ep7/空猫ノ絆(後編)
「よく時間を稼いでくれたリゼータ。後は僕に任せてくれ」
彼こそが【天剣のゲルト】の二ツ名を持ち、帝都最強と名高い
その姿は
ゲルトが肩に担ぐ黄金の大剣には、
「全く……
狂戦化している
「やっと
『ズシャァァッ!!』影のごとく忍び寄っていたリゼータが、気を抜いていた歪蝕竜の隙を突き、背後からその
「グゲ4エ)(エdgljエ#オアrhgaskエ6ェ%gadェ0%23\\ェッ!!?」
激痛と混乱に悲鳴を上げ、
そして盛大な
やがて水の煙幕が晴れれば、
右眼と左翼を失った
「ギ5o……ギ8dギ)…ギギッ……!」
力無く身を起こす
ゲルトが持つ大剣には、彼が信仰する
「悪逆非道の歪蝕竜よ。母神の
すると大上段に
天竜紋の加護によって、その力を
荒れ狂う力の
そして、あまりの巨大な力を前にした歪蝕竜は――己の死が眼前に迫っているというのに――
「
そして
それこそが、かつて地上最強と
この世にある全て。万物を断つと云われる、
『――――キイィィィィィィン……!』
すると間もなくして、その断面から黄金の火炎が噴き上がった。
「グ&ゲ4エ%エエゲ%ゲ#ゲエ9エ)^エェ99ェェ`:ェ8ェ*ェ”ェ99ッ!!???」
『ボオオオォォォン!』天まで届くような火柱の中、
それでも瞳に憎悪を
しかし抵抗も虚しく、歪蝕竜の肉体は徐々に炭化し――その生命力を失っていった。
歪蝕竜が滅びると同時に、帝都を覆っていた黒雲が晴れていく。
そうして風雨が止むと、輝く太陽と共に、突き抜けるような青空が姿を現した。
陽光に浄化されて
今回の
しかし、十二年前の獣災に比べれば、その被害は
『
帝都の
それはあまりにも熱狂的な
すでに市民には伝わっていた。今回の伝説的偉業の立役者が、
終わりなき歓喜の
「みんなお疲れ。しかしこれはまた……すごい歓声だな」
壊れたように騒ぎ立てる市民を遠目に見ながら、
死骸を囲むように空猫ノ絆が集結していたが――すでに戦いは終わったというのに――アローゼ、ラピア、ジルミードの三人の表情は暗い。リゼータも緊張した
そんな仲間たちの様子を見て、気まずげな苦笑を浮かべるゲルトだったが、リーダーの責務を果たさんとばかりに会話を切り出した。
「さて……歪蝕竜を
怪我人を救助したり、崩れた建物に閉じ込められた人を助けたり、すべきことはいくらでもある。今や空猫ノ絆は帝都を代表する
「ゲルト。悪いけど……少し黙ってて」
今後の方針を指示するゲルトを押し
話しを
その
「リゼ君……
怒りに
問題の
いくらリゼータが
「そーだよ、リゼ兄のバカチンっ! 何であんな無茶したのさっ!? あんなイカれた化物を一人で
そして心を痛めていたのは、アローゼだけではない。
続いてラピアも、
「そうです……リゼータはもっと自分を大事にするべきです! そもそも、なぜ歪蝕竜を我々だけで討伐しようなんて考えたんですか! もっと低リスクの戦法があったはずです! あんな戦い方は絶対に認めません。反省してください!」
更には、普段は物静かで口数の少ないジルミードまでもが参戦する。
よほど感情が
三人はリゼータを囲い込み、烈火のごとくリゼータを
しかし感情を昂ぶらせる三人とは対照的に、リゼータは耐えるように――まるで何かを隠しているかのように――静かに口を
そんな状況を見かねて「皆、落ち着いて聞いてくれ」と、
それから少しだけ興奮が静まった頃合いで、己の
「僕も単独での戦闘はダメだと思うけど、リゼータには目的があったんだろう」
アローゼが「目的って……何よ?」
ゲルトはリゼータに向き直ると「なぁリゼータ。君が
それを聞いたラピアが「えっ……!? でも、あたいら誰にも突破できなかった
皆が沈黙する中で、ラピアの疑問にゲルトが応じる。「普通なら決定的だろうね。でも、リゼータはそれでも不安だったんだろ?」
やがて思い至ったのか、ジルミードがハッと口に手を当てて「それって……ひょっとして……」と呟きながら、その目線をリゼータの手元に向ける。そこには
そしてついに観念したのか、リゼータは「全く……ゲルトには
「……ああ、そうだ。俺は罪紋者だからな。国教である母神教で忌み嫌われている罪紋者が、
だが、そのせいで無茶をして……心配させてすまなかった。そして俺の
そう言って、リゼータは深々と頭を下げる。
だが、ゲルト以外の三人は
そうさせたのは
これほどまでにリゼータは苦悩していたというのに、何よりも近しいはずの自分たちが気付けていなかったのだから。
「これからもお前たちと一緒に居たいあまりに、ついつい欲が出てしまったんだ。最善を言うなら、俺が
リゼータが
アローゼは力無く
ジルミードも
まるで己が罪人かのように
「……なぁ、リゼータ。チームを抜けるなんて悲しい事を言わないでくれ。君がいたから僕たちはここまで来れたんだ。
ゲルトのその言葉に、アローゼもラピアもジルミードも、皆が力強く同意する。
四人から熱い
「みんな、ありがとう。本当に良い仲間を持って……俺は幸せ者だよ」
そして、いつもは
リゼータの
それから女性陣は身を寄せ合い「リゼ君ってば……ズルいわ。うっ……鼻血が出そう」「リゼ兄ぃって、普段あんまり笑わねーもんな……破壊力がありすぎだって」「あんな顔されたら、もう何も言えません。やっぱりリゼータは女の敵です」などと、小声で文句を
場が落ち着いたのを見計らって「おっほん!」と、ゲルトが大きく
「さぁみんな。
ほら、聞いてごらんよ。この帝都市民の僕たちを称える歓声を。あそこまでしたのに、僕たちが
ただでさえ今回のことで、王侯貴族も教会も評判は地に
ここまで条件が
ゲルトが語る未来予想図には、確かな説得力があった。
耳を
するとリゼータが「よし! なら今夜は前祝いだ。アジトに帰ったら、盛大にごちそうにしよう。みんな何かリクエストはあるか?」そう明るい調子で切り出すと、仲間たちがワッと色めき立った。
ラピアが目を輝かせながら「本当っ!? じゃあオレは、コカトリスの照り焼きが食べたいっ!」と、小さな身体を飛び上がらせて要求する。
アローゼは悩ましげな表情で「アタシはねぇ……デビルポテトのサモサが食べたいわ! 帝国ビールもつけてね!」と、今夜の
ジルミードは
最後にゲルトが「ふふふ……じゃあ僕は、黒毛ミノタウロスのローストビーフを。バルザーク産の三十年もののワインも頼むよ?」と気取った口調でリクエストすると――みんなが少しだけイラっとした。
「まかせておけ。腕を振るって作ってやるさ」
リゼータの力強い言葉に、子供のように大はしゃぎする四人。
と言うのも、リゼータは長年の付き合いから、全員の好みを知り尽くしているからだ。そして腕前は、一流料理人にも
そんな彼が、全力で料理を振る舞ってくれると言うのだ。歓喜しないはずがない。
そうやって
「むっ……!?」
いち早く異変に気付いたのは、やはりリゼータだった。
『グジョジョジョジョ……!』突如、黒炭化していた
「ギ#ギグギ$イィ&\##ィ8ィィ()$ィ2"……!」
地に伏す醜悪な竜頭が、
再生が不完全で所々に皮膚が存在せず、赤黒い筋肉に血管と
見るからに
「て、てめぇっ……!
そうラピアが
そこには
捨て身の
「くっ……みんな
それでも気力を振り絞り、いち早く動いたのはリゼータだった。
しかし、その必死の叫びを
「ギャJFヒヒ6#ヒA9")$$ヒヒヒ~#O%~:G}}ヒィィ}?+*ィィィ!!!」
『ズゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォン……………!!!』
この日一番の爆音と共に――荒れ狂う雷獄が、周囲一帯を焼き尽くしたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〈作者コメント〉
どうも。クレボシと申します。
集団の会話は難しいですね。キャラの印象づけが上手くいってれば、読んでいてもスラスラと頭に入ってくるんでしょうけど。
応援・感想・評価などをつけて頂けると嬉しいです。
誤字脱字の報告もしていただけると助かります。
※タイトル(ABYSS×BLAZER)はアビスブレイザーと読みます。ブレザーじゃないですよ。
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