメガネは怒らせない方がよろしくてよ」
「そうなんすか? ただの金持ちサラリーマンじゃないんですか?」
「あの男は唯一わたくしを飼いならしている黒執事。わたくしを程度の低い人間のように眺めるあの蔑んだ目つき、わたくしもゾクゾクしてしまいますわ……」
少年たちはリリィに言われて雄一を思い出すと確かに高級そうなメガネにスーツ、それにマッチョな外国人のお付きとモデル級の彼女、加えて彼女がいるのにリリィまで飼いならしていると聞いて、少し恐ろしくなってきた。
「ねぇ、リリィさんこの部屋ってリリィさんの部屋なんすか?」
「いいえ、雄一の部屋ですわ!(元々は)」
少年たちは部屋に入って驚愕する、部屋中に散乱している銃器類、そして本棚には無数のBL本……。
(あの人、両刀使いな上にこの武器の類、絶対にマフィアか何かだ……)
少年たちは最近リリィが趣味で集めだしたモデルガンを見て、完全に本物の銃器と勘違いした。
「リリィさん、さっきのマッチョな外国人のおじさんは家族なんですか?」
「いいえ、クリスは雄一のボーイフレンドですわ!」
リリィは異世界人とバレないようにまたもや適当に誤魔化してしまった。
「え、あのモデル級の彼女やリリィさんだけで飽き足らず、あのおっさんとまで……」
少年たちは完全に入ってはいけない領域に足を踏み入れたと恐怖に怯える。
「おい、今日はもう遅いから君たちも泊って行けよ!」
雄一はさっき少年たちにキレたことを大人げないと思い、一晩くらい泊めてやろうと声をかける。
「い、いえ、俺たち帰って勉強しないといけないんで……」
少年たちはそそくさと部屋を出ると逃げるように帰ってしまった。
「最近の不良ってちゃんと勉強するんだな……」
雄一は時代が変わったのかなと自分が少しおじさんになったと思うのであった。
以降、『ブラック・プリンセス』は解散となり、少年たちがリリィの元に現れることもなくなったのであった。
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