おとーさん
弥生は昨晩、コマの勤務先までの地図を見て、道を大体覚えてきているので、サクサクと進んでいこうとする。
「ねえ、弥生。あの白い線は何~?」
「あれは横断歩道っていうのよ。渡る時は手を上げてね。たまに止まってくれない車もいるから気をつけてね」
「あれが車だよね! テレビで見た!」
「そうそう」
「あっ、白と黒の車だ! 何か鳴らしてるよ」
「あれはパトカーね。悪い人を捕まえにいくのよ」
こんな調子で、何か見つけては翼が立ち止まるので、中々進んでいなかった。白夜のイライラが募る。
「おい。この馬鹿を黙らせろ」
「白夜様、そんなにイライラなさらないで」
「五月蝿い。この調子で向かって、一体いつになったら着くのだ」
「大丈夫ですよ。時間に余裕はあります。ゆっくり向かっても十分間に合います」
「大体、今日は別に私が直接出向かなくても良かっただろうが。猫又妖怪ごとき適当にあしらっておけばよい」
「翼、ちょっといい?」
「ん?」
街中をキョロキョロ見回していた翼に突然、呪をかける。すると、たちまち翼の姿は高校生から幼稚園児くらいの見た目に変化していた。勿論、視界に入った人間の目くらましも怠ってはいない。
「わっ、小っちゃくなっちゃった!」
「おい、何のつもりだ」
「先ほどから少し気になっていましたの。これで見た目相応の言動になりました」
弥生は気付いていたのだ。幼い子どものようにはしゃぐ高校生くらいの男子に、街行く人々が怪訝な視線を送っていたのを。
「一緒に猫カフェに行ってくれるわよね、お父さん?」
「はあ?」
確かに、傍から見れば、この三人は幼い子どもを連れた若い夫婦であった。
弥生が白夜の腕を引っ張り強制連行の形を取る。
「おい、やめ「おとーさん」
翼がもう片方の手にしがみ付く。
白夜の力を持ってすれば、この二人など容易く振り解けたはずだったが、彼はそれをしなかった。面倒臭そうな顔はしていたが渋々連れられて行った。
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