送る言葉

 ペット葬儀会社に扮した弥生はコマの身体を大事そうに抱え棺に入れる。

 志保は棺にすがりついて泣いている。この声は棺の中で硬直しているコマにも聞こえていた。

「ふにゃ~、泣くんじゃにゃい! 吾輩がいなくなってもお前がこのカフェを引っ張っていくのにゃ!」

「コ、コマ⁉」

 コマが棺を蹴破って、志保に喝を入れた。

「え、しゃ、喋って……」

「どうされましたか?」

「今、コマが、喋って……」

「私には何も見えてませんし、何も聞えませんが」

 弥生は、わざと惚けている。

「志保なら、吾輩がいなくても大丈夫にゃ!」

「コマ……」

「今まで、ありがとにゃ!」

「私もっ、ほんとうに、コマと会えて良かった! ありがとう!」

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