第61話 残りは四日だ。とことんレベルを上げるぞ
「われに二度手間をかけさせるとは、貴様らも大した器だな」
「ごめんなさい」
「まあよい。われに対する不敬、それ相応に遇してやろう」
死にたくないなあ。ほら『十五個』が本気で怯えてるよ?
みんなが出てったあと、オリヴィヤーニャさんとブラウディーナさんは席を変えて座り直した。ついでに面白くなさそうな顔したバーヴィリア会長が部屋に入ってきたよ。
ボクたち十二人が一列に座って、あっちの三人は反対側だね。
「前線だ」
そうなるんだ。
しかたないよね。別にオリヴィヤーニャさんは罰だーって言ってるんじゃないだろうし。逆に買ってくれてるんだろうしね。
「で、ステータスだ。見せるがいい。それとジョブ遍歴だ」
見てから決めてほしかったなあ。
「ふむ、なかなかではある。上から三十には入るであろう」
ばっさばっさって46層からモンスターを倒しまくって地上に戻ってきたわけだから、当然ボクらのレベルは上がってる。オリヴィヤーニャさんが言ってる『三十』ってのはパーティの数だね。
前に言ってたっけ。モンスタートラップまで行けるパーティの仲間入りってことかな。
ボクはレベル28でファイターをもちろんコンプリート。フォンシーはレベル20でまだコンプリートしてないね。シエランはレベル18。ウルはレベル24でハイウィザードをコンプ。ミレアとザッティはレベル21だ。二人ともコンプリートしてないけど、こっからジョブチェンジはしないよね。
『メニューは十五個』はニンジャとハイウィザード、ナイトがそれぞれ二人ずつだけど、どうするんだろ。
「あの、黒門が開くのは五日後ってことで、いいですか?」
「そうだな。悪いが逃がさんぞ?」
「もちろんです。わたしたちは戦います」
シャレイヤはそう言って、『十五個』のメンバーも頷いてる。ここまでがんばったもんね。
「日数を訊いたのはジョブチェンジか?」
「はい。それぞれハイニンジャ、ロード、ナイトを目指します」
「堅実にして冒険的よな。さすがは『サワノサキの子ら』だ」
オリヴィヤーニャさんとブラウディーナさんがふむふむってしてる。
全員がシーフとプリースト、ウィザードができて、エンチャンターが二人、ハイウィザードも二人。うん、確かに堅実なんだろうね。
けれど『十五個』はここで止まらないと思うんだ。こっからもっかいジョブチェンジして、それでも異変に間に合わせる気なんだろうね。
もちろんボクたちだって負けてられない。
「『おなかいっぱい』よ、貴様らは? ラルカラッハとウルラータ、フォンシーか?」
「ボクとウルだけです。フォンシーはナイトのままでいきます」
ミレアとザッティはロード、シエランはもちろんケンゴーでこのままだ。フォンシーもナイトで、こっからレベルを上げまくるぞ。
「ウルラータはハイニンジャであろうな。ラルカラッハ、貴様は?」
「ソードマスターです」
こっから後衛はありえない。ナイトは硬くなれるけど、ボクの持ち味はAGIとDEXだ。サムライもアリだけど、カタナはシエランの一本だけ。だから当然のソードマスターってことだよ。
「で、あろうなあ。ところで──」
ニヤニヤってしながらオリヴィヤーニャさんがインベントリからなんかを取り出した。スクロール?
「『洪家三宝』。『フェイフォン』へのジョブチェンジアイテムだな。ステータスは問題なかろう。レベル40が条件だ」
え? それって、フェイフォンって、……なに?
「ラルカ……。カラテカ系の上位三次ジョブだ」
「えええええ!?」
フォンシーがため息交じりに教えてくれた。上位三次!? カラテカ系!?
まさかくれるの? 条件は? お金? 戦うこと?
「うわはははは! そのジョブ遍歴でフェイフォンを知らぬか。なかなか驚かせてくれるではないか」
「ごめんなさい」
どうしよう。知らなかったのはごめんなさい。いくらでも謝るからさ、それ、ほしいなあ。
「やらん」
「なんでさっ!」
思わず声出しちゃったよ。おかしいでしょ。これって絶対くれる感じだったでしょ!?
これを使って強くなって異変に立ち向かうのだ、ってそういうノリでしょ。
「お母様、あまり意地悪しては」
ほら、ブラウディーナさんも言ってるよ?
「それは『エクスプローラー』に渡すのでしょう?」
ガックリだよ。どういうことさ。
「遅参への嫌味だ。胸がすいたわ」
そういうの要らないから。ほんとにもう。
「貴様らにくれてやるにはまだ早い代物だ。冒険者ならば自らの手で掴み取るがいい」
まあ、そりゃそっか。上位三次なんてまだ早いって言われても、そうですねえってしか返せないし。
「われも道半ばよ。研鑽を積まねばな」
「オリヴィヤーニャはどんなジョブなんだ?」
ウルっ!? すごい笑顔でなんてこと言うのさ。
「われか? われはな……」
オリヴィヤーニャさんも嬉しそうに溜めるし。
「『ヤギュウ』だ。レベルはまだ25だがな」
「昨日ジョブチェンジしたばかりだったの」
ブラウディーナさんが付け加えてくれたけど、オリヴィヤーニャさんくらいならレベル0でも基礎ステータスで押し切っちゃうんだろうなあ。
ところでヤギュウってなに? ねえ、なんでシエランの目が燃えてるのかな。
「ほう、良い目ではないか。シエラン」
「……すみません」
「よいよい。ケンゴーであったな。目指すのか?」
「はい」
「励め」
なんだかよくわかんないやり取りだけど、シエランの背中から炎が立ち上ってるねえ。すごいや。
あとで聞いたんだけど、ヤギュウってサムライの上位三次ジョブなんだって。なるほどシエランが怖い顔するわけだよ。
「では五日後に会おう。それまでにレベルを積み上げておくがいい」
てな感じでオリヴィヤーニャさんたちは会議室を出ていった。会長って一言もしゃべんなかったね。
「いやあ、疲れたね」
「そうだねえ。シャレイヤたちは明日からどうするの?」
一階に降りてきて、ごはんを食べながらお話しだよ。『十九の夜』も一緒にね。
「わたしたちは『十九』と一緒にレベリングだね。そっちは?」
「とりあえず宿に戻って休んでから考えるよ」
明日から『おなかいっぱい』は、一パーティでがんばるってことくらいしか決めてない。ボクとウルはジョブチェンジするけど、あとはもうレベリングしかないだろうなあ。
「あのさ」
「なに?」
「わたしたちね、冒険者やってたよね?」
「やってたんじゃない? ボクたちだってわかってないよ」
ここで気安くそうだね、なんて言えるわけない。
「そうだよね、うん。でも楽しかった。大変だった二日だけど、すごく楽しかった」
「こっちもだよ。ありがとね」
こんな感じで『おなかいっぱい』と『メニューは十五個』のちょっとした大冒険は終わったんだ。迷宮異変は目の前だけどね。
◇◇◇
「ジョブチェンジしてきたよー」
「ウルもだぞ!」
次の日の朝、ボクとウルはジョブチェンジした。昨日はあれから全員でばたんきゅーだったよ。
==================
JOB:SWORD=MASTER
LV :0
CON:NORMAL
HP :109
VIT:52
STR:60
AGI:44
DEX:52
INT:23
WIS:25
MIN:19
LEA:16
==================
予定どおりボクはソードマスターになった。
なんとついに基礎STRが60だよ。INTはそんなに高くないけど、前衛ステータスはばっちりだね。ボクとザッティはウィザードを持ってないから、前衛でがんばらないと。
ソードマスターっていうのは、盾を持てない剣士ジョブだね。サムライと似てるけど、こっちはカタナじゃなくって剣ならなんでも使えるスキルがもらえるんだ。特にDEXが伸びるジョブだよ。
魔法しか通用しないキラーゴーストなんかも斬れる『霊斬』とか、やたら硬いのを真っ二つにする『切れぬモノ無し』なんてスキルがあるんだ。
ボクもそろそろ剣の使い方を覚えないとね。
==================
JOB:HIGH=NINJA
LV :0
CON:NORMAL
HP :111
VIT:37
STR:40
AGI:48
DEX:60
INT:45
WIS:21
MIN:19
LEA:17
==================
こっちはウルのステータスだ。バランスがいいけど、AGI、DEX寄りって感じのステータスだね。DEXがすごいのはニンジャとハイウィザードがあったからかな。
ハイニンジャのすごいとこは、VIT、STR、AGI、DEX、INT、MINが全部増えるってこと。全部がガツンって増えるわけじゃないけど、それでもいいよね。AGIががんがん増えるからウルは速い魔法使いにもなれるんだ。
もちろんニンポーとハイニンポーも使えるから前衛でも戦えるよ。
ちなみにだけど、フォンシーのナイトは硬いファイターって感じ。VITとSTRが増えやすいから前衛にはもってこいなんだけど、AGIが伸びないから盾で受けるタンクになるかな。
もちろんフォンシーの場合は魔法があるから、盾で受けてから魔法をドカンっていうアタッカーがメインだね。
シエランのケンゴーはサムライの上位で、なんかスキルがすごいみたい。ここからがサムライの本番らしい。MINが高いと威力がすごくなる『大切断』とか『剣豪ザン』なんかは、攻撃魔法みたいにたくさんのモンスターをいっぺんに斬ることができるんだ。
最後に、ザッティとミレアがやってるロードだけど、回復魔法が使えるナイトだね。前衛ステータスの伸び方はナイトと一緒だけど、WISが増えるジョブだ。回復魔法っていっても、プリーストの魔法を全部使えるわけじゃなくって、中回復程度だね。完全回復なんかはムリ。けれどザッティみたいにプリーストを持ってない人でも自分で回復しながら戦い続けられるジョブってことだ。
「ほれラルカ。残りは四日だ。とことんレベルを上げるぞ」
「そうだね!」
バッタレベリングで『おなかいっぱい』のみんなは、迷宮異変に立ち向かうためのジョブになれた。あとはレベルを上げまくるだけだ。やるぞぉ。
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