第6話 王女様のバイト

 異世界帰還に失敗した王女様と大司教。


 そこから数週間が経ち、異世界から迎えが来ない王女と大司教は仕事をすることとなった。


 あまり詳しい経歴も書けないため大司教はクリスという名で工事現場で働き、王女リリィは、まんまキャラが活かせるということでディ〇ニーランドで王女様のキャラで働くこととなった。


「それでね、ネズミの被り物に入っているサイトウとかいう女が仕事後に客の悪口ばかり言って面白いんですのよ!」

「いや、そういう話は絶対に余所で言っちゃだめだからな……」

 雄一は夕飯時に楽しそうに仕事の話をするリリィを見て、少しはこの世界に馴染んでくれてよかったと思った。


「そういえば、明日はかおりとディ〇ニーランドにデートに行くことになったんだよ。お前の出勤時間と同じころに行くから、一緒に車で職場まで送るよ!」

「あら、かおりというのはどこの貴族の娘ですの?」

「いや、貴族の娘ではないけど……」


 二人が話していると大司教・クリスが帰ってくる。


「クリスさん、明日は付き合っている彼女とディ〇ニーランドにデートに行くのですが、クリスさんは明日はどうされるのですか?」

「私は職場仲間と競馬場に行く約束してますんで……」


 クリスは競馬新聞と赤鉛筆を持ってリビングで真剣に明日の予想を始める。


(このオッサンもこの世界に馴染んできたな……)


 そして翌日、雄一はリリィを後部座席に乗せて、かおりを迎えに行く。


「あら、雄一、この子がホームステイで預かっているという留学生の子? どこの国の子だっけ?」

「フランス、いや、オランダだったかな……」

 雄一はリリィの留学生設定が曖昧だったため返事に窮する。


「正確にはリミッタ王国ですわ!」

「リミッタ王国? 聞いたことないわね……」

 

 かおりは不思議そうな顔をする。


「あなたがかおりね。とても綺麗な娘だわ!」

「あら、ありがとう!」

 

 かおりはモデルをしていて、顔が綺麗なだけでなく長身でスタイルも抜群である。


「リリィさんもとても可愛らしいわ! お人形さんみたい!」

「ここに来るまではもっと美しかったのですが、髪型を変えられたり、洋服を変えられたり、雄一好みの女に変えられてしまいましたの……」

「え、雄一、どういうこと?」


「たまにおかしなこと言うけど、気にしないで……」


 雄一もだいぶリリィの扱いに慣れ、多少おかしな言動があっても受け流せるようになっていた。


 ディ〇ニーランドに着くとリリィはバイトに向かい、雄一とかおりはデートを楽しんだ。


「そういえば、リリィさん行きの車の中で夜のパレードで大サービスしてやるから、必ず見ていけとか言っていたわね」

「……、そうだっけ……」

 雄一は嫌な予感がした。


 テクニカルパレードが始まるとリリィはお姫様の格好で現れ、お客さんたちからキレイ、キレイと大絶賛されていた。


「あら、リリィさん本当に綺麗! 本物のお姫様みたい! 見て雄一!」

「うん」


(本当にお姫様だからな……)


 雄一がそんなことを思っていると、リリィがぶつぶつ何かを唱えたかと思うと複数の魔法陣が浮かび上がり、リリィは夜空に向かって火炎魔法をぶっ放した。


「スゴイ! リリィさん凄いわ! どういう仕掛けなのかしら!」

 

 かおりもお客さんもリリィの魔法が演出だと思い、リリィは大歓声に包まれていたが、雄一だけはいつか大事故を起こさねばよいがと心配するのであった……。

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