—間話—
ギルドから出たリベルは、貰った金貨を見ながら服屋に向かって大通りを歩いていた
リベルが現在着ている服は昔貰ったものだが、
リベルの力――こちらの世界で言う生活魔法のような能力で、凄く綺麗な状態だった
しかしこの国と一体化出来ているかと言われると、リベル自身も少し違う気がしていたのだ
先程金貨を貰ったので、ついでに良い服を買ってしまおうと、リベルは思っていた
(服って金貨六十八枚で足りるかな?……なんか一々お金の心配するのもめんどくさいな。取り敢えずお金たくさん稼ごうかな?……あ、多分ここだ)
リベルは歩いている人に聞き回って、この辺りで一番良い服の店を目指していた
到着した綺麗な外装の大きな店に、リベルはスタスタと入っていく——
「いらっしゃいませお客様。当店に来ていただき誠に――って、君一人?ご両親と一緒に来たのかい?」
『俺一人で来たんだよ。それより、なんかいい感じの服持ってきてくれない?』
「一人って君ねぇ……この店は他の店よりずっと高いんだよ?お金はちゃんと持っているのかい?」
扉を開け、一人で入って来たリベルに店長が、当然と言えば当然の質問をしていた
この辺りで一番高価なこの店に、普通子供が一人でなど来ないのだった。例え貴族でも、執事などの使用人を連れてやってくるのが一般的なのだ
だが——
『うん、金貨十八枚で買えるだけ買おうかと思うんだけど……これじゃあ一枚も買えない?』
「ッ!い、いえ!!大変失礼致しましたお客様。おい!この方に似合う最高の服を見繕うんだ!!」
(おっ、足りるみたいで良かった良かった。金貨は結構価値があるみたいだね)
リベルが袋から金貨を出したことによって、店長の態度が急変する
店長は金貨を軽く出したリベルを、何としてでも常連にしなければと思ったのだ
店の中では店員が慌てて服を用意している
他の店員達にも呼びかけ、リベルの服を大急ぎで見繕っていた
だがリベルは大量の金貨を出された店長の気など知らず、呑気に金貨の価値が高いことを再認識していただけだった
これがあれば沢山食べ物が買えそうだとばかり考えている様だ
そんなリベルは持って来られた服を全て試着していった
『ねぇ、これどう??似合ってる?』
「……あっ!は、はい!!と、とてもお似合いです」
リベルの姿に見惚れていた女性店員が慌てて答えている
黙っていれば皆見惚れる様な顔をしたリベルが、この高級店の服を着ているのだから無理もない。
他の女性店員も皆揃ってリベルに見惚れている
『そう?フフッ、それじゃあ気分良いから、残ったお釣りは全部あげるよ。後、この服このまま着て帰るね』
リベルは何着か見繕ってもらった服を一通り試着し終えると、最後に出された服を着てそう言っている
店長がお礼を言い、常連にしたいリベルに服を運びましょうか?——と丁寧に尋ねると、リベルはアイテムボックスを開いてここに入れてと促していた
「なんとアイテムボックスをお持ちでしたか。畏まりました。それではこれからも、どうぞこの店をご贔屓にして下さいませ」
『うん、服ありがとね。それじゃ』
「ありがとうございました」
店を出て行くリベルに店員が揃ってお辞儀をしたが、リベルはそんな事少しも気にしていなかった
現在リベルの頭には、この新しい服でカレンの元に行こうという考えでいっぱいだったのだ
服を買い上機嫌になったリベルは周りの者からの視線など気付かず、カレンの元へと足軽に向かって行った——
*****
――「あらリベル、また来てくれたの?」
今、カレンは目の前にいるオシャレで整った服を着ていたリベルに、笑顔で微笑みかけていた
返事をするリベルに何本買うかと尋ねると十本と言って来たので、カレンはまだ焼けてない肉をきちんと焼いていく
『実は今日もお金もらったんだよねー。だからさっきこの服も買って来たんだよ。どう??似合ってる?』
周りの自身への視線など気付いていないのか、リベルはお構いなしにカレンの前でクルッと回り、着ている服を見せていた
そんな子供のような様子に、カレンは微笑みながら答える
「フフッ、今日もご機嫌ね。それにその服、リベルにとても似合ってるわ」
『え、そう!?フフッ。あ、あとね。俺剣魔総合学園って所に入ることになったんだよ』
剣魔総合学園という言葉に、カレンは少なからず驚いていた
その名前はこの国に住む者なら誰でも知っているような学園だったからだ
Sランク冒険者が代表を務めている最高の環境で学べる学園——その学園は国民からそんな認識をされており、それが正解だった
(あそこは試験で優秀な生徒しか入れない所だったような…… でも試験は確かもう終わって……でもとにかく——)
「あの学園に入れるなんて、リベルは凄いのね。そんなリベルに買ってもらえてありがたいわ」
『え、そう?フフフッ』
カレンは嬉しいそうにするリベルに、肉串を入れた袋を渡した
するとリベルはまた金貨を一枚差し出し、お釣りはあげるとカレンに言い出した
「リベル……嬉しいけどこんなにもらえないわ。私は何もしてないもの」
『いいからいいから。俺どうせ銀貨とか持ってても分かんないしね。それに、金貨はまだまだあるから大丈夫だよ』
カレンはそう言って笑うリベルを見ると、突き返すことが出来なかった
カレンは心の底からただひたすらリベルに感謝している。そんなカレンの顔を、リベルが覗き込むように見つめてきた
『その代わり、これからも沢山話そうね』
「リベル……ありがとね。それにそんな事なら、いつでもここに来てね」
『うん!それじゃまたね』
カレンは元気に帰って行くリベルの後ろ姿を見て、胸の奥が温かくなっていくのを感じた
心からの感謝を思いながらカレンは、今度リベルが来た時の為に、もっと味を美味しくしようと気合いを入れ直した——
*****
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