第3話 雨はあがってもまた降りしきる
梅雨入りが正式に発表された昨日から、今もなお雨が降り続いている。
普段なら、住宅街を抜けて少し開けたところに出ると、その場所からは学校が見えるのだが、降りしきる雨で全く見えない。それほどに今日の雨は一段と強く降っている。
校門を通り、靴を玄関で履き替えて、教室へ向かっていく。何も変わらない、いつもの日常。今日もまた、雨の音にも負けないほどの騒がしさに囲まれるんだろうなと思いながら、教室の扉を開けた。
教室の中に広がる、とても違和感を覚える静寂。
扉を開ける前まではいつもの騒がしい教室だった。
だが、俺が扉を開けた瞬間に、その全ての声がピタリとやみ、生徒の視線は全て俺に集まった。
扉を開けた瞬間に勢いよく俺の周りに集まってきたり、例の噂が飛び交い始めたりすることはあったが、このように張り詰めた静寂な雰囲気になることはなかった。これまでとは違って、明らかに様子がおかしい。
その異様な光景を目の当たりにした俺の脳内では、ある光景がフラッシュバックしていた。嫌というほど見てきたあの光景にそっくりだ。
俺は何事もないかのように装い、自分の席の方へと歩き始める。
すると、静寂な雰囲気を壊さない程度の小声で、クラスメイト達はこそこそと話し始めた。
「あの地崎健樹って施設育ちなんでしょ?」
「そうらしいよ」
「『不幸の子』って言われてたらしい。近寄ると死んでしまうってさ」
「ほんと? 私、結構話しに行ったりしちゃったんだけど」
「今度お祓いでもしに行ったら?」
「そうね……。とにかく近づかないようにしなくちゃ」
一番近くで話していた内容が耳に入ってきた。
過去見てきた光景と綺麗に重なる現状に、過去のトラウマが引きずり出される。
俺の心はずっしりと重たい碇のように沈みこんだ。
俺は席の前についたが座ることなく、その場で立ち止まった。
「やっぱりかよ……」
周りに聞こえないくらい、小さく呟いた。
続けざまに周りの声が耳に入ってくる。
「『不幸の子』が教室にいるとかもうやばくない?」
「早くクラス替えにならないかなぁ」
「夏休みの間に転校とかも考えよっかな」
「それか、『不幸の子』の机とか椅子を廊下に出しとく?」
「あの机触るだけでも呪われそうなんだよなぁ……」
「とにかく早くあれから離れたい。あっ、心なしか体調が悪くなってきたような……」
そんな声を聞いても、俺は彼らに対して憎悪や嫌悪感を抱くことはなかった。その憎悪や嫌悪感など、とっくの昔に諦めに変えてしまっている。
席の前で立ち尽くしていた俺は、目を瞑って大きなため息をつく。一度落ち着いたうえで、一つ決心をした。
俺はそのまま席には着かずに、再び教室の外へと歩きだす。
「帰るのかな?」
「だったらラッキー! 今日一日は気にしなくて済むな」
「というか、さすがにもう学校には来れないだろ」
彼らの声にはもう殆ど耳を傾けることなく、そのまま扉を開けて教室の外に出た。
そして、職員室へ廊下をぽつぽつ歩いて向かった。
今は一限の開始前。職員室の端に、授業の準備をしていた担任の先生を見つけた。あちらも俺を見つけたようで、わざわざこっちまで駆け寄ってきた。
「どうした?」
「体調悪いので早退します」
「風邪か?」
「はい……」
「そうか。季節の変わり目でもあるし、気をつけろよ? お大事に」
俺は軽く会釈して、すぐに職員室を出た。そして再び廊下を歩いて、玄関にたどり着いた。
靴を下駄箱から取り出す。下駄箱を開ける音が、一限開始直前で誰もいないこの玄関に鳴り響いた。
外は先ほどから変わらず、視界を悪くするほど雨が強く降りしきっている。
その光景を見て、もうどうでもよくなっていた。
学校も、他人も、自分も。今はもう全てを放り出したい気分だ。
俺は手に持っていた傘を差すことなく、玄関から一歩、外へと踏み出した。そして、曇天の空模様を見上げた。
雨が髪も服も、全てを濡らしていく。
顔に落ちた雨粒が、頬を涙のように伝っていく。
俺は、そんな雨の中を一歩、また一歩と進んで、家へと向かった。
何年経とうと、あの場所から去ろうとも、繰り返すあの日常。
再びそこに戻ってしまうことに、どこか安心感すら抱いてしまう。
悔しいとか辛いとか。そんな思いはもう感じない。もう諦めてしまったのだから。
環境が変わっても同じなら、もう何をしようと現状が変わることはない。
だからもうこれで、希望を持ったり憧れを持ったりするのは終わりだ。
本の世界で、満たされなかったものが満たされるならそれでいい。
俺の青春という名の物語は今、終わりを告げた。
※ ※ ※
とても静かな日常がまた戻ってきた。不思議な出会いを経て、慌ただしく騒がしい日常が長く続いたためか、久しぶりに感じる。
誰一人として、俺を邪魔するものもなく、周りから声が聞こえてくることもない。
そんな理想のプライベートな空間から外に出なくなって、もう一週間くらいたっただろうか。
あの日、雨に打たれて帰った俺は、案の定風邪を引いてしまった。いや、正確には雨に濡れたのを利用して、風邪を引いたということにしている。風邪を口実にすれば、正当な理由で学校を休むことができる、所謂ずる休みというやつだ。
実際、大量の雨によって暗い気持ちが流されたのか、今は特別気分が悪いこともない。というより、こういうのに慣れ過ぎてしまっているだけだろう。
ずる休みしている間、俺はただひたすらに本を読み漁り、その本の世界の中に閉じこもっていた。そのため、もうすでに時間の感覚もなく、最後に寝た時間すらも記憶にない。
この前買った本のストックもかなり減って、もうすぐ底を尽きてしまう。そうなってしまえば、嫌でもこの空間からは出ざるを得なくなる。
『ピンポーン』
インターホンが家の中に鳴り響く。その音に気付いた俺は、壁掛けの時計を見て時間を把握した。
今は平日の昼間で、親は仕事のために家にはいない。本に栞を挟み、久しぶりに重たい腰を持ち上げ、部屋を出た。
「宗教勧誘かセールスか?」
『ピーンポーン、ピーンポーン』
「この時間帯、家に誰もいないことが大半だということに気づけよ……」
俺はそう文句を言いつつも、仕方なく玄関の扉を開けた。
「おっじゃましまーす!」
「……は、は?」
「何そのリアクション?」
もう一度言うが今は平日の昼間だ。
「女優からセールスマンにでも転職したのか? お前」
平日の昼間であるにもかかわらず、なぜか制服を着ていない天宮香苗は、何の前触れもなく突然に現れた。そう言う俺も、今まさに制服を着ないで家にいるわけだが。
「とにかく、家に入れてよ」
「……駄目だ」
「なんで?」
「そもそも要件は?」
「学校のプリント届けに」
「それなら今渡せばそれで済むだろ? それにそもそもお前、別のクラスだろ。あと、何でこの時間に私服でこんなところうろちょろしてんだよ。それに……」
「その話は後、後。お邪魔しまーす」
「お、おい……」
彼女は俺の話を華麗にスルーすると、まるで自分の家かのようにずけずけと人さまの家に上がり込んだ。
セールスマンだろうが女優だろうが、いや女優なおさら、もう少し一般常識というものを身に着けてもらいたいのだが……。
俺は彼女をリビングに案内して、とりあえずソファに座らせた。最低限のおもてなしをすべく、冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出して渡した。
俺は彼女の正面にあるソファに腰を下ろした。状況が状況なのもあるが、やけにソファに座っても落ち着かなかった。
「聞きたいことは山ほどあるが……」
「面白かった本の感想とか?」
「そんなことは今聞きたくない……、と言えば嘘になるが、その話はとりあえず後だ」
「私がなぜここに、それもこのタイミングで来たか。一番気になるのはそこじゃないの?」
彼女の目も口調も、今までにないほど真剣そのものだった。
「休んだのは本を読みたかったからで、ここに来たのはお勧めの本を聞きたかったからよ」
「お前なぁ……」
真剣そうな面持ちとは対極の残念な理由に、嘆息を漏らす。
「そんな理由で、わざわざここに来ないでしょ」
だが、再び発した言葉の語気の強さから、本当に真面目な話をしようとしていることを察した。
俺は姿勢を正して、再び耳を傾ける。
「健樹君の家を知ったのは先日。偶然、用事で通りかかった際に、表札を見つけた」
「ちょっと待て、お前、なんで……」
俺は彼女の言葉に動揺を隠せなかった。なぜなら、偶然では俺の家の表札を見つけることは出来ないからだ。
「健樹君が学校に来たら、真実をすべて聞き出す予定だった。久しぶりに登校したら、教室の雰囲気がやけに重たくて、明らかに何かあったんだなと思った。そのことを周りに聞こうとしたら、なぜかとても避けられて聞けなかった。だから、健樹君に直接聞こうと思ったけど、教室に姿はなかった」
俺はは足を聞きながら、ずっと床をぼんやり見つめていた。彼女と目を合わせるのがとても気まずくて、とても視線を上げられない。。
「あれから今日まで、毎日教室を確認しに行ったけど、やっぱりそこに健樹君はいなかった。メールしても電話しても反応ないし、絶対何かあったんだなってそこで確信したの」
あの日、家に帰ってきた俺はスマホの電源を切っていた。きっと、俺の異変に彼女が気づくだろうということなと思い、あえて会わないように連絡を絶っていたのだ。
「ちゃんと真実をいち早く健樹君自身の口から聞きたかった。そのために今、こうして学校を休んでここに来た」
その真実を伝えたくないために。
「周りから聞こえてくるあの噂は、一体何なの? 答えて……」
彼女の声が尻すぼみになって、最後の方はどこか湿っぽかった。
俺はその彼女の異変に気付いてすぐさまに視線を上げた。
「なんで、なんで泣いてるんだよ、お前……」
彼女の目から流れる涙の意味を俺は理解できなかった。
ただ成績順位が一つ上で、一回一緒に本を買いに行っただけのただの他人に、彼女は同情しているのだ。
俺は静かに立ち上がり、タオルを手に取った。そして彼女に渡そうと、手を差し出
した時だった。
「っ!」
彼女は俺の胸元に飛び込んだ。そして、さらに泣き出してしまった。
「何でそこまで同情できるんだよ、お前……」
俺はそのまま彼女が落ち着くのを傍で見守リ続けた。
「お前、知ってたんだな……」
「知ってたって、何を?」
あれから二十分後。彼女の目の下は若干腫れていたが、もう泣き止んでいて、いつも通りの落ち着きを取り戻していた。
「うちの表札、名字が俺とは違うだろ。俺の両親の名字を知ったうえで、なおかつ本当の両親じゃないことを知っていなければ、この家には辿り着けないだろ」
「あなたと連絡先交換するときに、私がメッセージアプリの友達の数を馬鹿にした時のこと覚えてる?」
「あの時か……」
初めて会った日の放課後。
連絡先を教えるために携帯を差し出した際、彼女が勝手に操作してメッセージアプリを勝手に覗いたことがあった。
「その友達二人が両方フルネームで名字が一緒だった。普通に考えればこれが親であるという予想は簡単につくでしょ? けど、その名字は健樹君の『地崎』という苗字じゃなかった。そこで一つの仮説が立てられたんだけど、それが正しいと確信したのは学校で耳にした噂だった。だから気付いたのは結構最近のことよ」
両親の名字は『水沢』。だからこの家の表札には『水沢家』と書かれている。
「お前の言う通り、今の親は本当の親じゃない。それにここに来てからはまだ二か月ちょっとくらいしか経っていない」
「たった二か月?」
「食事の時もずっと自分の部屋にしかいないってのもあるけど、まだ二か月だからか、正直このリビングにどことなく違和感を感じてるんだよな……」
普通なら家のソファは座り慣れているものだが、俺はこのソファに座ったのは初めてだった。妙に落ち着かなかったのはそのせいもあったのだろう。
「食事は家族でテレビを見たり談笑したりしながらするもんじゃないの?」
「うちの親は二人とも働いてて、朝早くて夜も遅いんだよ。仕事で帰らなかったりすることも多いから、一人リビングで食事するくらいなら自分の部屋でいいやって。今日も帰ってこないって連絡はもらってる」
俺にとって、家族揃っての食事というのは全く馴染みがない。そのためか、一人の食事であっても何ら寂しさなどは感じなかった。
「さてと、行きますかね」
「今から学校行くの? もう今日の残り授業は一つくらいしかないけど……」
「何で今から学校行くんだよ?」
「え? じゃあ一体、どこに?」
「噂の真実が知りたいんじゃなかったのか?」
「知りたいけど……」
「それなら黙ってついてこい」
「わ、分かった」
予想外のことに天宮はいまいち追いついていない様子だった。
「とりあえず、玄関前で待っててくれ。俺は準備してくる」
俺はそう言って彼女を先に行かせた後、一度部屋に戻った。服を着替え、財布の中身を確認してポケットに入れて、この部屋を後にした。
※ ※ ※
幼い頃の記憶というのは、ぼんやりとしか覚えておらず、思い出として残っているのはほんの一部であることが多いだろう。だが、俺の幼いころの記憶は全て鮮明に思い出すことができる、というよりできてしまうという方が正しいかもしれない。
人の記憶は、衝撃の強かったものが残りやすい。楽しかった旅行の思い出であったり、何気ない会話から出た面白い話だったり、苦い恋の思い出だったり、愛犬を亡くしてしまったり。プラスのこともマイナスのことも衝撃の強いものほど残りやすい。
俺は大きなマイナスのことを幼いころから多く経験してきた。故に、幼いころの出来事でも鮮明に思い出されるのである。
俺は今住んでいる街から大きく離れた街で生を受けた。俺が生まれて間もなく母親は父親と離婚。父親はその後音信不通になり、それから母親が一人で俺を育てることになった。しかし俺が一歳を迎える前に、母親は精神的苦痛などが原因で自殺して亡くなってしまう。
俺はその後、親戚に引き取られ、そこで約二年間過ごした。だが、俺がその親戚の家に行ってから、周りの人間が立て続けに何人も、病気や事故で息を引き取ってしま
う。
「それもこれもお前が家に来たからだ! お前は不幸の子だ」
ある日の葬式のこと。親戚にそう言われた俺は次の日にある場所に連れていかれた。
「そんなことが……」
「まぁ、俺が来た途端に立て続けに起きたからな」
「でもこれじゃ、あまりに理不尽じゃない。健樹君には何一つ罪もないのに……」
「こればかりはどうしようもない。仮に本当に不幸の子なら、次は自分の番かもしれないという恐怖に襲われるだろうし、もしそうじゃなくても、可能性のある人を排除するに越したことはないだろうしね」
「でも……」
二人で家を出てから約一時間が経過した。俺たちは今、電車の中にいる。向かう先は、俺が最も長く過ごした地である。
「まだそこそこ幼かった俺は、それ以降『不幸の子』というレッテルを張られ、学校に行っても周りからは敬遠された。それが小、中と続いて、この先も続くのかなと思ってた時に、今の両親が俺を引き取ってくれることになって、引っ越しすことになったんだ」
引っ越すことになったのは、俺の今後を心配して少しでもリスクを避けるためというのもあったが、父親が転勤で名古屋に勤めることになったのが大きな要因だ。
俺を引き取るとなると、もちろん両親もそれなりのリスクが生じる。それを知った上で引き取ってくれた今の両親には、本当に感謝している。
「元居た地からは離れていて、俺のことは知っている人もいないはず。だからこの地なら静かに学校生活を送れると思ってた。けど結局、恐れていたことが起きてしまった」
学校では完全に邪魔者扱いされ、気味悪がられて変な噂が流れる。そんな時間が長く続いて、俺は慣れてしまったのだろう。本心では嫌だと思っているはずが、あの光景を見て少し懐かしいとすら感じてしまっていた。
「それもこれも全部、親戚の人が悪いんじゃない。健樹君はその人たちのこと、恨んだりしないの?」
「最初は恨んでいたけど、今は恨んでないな」
恨んだところで過去は変わらない。現実を受け入れなければ前に進むことも、ましてや前を向くことすらもできない。そう思って、心の中では受け入れてはいても、現実は非情だ。その過去が消えることはなく、経歴という事実が俺に変わらず付きまとってくる。俺はその呪縛から今も逃れられずにいる。
「まだまだ、到着まで時間あるしさ、本の話でもしないか?」
「え、でも……」
「こんな話してても暗くなるだけだろ?」
「そうだね……」
「最近出た本で、『世界の末端に生きる彼女』って作品あるんだけどさ……」
途中で電車を乗り換え、気づけば目的地に辿り着いていた。その間は本の話題で盛り上がり、まさにあっという間だった。
「着いたぞ」
名古屋を出てから約四時間。神奈川県の西部に位置する俺の生まれ故郷に降り立った。ここには俺のルーツが全て詰まっている。
「ここが、健樹君の生まれった故郷……」
「故郷は帰ってくるべき場所なんだろうけど、俺の場合は帰ってきてはいけない場所ではあるけどな」
「神奈川の西側っていうから結構山を想像してたけど、思ったより都会というか、賑やかなところだよね」
「遊ぶのにも苦労しないし、適度に自然もある。住むには不自由ない所ではあるな」
駅から見える景色には、ホテルやマンションなど比較的高い建物もあれば、奥の方には山も垣間見える。ゲームセンターやパチンコなど娯楽施設も多くみられ、学生が思い描くような青春を送るには適した地だろう。
駅から徒歩約二十分。ビルなどの高い建物が少なくなり見通しがよくなった。そんな場所に一見、幼稚園にも見える特殊な外観をした建物が見えた。その建物こそ、俺が一番長く長く過ごした思い出の家である。
俺はその建物のインターホンを一度鳴らしてからゆっくりと扉を開けた。
「お邪魔し……」
「きゃぁ~!」
「待て待て~」
玄関先で逃げ回る子供と追いかける大人の女性。約三か月ぶりに見た彼女は相変わらず忙しそうだった。
「お久しぶりです、福川先生」
「じ、地崎君? 一体どうしたの……?」
声の方を振り向いた福川先生が驚いた表情で尋ねる。
「ちょっとお話大丈夫ですか?」
「え、まぁ、大丈夫だけど、ちょーっと待っててね。こら~! 待ちなさい!」
そう言った先生は再び、子供を追って駆け出して行った。
児童養護施設。経済的な理由や虐待など、様々な理由で保護者と生活するのが困難、そして社会の支えが必要であると判断された児童が入所する施設である。
親戚の近親者の葬式の次の日、親戚によって俺はここに入所することになり、その日からつい三、四か月前まではここで暮らしていた。
子供の世話が落ち着いたタイミングで、福川先生は俺たちを応接室へ案内してくれた。この応接室に入ったのは、この場所に初めて来た日以来だ。
「ここが親戚の人に連れて来られたって場所?」
「そう。ここが俺が一番長く過ごした場所だな」
「そっか……」
世間のほとんどの人には縁のないこの場所に来て、一般人どころか芸能人の彼女はどう感じているのだろうか。
「ごめんなさい、待たせたわね」
「いえいえ」
仕事が落ち着いて、福川先生が応接室に戻ってきた。
「ほんと、びっくりしたわよ。まさか地崎君がすごい美少女連れて結婚報告に来るなんて」
「あの……、そもそもまだ結婚年齢に達してないですし、この人は……」
彼女がド天然なのはとっくの昔から知っているので、俺は特に驚くこともなく冷静だった。それに対して天宮は一瞬動揺したようにも見えたが、その後すぐに落ち着きを取り戻していた。
「天宮香苗です。彼とはただの同級生です」
「天宮香苗……。聞いたことあるような……」
「気のせいですよ、きっと」
きっと天宮は、自分が元子役であることに気づかれない寂しさと、話の話題をそらしたくないという気持ちとで、複雑な心境になっていることだろう。
「結婚報告じゃないとすると、お話って?」
「実は……」
俺は先生に、学校で起きた出来事についてを全て話した。その話を聞いた福川先生は驚いていたのと同時に、どこか悲しそうな表情も浮かべていた。
「嘘みたいな出来事ね……」
「僕もそう思いました。もう過去に囚われなくてもいいんだって、羽を伸ばせる地をようやく見つけられたって、解放感に満ちてました。けど、そんな平和な時間はほんの束の間でした」
「でも待ってよ。一体どこから、誰が地崎君の過去を流したって……」
「先生?」
先生は突然、言葉を濁らせた。思い当たる節があるに違いない。
実は四時間もかけてここにやってきたのは、俺の過去を知る人物がいるのではないかということを聞くためでもあったのだが、どうやら当たりらしい。
「何か知っているんですか?」
「あくまで可能性の話だけど、地崎君の学校に、過去ここにいた人物がいるかもしれない」
「本当ですか?」
過去にここにいた人物であれば、俺の過去を知っていても全然不思議ではない。
「地崎君もよく知っている人物よ」
「それって一体……」
福川先生の言葉を聞いて、俺は固唾を飲んだ。
「
「だ、大地⁉ もちろん、覚えてますよ」
俺はその名前を聞いて軽く体が震えあがった。決して恐怖心などではない。ただこの名前を久々に聞いて、懐かしさを強く感じたからだった。
「ねぇ、誰なの? その染谷って人」
俺のリアクションを見てか、天宮は不思議そうに尋ねる。
「この施設の元入居者で俺の旧友……」
染谷大地。正真正銘、俺が十六年間生きてきた中で唯一の友達であり、親友であった。
「彼が今から七年ほど前に、引き取り先が見つかったのは覚えてる?」
「はい」
その親友である大地は、約七年前に引き取られ、その後は連絡が取れていない。そして彼がどこにいるのかも全く分からずにいた。
「うろ覚えではあるけど、彼は確か……。いやちょっと待ってね。もしかしたら彼の資料まだ残ってるかも。ちょっと待っててね」
そう言った先生は席を立って応接室を出ていった。
応接室に残された二人の間に沈黙が流れる。俺はその間、大地とのここでの思い出に思いを馳せていた。
「それで、その人ってどんな感じの人だったの?」
その沈黙を遮るように天宮が質問を投げかけた。
「あいつか……。一言でいうなら馬鹿、かな」
「はい?」
「何読んでるの?」
約十年前。俺は当時小学校に入学したばかりのころ。施設にある図書室で一人本を読んでいるところに、初めて声をかけてきたのが大地だった。
「数学、の本……」
「数学って何?」
「小学校に算数ってあるよね? 中学校からはそれが数学って名前に変わるんだって」
「へぇ……、って中学校? まだ僕たち小学生だよね?」
「小学校の内容ならもうやった」
「え、もう?」
施設に入った俺は、あまり周りの子供たちとは話さなかったため一人でいることが多かった。一人でぼーっとしている時間に嫌気がさした俺は、たまたま施設内にあった図書室で本を読むことにした。
最初に手に取ったのは小説だった。しかし小説には、当然のように漢字が使われていて、小学校にまだ行っていなかった俺にはとても読めなかった。だが俺は、その本に書かれている内容がとても気になって仕方がなかった。
その日を境に漢字の勉強を始めた。しばらくして漢字は少しずつ読めるようになったが、今度は言葉の意味がさっぱり分からず、本の内容が全く理解できなかった。
本を理解するためには漢字だけでなく、多くのことを勉強しなければならない。俺はそう気づき、図書室に通いながら勉強を続けていたのだった。その結果、小学校に入るころには大雑把ではあるが国語や算数などの学習を終えていた。
「だから、次は中学校の勉強しようかなぁって」
「君、名前は?」
「地崎健樹」
「俺は染谷大地。あのさ、僕に宿題教えてくれない?」
「えっ……」
大地は背中に隠し持っていた算数のプリントを俺に差し出してきた。
「お願いだよ。教えることも勉強だって先生言ってたし」
「一年生の内容を教えたところでなぁ……」
「お願いします!」
「……はぁ。それで、どこが分からないの?」
「え、本当に教えてくれるの?」
「教えてほしいって言ったのは君だろ?」
「やった! ありがとう」
「いいから早くやるぞ。早く本を読みたいんだから……」
それからあまりにも要領の悪い大地に苦戦しながら、遅くまでともに時間を過ごした。その結果、その日は確か、結局本を読めずに終わった気がする。
「小学校一年の頃、それもあの当時は本当に序盤だったぞ。あの時は確か一桁の足し算のプリントだった」
「本当に序盤だ……」
「それから事あるごとに宿題を教えてもらおうと訪ねてきたんだが、それからも全く進歩せず」
「なるほど。それで馬鹿、ってことね」
「まぁでも、馬鹿は馬鹿でもほんとにいい奴だったよ」
「へぇ~」
「ごめん、待たせたね」
そんな話をしていると応接室に再び福川先生が戻ってきた。その手には何やら分厚いフォルダーが握られていた。
「これ、入居者記録なんだけど……」
そう言いながら先生はフォルダーの中から一枚の紙を取り出した。
「ほら、下の方。引き取り先が地崎君が今いるところの近くなのよ」
そう言って、福川先生は下の方を指差した。そこには確かに、俺が現在住むところのほぼ隣の町の名が記されていた。どうやら間違いないらしい。
「要するに、あいつが今回の件を引き起こしたと、先生は推測しているわけですね?」
「あくまで可能性の話よ。君らの関係はよく知っているし、もちろん疑ってはいないわよ?」
「僕も彼がやったとは思えません」
俺はそうハッキリと口にした。
「まぁ、まずは染谷君が同じ高校なのか。それを確かめないことには始まらないわね」
「そうですね」
俺は七年前にこの場所で別れて以降、大地とは一度も会っていない。俺も、そして彼も別れ際に思っていたことは、きっと今も変わっていないはずだ。
「正直なところ、私やここの職員たちも地崎君の心配はしてたのよ。小、中のこともあるしね。そして結局、場所が変わっても変わることはなかった。地崎君はそう思ってるかもしれないけど、私は今回は少し違うと思うんだけど」
福川先生はにやりと笑みを浮かべながら、俺から隣へと視線を移す。
「え?」
「地崎君の過去を知ってもなお、あなたの近くに居続けてくれる人がいる」
天宮がその言葉を聞いてうんうんと頷く。
「かつての染谷君のように。そしてその染谷君もまた近くにいるかもしれない。きっとこれまでとは違った日常を送ることができるよ」
先生は資料を持つと、ゆっくりと立ち上がった。そして、再びいたずらっぽい笑顔を浮かべた。
「だから今度こそ、ここに戻ってきちゃだめだよ? 健ちゃん」
「え、健ちゃん?」
隣の天宮がすごい不思議そうにこちらを見つめてくる。この呼び方はここに来た当初の呼び方で、恥ずかしいがあまりに福川先生に止めるように言ったものある。
久しぶりに聞いたがやっぱり恥ずかしい。
「その呼び方、わざとですね? いやわざとに違いない」
「ごめんごめん」
『ゴホン』と小さく咳払いした福川先生は、今度は優しく微笑んだ。
「とにかく、もうここには戻ってこないこと。いいね?」
「……はい」
「何その寂しそうな顔。誰も二度と会うなと言ってるわけじゃないの。それに私も健樹君の役に立てるかもしれない。だからこれ」
先生は小さな紙きれを俺に差し出した。その紙には電話番号とメールのアドレスが書かれていた。
「何かあったら連絡してね。悪いんだけど、私もう仕事に戻らないといけなくて」
「いえいえ。わざわざ時間を取ってもらいありがとうございました」
「礼には及ばないわ」
先生は応接室のドアノブに手をかけた。同時に俺と天宮も立ち上がる。
「あ、そうそう。結婚式には呼んでね?」
『だからただの同級生です』
ついつい俺たちの声が重なってしまう。それを聞いた先生はぷぷっと笑った。
「『二人の』とは言ってないけど?」
最後の最後に先生にしてやられた。俺と天宮は顔を赤らめて下を向いた。
「ごめんごめん。それじゃあ、気をつけて帰ってね」
『はい!』
先生は応接室を出ると、偶然その前を走っていた子供を見つけて追いかけて行った。本当に忙しい人だ。
※ ※ ※
児童養護施設を後にした俺たちは、もう一つの目的地に向かって歩き始めていた。
「ねぇ、健樹君」
「なんだ?」
「今回の件、健樹君は犯人捜しをするつもり?」
「犯人捜して問い詰めたいわけでも、罪を償わせたいわけじゃない。恨んでもないしな。けど、誰が原因なのかは知っておきたいなって」
「その容疑者の名前に、あなたの旧友が挙がってきた。それがもし彼の仕業であっても、健樹君は恨まない?」
「実際にそれが明らかになってからじゃないと分からんな。それに俺はあいつが関わっているとは思ってない」
「そっか」
彼を疑っているわけではないのだが、やはりハッキリと真実は確かめておきたい。そして可能ならば、昔のように再び彼と時間を共にしたい。
「だからさ、明日は学校に行くよ」
「明日は、じゃなくて毎日行かなきゃ。優等生の名が廃れるよ?」
「それ、お前に言われると腹が立つな」
「ごめんなさい」
天宮はぺこりと頭を下げた。
そうこうしている間に俺たちは、目的の地に到着した。
「ここって……」
「俺の母親がいるところだ」
駅からさらに離れた住宅街を少し外れた地にある墓地。周りから人の声が聞こえてくることもない静かなこの場所に、俺の母親は今も眠っている。
俺は母親の墓の前でしゃがみ込んだ。
「久しぶり母さん。って言っても、三ヶ月ぶりなんだけどね」
最後にここに来たのは施設を出る前日。まだかなり記憶に新しい。
「高校に入学して、ようやく静かに生活ができるようになって、かなり嬉しかった。学校に行って普通に勉強して、休み時間になったら読書をして。当たり前の時間かも知れないけど、俺にとってはすごく充実した時間を過ごせていたと思う」
小学校に入学してから高校に入るまでの間、俺の学校生活というものは、苦痛でしかなかった。学校に行けば、避けられて、邪魔者扱いされて。そんな雰囲気の中での授業も休み時間も、まともに過ごせたものではなかった。だから、学校を休むことも多く、図書室に言ってさぼったりもしていた。
そんな時間が長かったためか、高校に来て本来の当たり前の生活を送れるようになったとき、当たり前がこんなに幸せなものかととても感動した。
「そこから、学校で一番有名な人に突然呼び出されて。そこからは、静かだった日常が随分と騒がしくなった」
「悪かったわね、騒がしくして」
俺の隣で、天宮が不満そうな表情を浮かべていた。
「それでもまだよっかたんだ。周りは多少鬱陶しかったけど、それでも昔と比べればまだ過ごしやすかった。でも、結局その昔と同じことになった……」
声のトーンがどうしても落ち込んでしまう。慣れているとはいえ、やはり事実を口にすると現実を突きつけられている気分になる。
「でも、きっと何とかなりますよ。お母さん」
そんな暗い雰囲気を絶つかのように、横から明るい声が聞こえてくる。
「え?」
俺は天宮の予想もしなかった言葉と行動に目を丸めた。天宮は俺の横にしゃがんで、母親の方をじっと見つめていた。
「私は天宮香苗って言います。彼とは同級生です。……あはは、美人なんてとんでもないですよ」
『自分で言うな!』と言いたいところだったが、実際美人な上に、母親なら言うのかなとか思ったりして、それは自重した。
「もし彼が辛そうになったら、私がサポートします。だからお母さんは安心して彼を見守ってあげてください」
優しく語り掛けるその口調と声に、心が少し惹かれた。なぜ彼女は、そこまで他人のために行動できるのだろうか。きっと俺がその立場ならできないだろう。
だから俺は、そんな天宮の部分を少し尊敬していた。
「天宮……」
「私結構、お人好しなんだからね?」
だがそんなのは、すぐに台無しにするのが彼女である。
「本当にお人好しなら、俺一人学校に行かせて学校をさぼったりしないだろ」
「それは……」
「まぁでも、ありがとう」
そういうところを差し引いても、俺は彼女に救われている気がする。だから、お礼の言葉の一言くらいは当然だろう。
「どういたしまして」
「天宮は今こそ活動休止中だけど、実は有名な女優なんだよ」
俺は再び母親に語り掛けた。
「それだけどね、健樹君」
「どうした?」
少し様子が変わった天宮に違和感を覚えた。
「私、言っておかなきゃいけないことがあるの」
「それって?」
俺の問いに対してすぐには答えず、両者の間に空白の時間が流れた。
「仕事、復帰することが決まったの」
ようやく答えた彼女の表情は、内容とは裏腹にあまり明るくはなかった。
俺は彼女のその言葉を聞いて、すぐには言葉を返せなかった。『おめでとう』とか『よかったな』とか『頑張れよ』と言ってやるべきなのに、今はその言葉が出てこない。
「実は復帰の準備は前々からやっててね。さっき、健樹君言ってたでしょ? 『俺一人学校に行かせて学校をさぼったりしないだろ』って。あの時も実はその準備に入ってて」
彼女と会った日から、何度も話してきた。二人で本を買いに行ったり、今もこうして二人で俺の地元にやってきたり。それなりの関係だと思っていたが、俺の勘違いだったのか。
なぜそれならそうと言ってくれずに、今になってそれを話したんだ。なぜ俺には真実を全て話させたのに自分のことはまるで話してくれないんだ。
「仕事で学校に行けない日もあるけど、それでも健樹君の手助けをさせてほしい」
「いや、やっぱいいわ」
「え?」
俺のいつもとは違う雰囲気に、驚いたように天宮が言葉を返した。
「俺のことはいいから、天宮は仕事に専念しろ」
「でも……」
「俺のことだけすべて聞き出しておいて、天宮はきちんと話さずに隠して、そのために嘘までついた」
「それは……」
「本当は本など読んでもいないし、好きになったわけではない。隠し通すためについた嘘をバレないように書店でも本を大量に購入したんだろ?」
「そんなこと……」
「そもそも俺に興味を持っているなんての真っ赤な嘘で、俺に羨ましがらせて優越感に浸るには都合のよさそうな相手だったんだろ?」
「そんなわけない……」
「とにかく俺の手伝いとか要らない。それに今後はもう俺に執拗に関わってこようとするな」
「健樹君、お願いだから聞いて!」
その彼女の言葉を押しのけて俺は止めることなく言葉を続けた。
「お前の人生と俺の人生じゃ天と地の差だ。仮に俺に同情しているんだとしても、お前には最も同情なんかしてほしくない。生まれてきた時からずっと恵まれてきたお前に、一体俺の辛さの何が分かるっていうんだよ……。なぁ、答えてみろよ!」
「もういい」
彼女は俺から視線をそらし、再び母親の墓の方を見つめた。
「お母さん、騒がしくしてすいません。また来ます」
そう挨拶した天宮はその後、俺の方を一瞥もくれずに、早々とこの場所から去っていった。俺はその姿を追うことはなく、ただその場で立ち止まっていた。
天宮の足音が消えてから、母親の方を向いた。
「母さん、また来る」
そう短く母に別れの挨拶をして、俺は墓場を後にした。
「はぁ……」
墓からの帰り道。一人になった俺は空を見上げて、大きなため息をついた。
彼女がしたのは、たった小さな一つの隠し事。それも遅かったとはいえしっかりと話してくれた。本来、怒るべきところではない。
けれど、隠し事をしていたのは事実。自分にとって彼女が、大地や福川先生といった例外的な存在ではないかと、過剰な期待をしていたがために、その隠し事は容認することができなかった。
「はぁ……」
再び大きなため息をつく。感情的になっていたとはいえ、よくもまぁそれっぽい言葉を並べたものだ。それにこれじゃ、喫茶店の時と何も変わらない。全く進歩していないのだなと、とても情けなくなる。
それに彼女が本好きじゃないなど有り得ない。本屋で話している彼女の目は実に楽しそうだったし、俺が紹介する本には興味津々だった。いくら本職が女優業とはいえ、これが全て演技で、さっき言っていたことが正しかったなら、人だけでなく世の中全てのものに疑いの目を持つようになってしまうだろう。
彼女が、俺を優越感に浸るための道具として、俺に話しかけたというのもまずあり
えない。本当に羨ましいと思われたいなら、嘘でも俺に同情なんてしないだろう。
「はぁ……」
三度、ため息をつく。俺は俺で、彼女は彼女。境遇こそ大きく違うが、彼女もずっと楽で楽しい時間を過ごしてきたわけではないだろう。
世間体を気にしてしまい、なかなか自由な生活ができないという、有名人であるからこその宿命に、彼女は辛い思いをしたに違いない。実際、つい最近まで、俺が彼女と話していたのを見られただけでも周りの生徒に囲まれて、執拗に絡まれていたくらいだ。
俺はここで一度大きく深呼吸をした。
「これで終わりなら……」
もしかしたら、これで終わりにした方がいいのかもしれないという考えが頭をよぎる。
今までとは違って、俺と時間を過ごすことは、『不幸の子』というレッテルが彼女にも張られてしまうという大きなリスクが伴う。さらに、俺を助けようと行動すれば、余計にそのリスクが高まってしまう。
もし彼女にレッテルが張られるようなことがあれば、彼女の大事な将来の道を閉ざしてしまうことに繋がりかねない。俺には、そこまでの全責任を負うことはできない。
彼女とこれから先も関係を続けるか否か。
その大きな分岐点に立たされた俺はその日中、ずっと頭を悩ませ続けた。
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