第9話 王女様・秋葉原に行く

 とある休日。


「雄一、お願いがあるのですが、殿方同士が戯れる様子を描いた本が欲しいのです!」

「いや、なんか言い方上品にしてるけど、要はBL本だろ! 買うなら自分のバイト代で買ってくれ。却下だ」


 雄一は好奇心でどんどん腐女子化するリリィを危惧して敢えてBL本は却下した。


「仕方ありませんわ! 雄一と大司教の実演で我慢しますわ!」

「なんで俺があんなオッサンと交わらなきゃいけないんだよ! それ、我慢するのは俺じゃねぇか!」


 雄一は呆れたが、リリィに電気街を見せてみるのも悪くないと思い、リリィを車に乗せて一緒に秋葉原まで向かった。


「これが、アキバですのね!」

 

 リリィはゲームやアニメが好きなので、いつも以上にテンションが上がっている。


 そこにメイド喫茶の店員が寄ってくる。


「ご主人様、うちのお店にお帰りになりませんか?」


「なんですの、この小娘は! うちのお店に帰る? 日本語がおかしいですわ! メイド長を呼びなさい!」

 

 日本人に日本語がおかしいとキレる異世界の王女。

 雄一は恥ずかしいので、リリィを引っ張り、メイドさんから離れた。


「リリィ、ダメだって! 彼女たちはわざとメイドを演じているのだから」

「わかってますわ。あんなお店に行ったら萌え萌えキュンですもの」


 リリィは雄一に向かってハートマークを作る。


「……わかってて、やったのか?」

「そうですわ。王女様ジョークです」

「いや、ネタとはっきりわかるジョークにしてくれ……」


 雄一はだんだんリリィが良くも悪くも賢くなってきていることに不安を感じた。


「そういえば雄一、わたくし『魔○使いの夜』と『月○』のゲームソフトを買って欲しいのです」

「この間、違うの二つ買ってあげたじゃない!」

「仕方ないのですわ、奈須き○こ先生ラブですの!」


 雄一が思っている以上にマニアとしてレベルを上げていくリリィ。


 しかし、雄一はBL本を買ってあげるよりはよいかと思い、ゲームソフトを買って家に帰るのであった。

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