心情
(……遅い)
門兵に案内された部屋で椅子に座りながらテーブルに突っ伏していたリベルは現在、長く待たされている事によって少し不機嫌になっているところだった
(お金があれば通れたのかな?……通れた気がする。ハァー)
入国しようとした時、別の世界から来たばかりのリベルがこの世界のお金など持っているはずがなかった。現在魔物の死体を成り行きで換金してもらっているが、そもそも以前からお金というものに頼ってなかったのだ
(お金なんて持ってないよー。人がいる所だと何とかできたんだからさー。……あれ??あの世界消したっけ?…………まぁどうでもいいか)
リベルは今まで、どの世界でも最強であった。しかし少年である彼を利用しようとしたり、不当な扱いをした者達はみな等しく消されていた。国ごと消滅させられた者だっている
しかし、当の本人はよく覚えていなかった
リベルが門で魔物の死体がお金になるかもしれないと判断したのも、昔行った世界でそういうことがあったからだ。気ままに放浪していたリベルが小さな村を攻めている魔物を討伐した際、死体を買い取りたいと言われたことがあったのだ
(ゴブリンか……魔物はいつか行った世界と似たものなのかな?こっちの方が世界全体の力も強そうだけど……)
リベルは退屈なので珍しく思考を巡らせていた。いつも気分のままに生きてきたので、思考を長々と巡らせることはこれまであまりしなかった。
いや、
しかしあまりにも退屈過ぎる為、リベルは久しぶりに思考を巡らせていた
(やっぱりさっきの人達殺して入った方早かったかな?さっきは必死に頼んでいるし、押し通っても面倒なことになるって思ったから受けたけど……やっぱり来るの遅いし。それになにこの部屋?汚くはないけど……いや、やっぱり汚いな。それに——)
『狭い……』
リベルが待ってた部屋は、椅子に背中を掛け、手を少し伸ばせば後ろの壁に手が届く様な正方形型の部屋だった。いや、部屋と言うより小さな小屋のような大きさと汚さだ。リベルの声が聞こえたのか、先程とは違う見張り役の兵士が僅かに反応している
(拘束されている気分なんだけど。食べ物もないしお腹減った。……なんかめんどくさくなってきた。…………ハァー、ダメだ。負の感情が出ると昔みたいになっちゃうな)
リベルは考えるのが嫌いだった。思いのまま行動して喋り、生きていくことが楽しいのだと——それが生きることなのだと、遠い昔教わっていた
そう、リベルが生まれた世界で—…
――「貴方は強い。でもまだ子供なのよ?私は貴方に……自分の心のままに生きて欲しいな」――
生い立ちと強すぎたが故に、人の温かさも友情も知らず、1人で何も感じず生きていた時言われた言葉がリベルの頭をよぎった
(あの頃は……ただ時間が流れていく中、一人でボーッと何かを考えてるような日々だったっけ)
リベルが久しぶりに、少し昔のことを思い出していると、何やら人が近づいてくる気配を感じた
(やっときた……遅くない?)
リベルは頭の中の思考を振り払い、今までのように心のままに任せることにした
(……お腹減った)
リベルがそう思った時ようやく扉が開き、男が急いでいたかのように入って来た
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