第10話 王女様・シンデレラにムカつく

 ある晩、いつものようにリリィが雄一に職場であった話をしてくる。


「わたくし今日嫌なことがありましたの?」

「どうしたの?」


 珍しく職場の不満を言うリリィに雄一は理由を聞いてみた。


「今日、『シンデレラ』という庶民から成り上がった姫の役をさせられたのですが、わたくしあのシンデレラという成り上がりの小娘がどうも好きになれません!」


「いや、一般的には多くの人はシンデレラみたいなストーリー好きだから……」


 雄一は怒っている内容があまりにくだらないので適当に返事をする。


「わざと靴を脱ぎ捨てて逃げるあの憎たらしいったらありゃしない!」

「完全に悪役な王女様のセリフになってるじゃない。気をつけないと職場クビになるよ!」


 雄一はリリィが解雇されないように過激な発言は控えるように促した。


「ところで以前にお願いしました殿方同士が戯れる様子を描いた本はいつ買ってくださるの?」

「いや、それ完全に却下だから……」


 こうしてなかなか異世界に帰れない王女リリィであるが、少しずつこの世界に溶け込んでいくのであった。

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