Sクラス紹介とダルフ先生







 

 

 ——剣魔総合学園は、実力順にSクラスからEクラスに分けられている



 

 学園には一年と二年があり、それぞれにSクラスからEクラスまであった


 しかもこの学園は全寮制な為、施設を含めた敷地はとても広大なものになっていた


 敷地内には訓練場も広場も、更には木々も生えていて自然も備えている



 この学園の環境は、他国と比べても最高のものだろう



 しかし、Sクラスは優秀な者しか入れないので、極めて人数が少なかった


リベルが入った一年のSクラスは、リベルを入れて8人しかいないようなクラスだ



 だがやはりSクラス。皆他のクラスとは実力が一味違う者達ばかりだ





 


 向上心と戦闘意欲に溢れている剣士――ディーン




 緋色の短い髪に赤く燃えるような瞳。己を高める為にとにかく頑張れる根性を持ち、芯が強く努力家。その身体は剣術の為に程よく鍛えられた体格をしている


 


 




  風魔法に長けている弓使いのエルフ――リエン[女性]




 整った顔立ちと長い耳。シルバーグレーの瞳にブランド色の長く美しい髪の持ち主だ。勝気な性格で負けず嫌い。その華奢な身体で素早く動くことが出来る

 


 





  ゴリゴリの肉体派で拳闘士――ランダ




 金茶色の短い髪にスカーレットの瞳。クラスで

一番の背丈とズッシリ鍛えられた体格で、その肌は程よく焼けている。堂々とした態度で、強さを重んじている。単純な肉体的な面で言えば、Sクラスで一番の力の持ち主だ

 


 





  

  火の魔法が得意で強気な女魔術師――アリス[女性]




 鮮やかな韓紅からくれない色の長い髪に、エメラルドのような瞳。気が強く、強気な口調と性格で、リエン同様負けず嫌い


 






興味意欲が高いが物静かな氷魔法使い――ソフィア[女性]

                     



 鮮やかな水色の瞳で、白に薄い水色が溶けたような色の短い髪をしている。実力はあるが物静かな性格で、教室では基本無表情な顔をしている

 


 




 火と水の魔法を得意としているが、平民を見下している貴族

 


   メイナード=ローレンス



 

 薄黄色の整えられた髪型に若緑色の瞳。貴族の家に生まれたことで平民を見下している。Sクラスに入る実力はあるが、傲慢な性格で横柄な態度をとる

 


 





 姉と共に学園に通う、剣と魔法の両方に優れた

この国の王子



   マグナ=クリムハート=パルメシア


 


 整った顔立ちに王族特有の黄檗色の髪を持ち、そのスラリとした華奢な身体の内には筋肉を秘めている。王族だが身分を盾に威張ることは無く、落ち着いた性格をしている


 



 


 そしてこの7人からなるSクラスを任されているのが、担任のダルフだった


 

 

 青黒い髪に青い瞳、引き締まった体格の持ち主。普段大雑把でおおらかとしているが裏表のない性格で、若くして実力も兼ね備えている。その実力は

Sクラスの担任に相応しい男だった






 そんなダルフは現在、リベルに学園の事や授業、施設の話をしながら訓練場へ向かっていた






 「っていう訳で、この学園は全体的に実力主義みたいな部分があるから、Sクラスは他のクラスより実技演習が多いんだ。授業後や休日も、訓練場を自主的に使用することが出来るし、この学園は寮制だが、Sクラスの寮は内装や広さも優遇されてたりする」






 ——この学園の授業は大雑把に分けて、座学と実技の二つの授業に分けられる



 授業は大体午前で終わり、午後は皆寮に戻って休んだり復習したりしている


 授業構成や座学、実技の内容もクラスにより、Sクラスは実技授業の方が多めの授業構成だった


 




 『ふーん。俺、寮?っていうの初めてなんだよね。あ、そういえばご飯は?ご飯はどうするの?』



 

 「あ、あぁ。ご飯は一日三食、各自食堂で自由に食べられる。だが、Sクラスはいつでも何食でも食べ放題だ。だから好きなように食べていいぞ?」




 『食べ放題!?最高だね!』






 普段大雑把でおおらかな性格の為、リベルと難なく接しているように見えるダルフ



 しかし顔に出さないだけで、実は内心、リベルへの戸惑いと緊張を感じていた





 


 ――時は遡り、アルフレッドがリベルを教師達の前で紹介する前



 




 「というわけで今日から新しい生徒がSクラスに入るので、くれぐれもよろしくお願いしますね。

ダルフ先生」


 

 「というわけって……学園長、それどう考えても俺がやばい役じゃないですか。……俺、死にませんよね?」




 

  

 昨日用事でいなかったダルフは、学園に来るなりセシルから呼び出されて話をされていた



 その内容は、今日から来るリベルについてだった



 昨日の内に他の教師達には話していたが、用事でいなかったダルフにだけ出来ないでいた



 その為呼び出され、朝から事の経緯を詳しく教えられていたのだ



 が、それは大雑把な性格のダルフにも無視できない内容だった

 

 




 「もう他の先生達にも言ってるけど、嘘をつかないで他の生徒と同じように接すれば基本大丈夫よ。それに、私とアルフレッドも気にかけるようにするから安心して頂戴」





 (嘘を見抜く?入国してすぐSランク??それに【閃光】の二つ名を持つアルフレッドさんが負けるなんて……信じられない)


 

 



 「……アルフレッドさんに勝つ少年に……俺は

何を教えたらいいんですか?」




 


 話を聞いていたダルフは、なんだそいつは——と言いたくなるような気持ちだった


 そして唐突に思った疑問。誰でも当然思うような疑問を口にしていた


 アルフレッドに勝つ少年に、アルフレッドより弱い自分が何かを教えられるとは到底思えなかったのだ





 

 「……他の先生達にも言ったけどこれは、この国に執着を持ってもらう。そんな意味合いが大きい入学なの。彼は基本自由だから大変かもしれないけど……頑張ってください」





 (いや、頑張ってくださいって言われても……)



 そう思ったダルフだが嫌とは言えない


 なので話が終わり、退室してリベルの元へ向かったのだった

 


 

 


 そして現在に至っていた――





 

 

 (あまり機嫌を損わないようにか……。あー、

メイナードが危険かもしれないな。それに授業に出る、出ないも自由とか。さすが実力の特別指定推薦)





 

 この学園は身分に関係なく実力で入れる実力主義だ


 その為王族と言えども、実力がなければ入学することができない


 もちろん国王より命令されれば断りづらいが、

それで入学したら本人が困るというものだ



 その為そんな事は起こらず、自分で入学出来る実力を持っている王族に出されるのが特別指定推薦というものだった

 



 これは国や王族に何か問題が起こると、学園に通えなくなる場合がある為出されるものだ


長い間学園に通えなくなっても大丈夫なように出されるのが、今までの特別指定推薦だった

 


 

 にもかかわらず、リベルは授業に来ても来なくても本人の自由だと言われ、ダルフは悩まされていた


 


 


 

 (ハァー。こんなのバレたら絶対注目されるな。そしたら揉めて……リベルが怒る。けどそうなったら俺が止めないといけない。……無理だ、止められる訳が無い。俺の人生終わったか?)





 

 ダルフはセシルから、怒らせたら本当にまずいみたいだから――と強く言われていた


 冒険者ギルドや盗賊討伐のことを聞いていたダルフは、リベルを怒らせたら自分は死ぬのではないかと考えていた


 そしてそのことが、心底ダルフを悩ませることになってしまう


 クラスで気軽にリベルと呼べと言われ、すんなり呼び直したダルフだが、実は内心穏やかではなかったのだ



 自分の死に方まで想像し始めてしまったダルフは、悩みの種であるリベルの声によって現実に引き戻される




 


 『ねぇ、確かダルフ先生だったよね。この学園凄く広いんだね。それに凄く綺麗だし。俺の家にしたいくらいだよ、アハハハ』





 (リベル……ここを家なんて言うのはお前くらいだ)

 



 「ハ、ハハ。それは随分と広すぎる家だな。この学園は施設も環境も贅沢に用意されているからな。ほら、ここが訓練場だ。広いだろ?」






 二人は教室からしばらく歩いた学園の敷地内、外に広く用意された訓練場に到着する






 『おぉー。広いんだね』





 (まぁ……何かあったらアルフレッドさんとセシルさんに言えば……)






 ダルフは他人事のような考えを振り払った


 既に全員揃っているみんなの所へ向かっていくと、随分待った様子のアリスに怒られてしまう



 


  

 「ダルフ先生!遅いですよ!?」




 「あぁ、悪い。リベルに学園の説明しながら来たから遅れたんだ」


 

 「先生!そんなことより早く戦いましょう!俺は早くリベル君と戦いたい!!」





  

 ダルフがアリスに向かって謝っていると、横からディーンが、リベル向けてそう言い放った


 ダルフはビックリして心臓がキュッとなったのを感じる



 


 (バ、バカなことを言うなディーン!お前がリベルと戦ったら、人とドラゴンが戦うみたいになるぞ!!)

 



 


 「まぁまぁ。そんなに急いじゃダメよ?リベルはまだ貴方達のことを全く知らないんだからね?」




  

  「「!!」」





 

 ダルフがやめてくれとディーンに思っていると、少し上から聞き覚えのある声が聞こえてきた


 驚いて上を見ると、セシルが杖に乗って浮いている


 地面に近づき降り立つセシルに、生徒全員の視線が釘付けになっていた




 

  

 「「学園長!!」」



 

 「どうしてここに!?まさか!俺と戦ってくれるんですか!?」



 

 「バカ!!セシル様がアンタなんかと戦うわけないでしょ!?少しは考えなさいよ!」





 

 

 ディーンが目を輝かせ、アリスが否定する。生徒達は皆、セシルの登場に驚いている様子だった


 しかしそれは、ダルフとリベルの二名を除いてだったが……




 

 

 

 「が、学園長……どうしたんですか?」




 「ダルフ先生とみんなにお知らせよ。アルフレッドと話したんだけど、これからSクラスの実技は私とアルフレッドが二人で教えることになったわ。

まぁ二人って言ってもほとんど交代制だけどね」




 

 「「アルフレッド様も!?」」






 

 全員が驚きのあまり目を見開いたり、喜んで騒いだりしている

 

 Sランク以上の者は、強さの象徴のような存在だ


 その為Sランク冒険者でありながら学園の代表をしている二人は生徒にとって、身近にいる憧れの的だったのだ

 

  


 しかしダルフは、これは恐らく、リベルへの対応を考えた結果だろうと悟った


 何かあったら止められるのは二人くらいなものだろうと思うと、ダルフは自然に納得出来ていた



 


 

 

 『セシルさんが教えるの?』




 「えぇ、これからそうなるわ。嫌かしら?」


 


 『いや、別にいいんだけど……それじゃあ、これからセシルさんと戦えばいいの?』




 「「!!」」




 「貴様!!学園長に気安く話しかけてよくもそんなことを!舐めているのか!?」





 

 セシルと対等のように話すリベルに、早速メイナードが食ってかかった


 懸念していたことが突然起きてしまい、ダルフは驚いて声も出ない


 やめてくれと言わんばかりに目を見開いて、メイナードを凝視しているだけだ




 

 

 「いいのよ、メイナード=ローレンス。でも、

クラスの仲間へのその口調は感心しないわ。改めなさい」


 

 

 「し、しかし……」





 

 ダルフに変わって止めたのはセシルだった


 メイナードは納得出来ていない様子だが、セシルに言われては黙るしかなく、渋々と言う様子で引き下がる




 


 「それでリベルには――貴方達には、これから私が作るゴーレムと戦ってもらうわ」





 

 ゴーレムは低級、中級、上級があり、それぞれで強さが全然違う。ダンジョンや鉱山に自然発生することが多く、素材になっている鉱石によっても強さが変わる厄介な魔物だった

 

 

 また魔力によって作ることも可能で、その場合作った本人の強さによってゴーレムの強さも変わる

 

 どれだけ魔力を込めるか、効率よく込めるかで強さが変わるのだ




 



 「ゴーレムとの戦闘!!うぉーー!!燃えて来たーー!」

 


 「ハッ、ゴーレムなんて、俺の拳で粉々にしてやるぜ」

 


 「セシル様にいいとこ見せなきゃ!!」






 セシルが来たことや、ゴーレムと戦闘ができるということで、みんなやる気に満ちている様子だった


 セシルの前で自分の力を披露出来ることは、気合が入るには充分な理由だったのだ







 「それじゃあみんな。今日は低級ゴーレムを各自のやり方で攻略すること。みんなの実力をお互い改めて確認、そしてリベルに見せること。分かった?」





 「「ハイ!」」




 

 (セシルさんやアルフレッドさんは人気があるからな……流石Sランク)




 

 「それでは学園長。俺は学園長に任せて、戻ってもいいんですか?」


 


 「次回からはそうしていいけど、今日は見ていてください。……自分の生徒の実力を、改めて確かめておきましょう」




 「……わかりました」






 二人が教えるなら効果的で、リベルのことも安心だと思ったダルフは書類やら他の仕事をしよう思い戻ろうとするが、セシルに今日は一緒に見学だと言われて留まった


 セシルの言いたいことは分かっていたので、特に何も聞かずセシルの方へ移動する


  



  

 (生徒の実力……か。リベル以外のみんなは一応把握している。つまり、リベルを一目見ておけ――ということか……)






 「それじゃあ始めるわよ。誰から行くのかしら?」




 「俺がやります!」


 「ハイ!」


 「私よ!」



  



 我先にと、一斉に手を上げる生徒達



 ダルフとセシルが眺める中で、リベルを含めた初めての授業が、こうして始まった――


 

 

 

 



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