第59話 ホントにやるの?
「なるほど、これがプレイヤースキルってわけね」
「なにそれ?」
「どれだけ戦いに慣れてるか? スキルやステータス以外の強さ?」
シャレイヤは胸を張ってるけど、どこまでわかってるんだろ。なんか怪しいなあ。
「って、サワお姉ちゃんが言ってたわ」
またかあ。
「ボクたちの場合はバッタに慣れたってことだね」
「ここには何度も来るだろうし、越したことはないな。それとラルカ」
「なに?」
「MINが上がった。13だ」
やったねフォンシー。そっかあ、バッタはレベルだけじゃなくってMINまで上げてくれるんだ。すごいや。
なあんて話ができるのも、一セット目が終わったからだね。しかも慣れたのか一時間半くらいでなんとかなったよ。お陰で打ち合わせをしてから三十分ずつ休むことができる。今はちょっとでもスキルを回復させときたいんだ。
「ザッティは次か次の次くらいでコンプリートだね」
「……おう」
一セット目が終わったとこで、ザッティはレベル21、ミレアが18だ。ミレアはもうちょっとナイトのまんまで、ザッティはコンプリートしたらすぐにメイジだ。ほんと、元々のHPとVITが無かったら怖くてできないよ。
「さて、あたしたちも覚悟を決めないとな」
「やるぞ!」
「ホントにやるの?」
「おう!」
フォンシーとウルが気合を入れてるけど、大丈夫なのかなあ。
ザッティはもちろんだけど、ホントに危ないのはシエランとフォンシーなんだよね。二人とも変に盛り上がっちゃってさ。やるんだー、ってなってるんだよ。
ほら、シエランなんか黙ってカタナを見てるもん。ちょっと怖いって。
◇◇◇
二セット目最初の戦闘が終わってすぐ、ザッティがチラってステータスカードを確認した。
「……レベル23。コンプリートだ」
「次の戦闘が終わる手前でやるよ。奇跡はミレア」
「わかってるわ!」
よっし。これでコンプリートしてなかったら経験値を余らせるとこだったよ。
さあ、こっからが本番だ!
「『ラング=パシャ』!」
「ウル、ミレア。絶対に三人を守るよ!」
「おう!」
「わかってるわ!」
ジョブチェンジしたのはザッティだけじゃない。シエランとフォンシーもだ。
ザッティはメイジになったけど、それはいいんだよ、それは。問題なのはシエランとフォンシーだ。
『ハイウィザード!?』
『火力を上げようと思ってな』
『コンプリートしたら前衛ジョブになります』
なあんてやり取りがあってさ、二人はハイウィザードになった。たしかにミレアに比べたらHPもVITも上だけどさあ、ここでやることかな。
「……レベル10」
「レベル7です」
「こっちもだ」
奇跡がかかった戦いが終わって三人が一気にレベルアップした。
たしかにHPは上がっただろうけどさ、VITが伸びないジョブだからねえ。こっからはザッティよりフォンシーとシエランが危ないんだよ。まったくもう。
「がんがんスキル使ってね! 特にバフ系」
◇◇◇
「いやあ、もうちょっとだったんだけどねえ」
「……そうだな」
二セット目が終わったとこでザッティはメイジのレベル19になったよ。うーん、惜しい。けどロードはもう目の前だね。
==================
JOB:MAGE
LV :19
CON:NORMAL
HP :88+52
VIT:52
STR:58
AGI:31
DEX:43+38
INT:10+61
WIS:9+48
MIN:16
LEA:14
==================
これがザッティのステータスだけど、いよいよって感じだよね。前衛ステータスは前から文句無しだったし、合計WISがロードの条件、12を超えてる。しかもロードになるタイミングがねえ。ふひひ。
ボクは相変わらずのパワーウォリアーでレベルは48。ここまできたら、そうそうもう上がんないかな。
フォンシーとシエランはハイウィザードのレベル16。HPが140を超えたし、多分もう大丈夫だと思うよ。
ミレアはナイトのレベル31だから、ザッティと合せてジョブチェンジだね。そいでウルはカラテカのレベル45。
「ところでザッティ、あっちが気になる?」
「……いや」
ザッティが視線をそらしてるね。わかるよ。
「おめでとう、シエラン!」
「いえ、そちらこそ」
なんかね、シャレイヤとシエランが目をキラキラってかギラギラさせて喜びあってるんだよ。
なんでかっていうとさ、二セット目の宝箱でね『カタナ』と『クナイ』が出ちゃったんだよね、これが。
「やったね。これでケンゴーになってもカタナ持ち!」
「はい。そちらもニンジャが二人ですね」
あのときのシエランはどこにいったやら、もうにっこにこでシャレイヤたちとお話ししてるんだ。まあ仲良しならいいんだけどさ。
『メニューは十五個』のニンジャはメーリャだよ。壮絶なじゃんけん大会の結果だったんだ。二人目は誰がなるんだろうねえ。なんでか知らないけど『オーファンズ』ってニンジャが大人気なんだって。
それとマウィーがハイウィザードになってて、残りの四人はパワーウォリアー。徹底的に硬くするみたいだね。
◇◇◇
「じゃあ最後、やろうか!」
『おうっ!』
ボクの掛け声に元気な返事が返ってきた。三十分ずつの休憩だからちょっとしかスキルは戻せなかったけど、やる気はバッチリだよ。勝負の三セット目、いってみよう!
「……コンプリート!」
「やったわね。ザッティ!」
一戦目が終わったとこで、いつになく元気なザッティの声が響いた。ついに、ついにだ。ミレアも嬉しそうだね。
「じゃあ次の戦闘でやっちゃうよ。いいかな、フォンシー」
「ああ、奇跡は任せとけ」
後ろの方で魔法を撃ってるフォンシーだけど、たぶん笑ってるんだろうな。みんなが待ってたロードの誕生なんだから。
「いくぞ。『ラング=パシャ』!」
次の戦闘が終わる直前、フォンシーの声が響いて奇跡が起きた。
「四人いっぺん!」
「楽しそうだな、ラルカ」
そうさフォンシー。ここでジョブチェンジするのはザッティだけじゃない。ボクもウルも、そしてミレアもさ。
「レベル7だぞ」
ウルはカラテカからハイウィザードになった。パーティ四人目だね。
『魔法は大事だぞ』
なあんてウルがね。ウルより柔らかいフォンシーとシエランがやるって言ったもんだから、誰も反対しなかったよ。
「……オレは6だ」
「わたくしもよ!」
そうだよ、ザッティだけじゃなくって、ミレアまでロードになったんだ。
最初に仲間になったとき、VITが9で心配されちゃってたミレアと、ソルジャーでINTが7だったザッティがだよ。別に狙ったわけじゃないんだけど、なぜか一緒にロードなんだ! ホント、仲良しさんだね。
『おなかいっぱい』はこんなにすごくなったんだ。そして。
「ボクはレベル9」
そしてボクはなんと……。ファイターだよっ。普通だね。
だってボクがなれる前衛ジョブってソルジャーかこれしか残ってないんだもん。
そりゃあさ、みんながこんなトコでも後衛ジョブになってがんばるって言うからさ、ボクだってウィザードになりたいって言ったんだよ。
『ザッティとミレアだけに前衛をやらせる気ですか』
そしたらシエランに返されちゃった。だよねえ。
『あたしたちを守るのは、やっぱりリーダーじゃないとな』
『ラルカはかっこいいリーダーだな!』
まったくフォンシーとウルったらさ。しかたないからファイターだよ。ボクはリーダーだからね。みんなを守らないとなんだよ。つらいね。
近くできゃいきゃい言ってるのはシャレイヤかな? ニンジャになったんだろうねえ。
◇◇◇
それからもボクたちはがんばった。ミレアとザッティ、それとボクは前衛で、とにかく後ろにバッタが流れないようにしたし、フォンシーとシエランは魔法を撃ちながらレベルを上げてった。ウルはひょいひょいモンスターを避けながら殴ったり蹴ったりしてたよ。ハイウィザードだよね?
何回もバッタに体当たりされたり蹴っ飛ばされたりして痛い思いをしたよ。それでも『おなかいっぱい』と『メニューは十五個』は、誰も倒れないで最後までがんばった。
「終わりが見えてきたな。ラルカ、頼む」
「わかったよ。『ラング=パシャ』」
フォンシーが言うのとほとんど同時に、ボクが最後の奇跡を起こした。経験値が軽いジョブだし、ボクが一番レベル低いからね。
ああ、シエランがすっごく嬉しそうだよ。ハイウィザードなのに左手に『カタナ』を持って、ほんのちょっとの間だろうけどペナルティもらってるはずなのにね。
そんな『カタナ』がキラって光って消えてった。奇跡が叶ったんだね。
「あたしは……、まあいいか」
「ケンゴーです。ケンゴーのレベル6です!」
やれやれって感じのフォンシーと、インベントリから取り出した『強靭なカタナ』を握りしめて喜んでるシエランの差ってなんなんだろうねえ。
終わってみれば、フォンシーはハイウィザードからナイトでレベル7。
シエランはハイウィザードからケンゴーのレベル6。
ウルはハイウィザードのレベル17。ジョブチェンジは一回だったね。
ミレアはナイトからロードでレベル16。
そしてザッティはシーフ、メイジ、ロードでレベル16だ。
ボク? ボクはファイターのレベル18だよ。最後に『ラング=パシャ』使っちゃったからねえ。ウルと一緒でジョブチェンジは一回だったよ。まあ、これからこれから。
ついでに『メニューは十五個』だけど、ピョリタンとファリフォーがナイト。ディジェハとマウィーがハイウィザード。シャレイヤとメーリャがニンジャだね。
こっちと違って、ホント堅実だよ。
こんな感じで、テレポータートラップから始まった46層、ジャイアントローカストとの闘いは終わった。後半はオリヴィヤーニャさんに煽られて、自分たちで勝手にやったんだけどね。
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