それだけの覚悟を持った王女
『この方には、きっと何かある。その予感があるのです』
なぜそう思うのか、明確な根拠はなかった。ただ『そう感じるから』としか言いようがなかった。それでもなお強いて表現するなら、
『この方には裏表がない。その上でこの大きな力に溺れていない』
とでも言えばいいだろうか。
しかしそれさえ、決して<明確な根拠>とは言えないだろう。だからこそ自身の存在そのものを賭して確かめるのだ。
レオーナはそれだけの覚悟を持った王女だった。
それもあり、
「もしよろしければ、<言葉>の使い方をご教授いたしましょうか?」
傷の手当の準備を待っている間にも、彼にそう提案した。これももちろん、彼という存在を推し量るためのいわば<観測気球>である。
が、
<水泳がちょっと得意なだけのただの高校生男子>
なので、
「お願いします! 今のままじゃなんか恥ずかしいし」
と、これといって難しく考えることもなく提案に乗った。そこに込められた意図などを推測できるほど難しい境遇にもいなかったし、そんな教育も受けてはこなかったからだ。
「分かりました。そうですね。ではまず、『伝えたいと思うこと』と『それ以外のもの』とを明確に意識するようにしましょうか。非常に乱暴に噛み砕いて申し上げるなら、それが無意識にできるようになるといいでしょう。地上の人間達も、すべてを口に出してるわけじゃないと聞きます。口に出すことと出さないことを無意識のうちに区別してるわけですね」
穏やかにレオーナが告げると、
「あ、何となく分かったかも……!」
彰太はひらめくものを感じた。その上で、
「これは聞こえてますか?」
と問い掛け、同時に、
『ホントに可愛いコだな』
などと考えていたりもした。するとレオーナが、
「はい、聞こえていますよ」
応えてくれたものの、特に変わった様子もなかった。
「俺が今、考えてたことが分かりました?」
改めて問い掛けると、
「いえ、そちらは伝わってきていません」
応えて、
「素晴らしい! こんなにすぐにコツを掴めるとは、大変に優秀な方ですね!」
両手を合わせて称賛してくれた。
もっとも、本当に伝わってないのか、それとも伝わってないふりをしているだけなのかは、彰太には分からない。分からないものの、
『まあでも、なんかの時に不意打ちで聞いたりとかしたら分かるかな』
と考えて、今のところはよしとした。それにこれが夢ならこんな風に簡単にできてしまっても何も不思議もない。夢なんだから<ご都合主義そのもの>とも言えるだろうし。
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