第5話 来客
ヒトミは視線を感じた。
恐る恐る、そちらへ目を向ける。
「え……?」
鳥?
真っ暗な空間にぽつりと、脚のか細い鳥が立っていた。
意味がわからない。
こんな大きな鳥がなぜうちに?家には鳥が侵入できるような隙間は無い。それとも窓ガラスを割って入ってきたのだろうか。
それにしてもなぜ。しかも見たことのない鳥。
少し近付き、さらに目を凝らして見てみた。
人面犬ならぬ、人面鳥とでも言いたくなるような不気味な面持ちをしている。老人のような眼差し。
……あ。
気持ち悪い。
そこには、ハシビロコウが仁王立ちしていた。
目を凝らすと、ピンク、水色、緑色と、角度によって放つ光が違うようだ。
何か言いたげなその鳥は、暗闇の中で、ただこちらの様子をじっと観察しているのだった。
そして嘴(くちばし)の奥から鳴き声を上げた。
キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ、キェ。
「え、何……」
突然鳴くのを辞め、ヒトミをじっと見つめてきた。
そして、フラミンゴのような頼りない脚で、ひた、ひた、と一歩ずつ、ヒトミの方へ歩み寄ってきたのである。
「わ……」
ひた。ひた。ひた。ひた。
野生の威圧感に思わず後ずさる。
まるで獲物を見定めたかのように静かに迫る鳥。ヒトミは、自分が生まれたての無防備な存在のように感じた。
ーーー誰か助けて!
変に刺激を与えたら大きな嘴で噛み付かれそうだ。ヒトミは鳥から目を逸らさずに、音を立てないで玄関へ戻ろうと決意した。
「いった……」
玄関の柱に後頭部をぶつけた。痛みに気を取られて転びそうになる。しかしそれどころではない。
ふと、台所から"ブーン"と機械音がした。
冷蔵庫の音だろうか。何かが震えている音は徐々に大きくなる。
それが引き金になったかのように突然大きな翼を広げて勢いよくヒトミの方へ飛んできた。
咄嗟に腕で顔面をガードした。その弾みで玄関で転び尻もちをついた。
ーーーやばい、攻撃される!
あれ?
恐る恐る目を開けた。
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