第2話
その後、やはり彼女は家に帰ってしまった。僕の本日のデートの予定がなくなってしまった。だからクズハと2人で帰路に着くことに。
「これ、お前のせいだぞ」
「ふん。このくらいで心が折れるなんて。愛が足りないのです」
なんて、クズハは反省する素振りを見せず、チョコレートを齧っている。
総武線の車内。出来るだけ人に会いたくないので、グリーン車の一階に乗っている。
「あのなぁ。頼むから邪魔しないでくれよ。僕だって普通の恋愛したいのだからさ」
「ふん。そんなもの知らないのです。だって私とあなたは結婚する運命なんですよ」
「それ、誰が決めた」
「私のお母さんが」
「そうか。そのお母さんに会わせて欲しいわ」
「何を言っているのですか。いつも……」
とそこで電車が激しく左に揺れた。そして僕は思わず、クズハの方へ倒れてしまった。
そしてクズハの胸を掴んでしまう。
綺麗な形のお山が二つ……ふんわり、饅頭のように柔らかい。
「まぁ」
なんてクズハが言っている。なぜ胸を揉まれて嬉しそうなのか。
「ウフフ。やはり、そうなんですね。知っていました。これがあなたの意志」
「な、な。これは違う!!」
彼女は僕の手をギュッと掴む。
「別にいいですよ。もっと揉んでもらって」
「なっ、なっ」
「だって、私たち、将来的には夫婦になりますもの」
「なるか!」
バッと彼女の手を離した。
ここで車内アナウンスが入る。先ほど、踏切で危険を知らせる信号が鳴ったため急ブレーキを踏みましたと。実に迷惑な
「いいえ。私たちは夫婦になるのです。そして子供を産むのです」
「いやいや。子供を産むって。だって僕は人間で君はキツネ。種族が違うんだよ」
「それじゃ人間とキツネの血を引いた立派な子供が生まれますね」
ウフフと笑うクズハ。
「いやだ、いやだ。僕はちゃんと人間の子供を産みたい! こんなキツネの子供なんていやだ。いやだ」
「でも、あなた。私以外の人とは結婚出来ませんよ」
「そりゃ、あんたが邪魔をして来るからな!」
「いえいえ。多分、あなたは私が邪魔をしなくても彼女1人出来なかったでしょう」
「おーい!! なんてこというんだ!」
というかそんなはずはない。
確かに、中学時代は不遇であったけれども。だけれども僕だって本気を出せばモテるんだ。
確かに、顔はイケメンではないし。それと言った特技はない。性格もどちらかと言えば悪いけれど。だけれどもきっとモテる……。うん。多分モテるはずだ。
「だから、諦めて私と付き合えばいいのです。それであなたは幸せになりますよ」
「いやだ、いやだ! 妖狐と結婚するのはいやだ!」
そんな絶叫が総武線の中に響き渡った。
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