ミリス
『も…! 申し訳ございません! 大変なご無礼を……!!』
と謝罪されて、
「あ、うん。大丈夫だから。気にしてないから」
ミリスの狼狽えぶりにむしろ
そんな彼にレオーナが、
「改めて紹介いたします。これは私の侍女のミリス」
そう告げた後、今度は、
「ミリス、この方は、フカミ・ショータ樣。先ほども言った通り私達をお救いくださった方です」
ミリスに彼を紹介したのだった。するとミリスは、明らかに動揺した様子ではありつつ、
「この度は、レオーナ様をお助けいただき、私からも深くお礼申し上げます」
改めて謝礼を述べる。これにも彰太は、
「いやいや、ホントにたまたまですから……!」
ついつい謙遜してしまう。とは言え、その様子に、周囲の兵士達は、露骨に顔には出さないようにしていつつも、やや怪訝そうな表情にもなっていた。こうして強く謙遜するという振る舞いが理解できないのかもしれない。また、礼儀もなっていないように思えたのだろう。仮にも一国の王女に対して。
さりとて、当のレオーナ自身は、彰太が自分達とは習慣も違う種族であることを承知しているのもあって、礼儀云々については気にしていないようだったが。
ミリスも、気にはしつつも主人であるレオーナが平然としている前で客人に対して礼儀を云々することもできず、平静を装ってはいた。もちろん、玄関ホールにようやく収まっている巨大なサメである彼を恐れてもいつつ。
するとレオーナは、
「ショータ様には私どもの部屋では狭すぎますね。こちらにどうぞ」
と、自ら彼を案内した。そこは、玄関ホールよりもさらに大きな広間だった。パーティ用のホールなのだろう。
そうして、
「ショータ様、ただいまより傷の手当てをさせていただきます。少々お待ちくださいませ」
と告げて、
「ミリス、医務係を」
命じ、ミリスは、
「ただいま!」
急いでホールから出ていった。
ホールには、彰太とレオーナと、警護の兵士達数人。レオーナは穏やかな笑顔を浮かべているものの、兵士達の間には緊張感が漂っている。ここでこの巨大なサメが暴れたりすれば、対処は容易ではないと分かっているからだろう。
にも拘わらずレオーナ自身は平然としていた。
先ほども言ったように、第四王女という、必ずしも国にとっては重要とは言い難い立場である自身の役目を十分に承知しているからだった。ここでもし犠牲になることがあっても、この不可思議な<ショータ>なる者について可能な限りの情報を引き出すことを決意しているからだ。
加えて、
『この方には、きっと何かある。その予感があるのです』
と考えていたのだった。
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