第4話 王女様と初詣
1月1日、元旦。
雄一はリリィにこの世界が新年を迎えたことを教え、朝は一緒におせちを食べることにした。
「雄一、新年のお祝いの食事がこんなちんけな箱に入った料理ですの。わたくしは王女ですよ!」
「おまえ、この世界ではただの無職の女だからな! 嫌なら食べなくていい!」
雄一がリリィからおせちを取り上げようとするが、リリィはおせちの器を抱きかかえ抵抗し、結局は完食してしまった。
「愚民の食事でしたが、まあ、お口に合いましてよ!」
「おまえ、絶対に女王になったら民衆に革命を起こされるタイプだな……」
二人はおせちを食べた後、初詣のため浅草の浅草寺に向かった。
雄一なりにリリィにこちらの世界の思い出を作ってやろうと思い、レンタル着物を予約し、初詣に出かけた。
「雄一、この窮屈なドレスはこの国の正装なのかしら?」
「まあ、そうだな」
リリィは元々美人で気品はあるため、着物はよく似合っていた。
そして二人は初詣の参拝のために列に並んだ。
「雄一、わたくしは王女です。この庶民どもに先を譲るように伝えなさい!」
「いやダメだって! お前もこの世界では庶民なんだから!」
「なんですって! この国の王と話をさせなさい!」
「いや、マジで捕まるからやめてくれ!」
なんだかんだ、リリィがおしゃべりなこともあり会話が絶えないうちに参拝の順番が訪れた。
「わたくしの世界の神と随分と姿が違うのね。あと、禿げた方の多いこと、この世界の神に祈ると禿げるとかあるのかしら?」
「いや、あれは禿げてるわけではないから……」
雄一が参拝の作法を教え、リリィも熱心に何かを祈っていた。
「何を祈ったの?」
「雄一、あなたのような庶民が王女の願いを知るなど恐れ多いと知りなさい!」
リリィに叱られ、雄一は聞くべきではなかったと後悔した。
「ところで雄一は何を祈ったのかしら?」
「俺はお前が早く異世界に帰れるように祈ったよ」
「まあ殊勝な心掛け! わたくしの世界から使者が迎えに来たら、雄一に褒美を与えるように伝えますわ!」
「いいよ、リリィの世界のお金って、どうせこっちじゃただのおもちゃになっちゃうから……」
二人は初詣を済ませ、マンションに帰るのであった。
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