第20話 魔物増殖

魔物増殖スタンピード??」


「はい。魔物たちがダンジョンからあふれてくる現象のことです。」


 魔物増殖スタンピード……ちょっと前に聞いた気がするな。でもダンジョンから魔物が溢れないようにしっかりと記録とかされてたんじゃないの?


「……どうやら、イレギュラーが発生して冒険者たちが亡くなり、一気にエネルギーが溜まってしまったそうです。街からは少し離れているのでここまで被害が出るのはもう少しあとでしょうけど、すでに魔物たちは溢れ始めています。どうか、お願いします!!」


 ……なるほどね。イレギュラー、か。それが原因っぽいな。それで色んな人に被害が出るのは困るし、アスタが負けることはないと思うけどシーナとグリムはわからない。俺が止めるしかないんだな。


「わかりました。俺が行きますよ。」


「本当に! ありがとうございます!!」


「じゃ場所教えてください。」


 俺は正確な場所を聞いたら『雷変化トランス・サンダー』を使用してその場所まで向かった。俺がその場所についたころにはもうすでにかなりの数魔物が溢れてきていた。そして今もどんどん溢れてきている。少しだけ聞いたところ、魔物増殖スタンピードは核の魔物がいてそれを倒すと魔物の増殖が止まるらしい。とりあえず殲滅しながらそいつを探すしかない。


「《死霊術士》の力、見せてやるよ。出てこい!」


 俺が呼ぶと俺のアンデットたちが次々現れる。俺がこいつらに命令することはただ一つ。


「あいつらを殲滅しろ。」


 俺の言葉を聞くとすぐに魔物たちのほうへと向かっていく。俺もこいつらに負けないように、と思ったがまだ逃げてない人がいるみたいだ。戦ってるから冒険者か?


「くっ! はぁ、はぁ、まだまだ増えて来てる……俺じゃ無理かよっ……!」


「早く逃げてください。ここからは俺がやります。」


「は? 誰だよお前……いや、かなりの実力者みたいだな……なら頼みがある! 俺の仲間を助けてくれ!!」


 どういうことだ? なにかわけでもあるんだろうか?


「俺の仲間はダンジョンの中で変な恰好をしたやつにつかまったんだ! 俺はたまたま転移罠を踏んだおかげで助かったけど……頼む! 初対面に頼むことではないけど、お前がすげぇやつなら! 俺の仲間を助けてくれ!!」


 変な恰好をしたやつ? そいつがこの人の仲間を攫ったあとに魔物増殖スタンピードが発生したのか? なにか変だ……黒幕はそいつ? その可能性は考えておいてよさそうか。


「わかりました。必ず……とは言えませんが、全力で探します。」


「その言葉が聞けただけでうれしいよ……」


 俺の言葉を聞いて安心したようにその場に倒れこむ。


「『アンデット化』おい、この人を安全な場所まで運べ。それ以外のやつは戦闘に参加、運んだやつも終わったら戦闘に参加しろ。」


 あいつらが倒した魔物をアンデットにする。そして命令を出す。俺はこれからダンジョンの中に入ろうと思っている。逃げている、という可能性もあるが、逆に考えれば魔物増殖スタンピード中のダンジョンほど人に見つからない場所もないだろう。


「さ、行くか。」


 再び雷となってダンジョンへの道を強引に開いていく。そして数分後、俺はダンジョン内へと侵入を成功させていたのだった。


「……今思ったが、防御面薄すぎないか?」


 強引に開いていく上で気になったのは防御の薄さである。VITがまあまああるとはいっても装備無しは薄すぎると思う。けど買う気にもなれない。ってことで俺が取ったのはこれだ。


「『収束創造』」


 これで土魔法の鎧と風魔法のローブを纏う。なぜ土魔法と風魔法かと言われると、鎧とローブと言えばこれな気がしたからだ。別に他の魔法でもいいので、敵に合わせて変えるのがいいんだろう。火を使う敵には水の鎧や水のローブとかね。


「いや、待ってこれ……風魔法のローブ羽織ってるとAGIちょっと上がってる……?」


 これ大発見です。他にはなにが上がるのか気になったが、今じゃないと自分を律した。俺が今することを考えるんだ。変な恰好の男とやらを探すこと。行くぞ。


♢♢♢♢♢♢


「ふっふっふっふ……これが成功すれば我が君に喜んでもらえるッ! あァ……至福ですッ……! 全ては! 汚れなき世界のために!」


「へぇ、その我が君とやらに合わせてくれよ。」


「なっ!? 貴様は誰だ!! どうやってこの場所を突き止めた!」


 簡単なことだ。【極限集中ゾーン】と【飛行】を併用して五感の強化と高速移動を行い、こいつとこいつの作ってるものの音を聞いただけだ。いやー、音の大きいものを作ってたり大声出してくれてて助かった。それに魔物増殖スタンピードの影響かこいつの影響かは知らないがダンジョン内にも変化が起こっていた。それのおかげで道が早く見つかって早く来ることが出来たんだけど。


「それはこの際どうでもいいじゃねーか。とりあえず―その人たち、返してくれよ。」


「はっ! そんなこと出来るわけないだろうが! これは我が君への献上品となるのだ!」


「あーそう、じゃあ力づくで奪い取ってやる。『絶対零度アブソリュート・ゼロ』」


 俺は冷気を一気に放って作っている装置と男を凍らせる。力づくで、とは言ったものの殺すわけにはいかない。情報を吐き出させないと。じわじわいくと負ける可能性があるからな。俺の負けの条件はあの人たちを殺されることだから。


「これで終わりだよ。あ、返事出来ねーわな。」


 俺は道中で倒した魔物をアンデットにして男を担がせる。残りの4人……救出を頼まれた人たちは俺が念力で低調に運び出す。どうやら地上も終わったみたいだ。もう魔物は増えてない。


「よくやったお前たち。戻れ。」


 そう指示して俺の影の中へアンデットたちを入れた。そして救出した人たちを俺に頼んできた人のもとへ届けた。


「あぁ……ありがとうございます……」


「ちょっと治療を受けないとだと思うので連れていきますね。」


 俺がその場を離れようとしたその時だった。


「ちょっと待て。お前、動くんじゃない。」


「はい?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る