それが私の役目なのです

『姫様!? それは危険です!』


彰太しょうたを自身の別荘に招待すると言うレオーナに対して、兵士達は当然のように思いとどまるように促そうとした。けれど、レオーナは、


「私には立派な姉様が三人もいらっしゃいます。私に万が一のことがあっても姉様がいらっしゃればフォバハイン王国は安泰なのです。だからこそ私は、リスクを取っても国にとって益となる情報などを手に入れなければいけません。それが私の役目なのです」


きっぱりと告げてみせた。<第四王女>という、普通であればおよそ国を背負って立つ立場になる可能性は極めて低い存在でありつつ、逆にその立場だからこそできる形で国の役に立ちたいという覚悟がそこには見えた。


もっとも、そのやり取りは彰太には伝わっておらず、しかし兵士達が自分のことを怪しんでいるんだろうというのは察せられて、


『まあ、それが普通なのかな』


とは思ってしまった。そしてそう思っていることも、レオーナには伝わってしまったが。


これもまた、彼女からすれば、


『大恩ある方に対して本当に申し訳ない話です……』


と思わされてもしまう。


そういう部分からも、せめて傷の手当てをさせてもらえればというのもあったのだ。


むろん、単純な<興味>もあってのことだが。


この、


<普通は知っていて当然のことを知らず、それでいてとても勇敢で大きな力を持つ者>


について。


『彼を味方にできれば、我が国にとっても大変な力になるかもしれません』


という打算も、正直言ってある。あるが、これ自体、末席とはいえ国を差配する立場にある者の一人である以上はやはり考えにあって然るべきものなのだろう。


「レオーナ様がそこまでおっしゃるのであれば……」


美しく聡明ではあるものの、だからこそ頑固な一面もある王女に対して、兵士達は折れるしかなかった。ましてや国益のことを考えてのものであるなら、一介の兵士に口出しできることでもない。


「……」


兵士達は顔を見合わせ、


『万が一の時には我らが命に代えても姫様をお守りする』


と互いに決意した上で従うこととした。


「それではフカミショータ様、こちらへ」


レオーナに促され、彰太も、


「はい」


と素直に従った。兵士達には少し申し訳なさも感じつつ。


ただ、


「あ、俺のことは<彰太>でいいですよ。<深見>は、え~と、あ、そう、<部族名>みたいなものですから」


改めて告げる。これにはレオーナも、


「分かりました。ショータ様」


笑顔で応えてくれた。


こうして彰太はレオーナの別荘へと向かうことになったのだった。


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