第94話 仲間にそれぞれやりたいことがあれば、それだけ面白いことが増えるだろ?
「みなさん、今日は来てくれてありがとうございます。えっとお話が長いのはダメだし、ボクもなに話したらいいかよくわかんないから……、とりあえず乾杯です!」
「乾杯!」
テーブルを囲んだみんながコップを持ち上げて声を合せてくれた。
今日はパーティハウス完成のお祝いだ。新品ピカピカの食堂で、みんなそろってごはんだよ。
集まってくれたのはモータリス男爵さま、ザダッグさん、シエランの両親、そしてブラウディーナさんとポリアトンナさんだ。『一家』の二人はボクとフォンシー、ウルのお母さん係だよ。
もちろん家を造ってくれたケビングとホジェイもいるし、これから一緒に住むことになってるパリュミとサータッチャもだ。今日の料理も作ってくれたんだよ。
「あ、そうだ、言い忘れてた。ザダッグさん、ケビング、ホジェイ、こんな立派なパーティハウスを造ってくれてありがとうございます!」
「……ああ」
「俺こそレベリングありがとう」
「男爵さまのとこでザダッグさんのお手伝いをするんだよ」
へえ、ケビングとホジェイって男爵さまのとこいくんだ。
「しばらくはだ。一人前になったら街に出てもらう」
なあんて男爵さまは言ってるけど、なんだかんだ面倒見いいよねえ。そのうちまたレベリングしてあげよっかな。ビショップあたりでどうだろ。
「それでシエランは、いつになったらソードマスターになるんだい?」
「お父さん……。そのうち、そのうちだから」
「なんでロードなのかなあ」
お酒が入った大人組はみんないい感じで打ち解けてるのかな。シエランに絡んでるフィルドさんなんて、最初はブラウディーナさんとポリアトンナさんを見て大汗流してたもんねえ。
「じゃあウルラータ、君はどうするんだい? ソードマスターがいいと思うよ?」
「ん? ヘビーナイトにするぞ?」
「そ、そうかい。なんで『おなかいっぱい』はソードマスターがいないんだろうねえ」
ソードマスターやってのってボクだけなんだよね。べつに意地悪してるわけでもないんだけど、どうしてこうなっちゃったんだろ。
ここにいる十六人だけど、そのうち十人が冒険者だし残りの六人もそれなりにレベリングしちゃってるから、どうしても冒険者談義になっちゃうんだよね。とくにフィルドさんとシェリーラさんはお酒に弱いし。
「お母様に聞いたわよ。ねえねえあなたたち、最強を目指さないの?」
あ、ポリアトンナさんもだ。先頭は嫌だって言ったの伝わっちゃってるのかあ。
「そういやオリヴィヤーニャさんって」
「アーマードヴァルキリーになったわ。もう大騒ぎ」
「大騒ぎ?」
「お母様喜んじゃってね。スキルがまた派手なのよ」
「はあ」
オリヴィヤーニャさん、アーマードヴァルキリーになれたんだ。ヴァルキリーをレベル100にしないとダメなはずなんだけど、やっちゃったかあ。それにしてもすごいじゃなくって、派手なスキルってどんなんだろ。
「迷宮を歩いてたら会えるわよ。喜んで見せてくれると思うわ」
だろうねえ。そういうの見せたがりだもんね。
みんながそれぞれ勝手にお話してる。
「立派な家じゃない。すごいわシエラン」
「みんなのお陰だよ、お母さん」
あっちじゃシェリーラさんとシエランが。
「……ん」
「……ん」
そっちじゃザダッグさんとザッティが。って、ザッティたちってそれで会話できてるの!?
「ボクたちの家かあ」
ふっと壁を見上げてみれば、そこには垂れ幕みたいに『特盛』バナーがぶら下がってる。いいよねえ、これ。ボクがデザインしたんだけど、うん、カッコいいと思う。
「ウハウハの第一歩だな」
そしたら隣のフォンシーがこっち見て、ニヤニヤ笑ってた。
「フォンシーの言ってるウハウハってどんなの?」
「そうだな……。やりたいことをやりたいときに好きにできることかな」
「お金だけじゃないって?」
「金があればそれなりに好きにできる。けど、それだけじゃない」
なんだろ。
「仲間にそれぞれやりたいことがあれば、それだけ面白いことが増えるだろ?」
「だねえ。ボクは、そうだなあ、ヴィットヴェーンに行ってみたいかな」
「いいな。あたしは王都も見てみたい」
「それとそれと、一回村にも顔出して、お土産なんか渡したいかな。あ、ステータスカードを見せてあげるんだ。ビックリするんじゃないかな」
「エルフの里は、うーん、どうだろう。出てきたばかりだしなあ」
エルフさんはちょっと時間の考え方がおかしいって聞くけど、ホントなのかな。
ボクが村を出てここに来てから、もう二百日以上になってるんだけど。
◇◇◇
「じゃじゃん! これがボクのステータスです!」
==================
JOB:HIGH=NINJA
LV :53
CON:NORMAL
HP :202+254
VIT:66+59
STR:76+30
AGI:75+162
DEX:105+132
INT:51+29
WIS:40
MIN:24+88
LEA:16
==================
「これは……、すごいわね」
ちょっと大袈裟にポリアトンナさんが驚いてくれた。
なんか余興でステータスカードを見せるってコトになったんだよ。
なかなかいい感じのステータスになったと思う。パーティだと完全に前衛系だけど、その中でもここまで基礎AGIとDEXが高いのはボクとウルだけだ。DEXは一番だしね。
「明日には、いよいよヴァハグンになるつもりです!」
ついでに宣言もしちゃったよ。ずっとインベントリに入ったまんまの『ヴィシャップ殺し』を使う時がきたんだ。正真正銘、殴りジョブ復活だね。
「ウルはこんなだ!」
==================
JOB:LORD
LV :53
CON:NORMAL
HP :213+248
VIT:71+109
STR:75+179
AGI:88+62
DEX:96+84
INT:60
WIS:35+63
MIN:32
LEA:17
==================
「ぐむむ」
「どうしたラルカ?」
「な、なんでもないよ、ウル」
ウルがすごくなりすぎて、ちょっと悔しいよ。ウルはパワーウォリアー、ナイト、ロードってつないで、苦手だってVITとSTRをバンバン伸ばしてきたんだ。
ここでジョブチェンジしたら、ボクがウルより上なのってDEXだけになっちゃうんだよね。
「ウルラータはこのあとどうするのかしら」
「ヘビーナイトだ。もっと力持ちになる!」
ブラウディーナさんが訊いたら、ウルがすぐに答えた。ボクたちは前もって知ってたけどね。
ヘビーナイトになったら、ウルってザッティと同じくらい力持ちになっちゃうんだろうなあ。
「……こうだ」
==================
JOB:HIGH=NINJA
LV :53
CON:NORMAL
HP :229+247
VIT:94+65
STR:113+28
AGI:61+161
DEX:93+112
INT:45+36
WIS:41
MIN:21+72
LEA:14
==================
「ザッティはウルと一緒で苦手を補っているところなのよ!」
なんでか説明するミレアが自慢げだよ。まあそのとおりなんだけど。
ザッティはボクと一緒でウィザードを持ってない。そのぶん前衛ステータスを上げてるトコだ。なにがすごいって、ザッティがここからジョブチェンジしたら、VITとSTR、DEXが三桁になっちゃうことだね。
「……次はカラテカだ。けどアイテムを見つけて盾を持つ」
ニヤってザッティが笑った。キマったね。その顔、練習してたの知ってたよ。
「わたしはこうです。VITとAGIが足りていません」
==================
JOB:LORD
LV :53
CON:NORMAL
HP :193+246
VIT:53+112
STR:74+153
AGI:54+61
DEX:97+76
INT:67
WIS:41+54
MIN:28
LEA:14
==================
「そうか。なら次はソードマスターだね」
「ヘビーナイトです」
「んなっ!?」
お父さんの提案をシエランが叩き斬ったよ。ホントはニンジャがいいんだろうけど、シュリケンが足りてないんだよね。なので今のうちにヘビーナイトでVITを稼ぐんだって。
そんなシエランはキッチリ後衛ができる前衛って感じだね。将来はサムライ系三次ジョブを狙ってるみたい。
「んじゃ、あたしだ」
==================
JOB:OVER=ENCHANTER
LV :55
CON:NORMAL
HP :196+207
VIT:63
STR:85
AGI:49+93
DEX:86+113
INT:76+203
WIS:43
MIN:25
LEA:14
==================
オーバーエンチャンターをやってるフォンシーだから、もちろんステータスはINT側なんだけど、すごいね。補助で200を超えちゃってるし。
「硬いウィザードってところかしら」
ポリアトンナさんが感想を言う。おんなじ後衛メインだからかな。
「正直、ここから補助INTを捨てるのが怖いよ。それでもやるけどな」
「次は?」
「シエランには悪いけどニンジャだ」
実は結構モメたんだよね。パーティにあるシュリケンは二個なんだけど、誰が使うのかって。前から予約してたミレアは決まりだったけど、残り一個はってコト。
けどやっぱり速いエンチャンターは絶対だからってシエランが言い張って、フォンシーってことになった。早いとこシュリケン見つけたいよ。
そして最後はミレアだね。さあ『おなかいっぱい』最強大魔法使いのステータスだよ!
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