第19話 Sランク冒険者
俺たちの家具は全て向こうに置いてきたので、全員分の家具なんかを買って借りた家でそのまま一晩を過ごした。シーナとグリム達は疲れてたみたいですぐに眠りについたのだが、アスタは悪魔だからか結構遅くまで起きてて、俺も寝れなかったから襲われてしまった。そして時間は翌朝……
「おはよ~スイ。昨日は楽しかったね?」
「はぁ~、びっくりしたんだからな?」
「あはは、いいじゃんかさ。楽しかったでしょ?」
「いや、まあ、そりゃ……」
「じゃあおっけーだね! 降りよっか。二人が起きてくる前にさ。」
俺たちはベッドから体を起こして服を着、部屋の外に出る。幸いというかなんというか、まだ二人は起きてきていないみたいだ。俺たちは早速朝ご飯の調理に取り掛かる。とは言っても食材がない。どうしたものか。
「あ、朝市みたいなのやってるみたい。一緒にいこーよ!」
「ん? そうなの? 分かった、行こうか。」
俺は外に出る用意をパパっとする。朝早いから外は寒い。軽めの防寒具を纏って外に出る。俺たちの他にも朝市に向かっているであろう人たちがちらほらと見られる。俺は場所を知らないが、アスタは魔法でわかるだろうし、他の人たちについていけば無事着くことは出来るだろう。
「えいっ!」
「うわっ!」
俺は驚いた。なにかというとアスタが手を握ってきたのだ。こんなことしたことないからは、恥ずかしい……
「むふふふふ……!」
アスタはどうやらご満悦のよう。まあ恋人になったとはいえ、こんなことはあまりしてなかったし、俺もうれしい。ずっとこんな平和な毎日が続けばいいのに。
「うーんとー、これとこれ、あーとーはーこれかなっ!」
「アスタって食材を見る目とかあるの? 結構パパパって決めて行ってるけど。」
「いや、『鑑定』だよ。また今度教えてあげるね。」
そうか、アスタは『鑑定』使ってたんだ。俺の想像通りの力ならそれだけ早く選べるのはわかる。俺も使ってみてぇ。
「あいよ、銀貨1枚と銅貨3枚な!」
「はい、これで。」
「まいどあり! あんちゃん彼女さん大事にすんだよ!」
「うっす……!」
そんな会話をしながら次々と買い物を済ませていく。家具を買うときに言われたのが、大きいものを買うときはカードでいいが、小銭とかは直で持っておいたほうがいいとのことだった。そのアドバイスがとても有効に働いていた。
「荷物持ちありがとねスイ! じゃあ家帰ろっか。もう起きてるかもね。」
「そうだな。帰ろうぜアスタ。」
俺たちは買い物を済ませて帰路をたどっていくのであった。
「帰ってぎだよぉ~!」
俺たちが帰って一番にやってきたのはシーナだった。話を聞くに、起きたら俺たちがいなかったので捨てられたと思ったらしい。うーん、なんとも悪いことをした気分だ。グリムはまだ寝ていたから大丈夫だったみたいだ。急いで朝ご飯を作ってグリムを起こしにいく。
「おーいグリムー。起きろー。」
「うーんむにゃむにゃ……あと五分、あと五分……」
朝のテンプレ言ってんじゃないよ! やっぱどの世界でもこの言葉は共通なんだな……
「うるせー、起きないと朝飯抜きな。」
「えっ!? ごめんなさい! 起きる起きる!!」
朝ご飯の魔力のほうが強かったみたい。まあ起きれてなによりでございます。
「いやー、美味かった。」
「うん! 美味しかったね!」
「ああ! めっちゃうまかった!」
朝ご飯を食べたあと、俺は今後の予定を確認し始める。今日もダンジョンに軽ーく潜ってお金稼ぎをしてこようと思っている。そのためにもまずは本部へ行ってどこがいいか聞いてみようと思う。
「じゃ、行ってきます。」
「はーい。行ってらっしゃーい。」
俺はアスタに見送られ、協会本部へと向かっている。魔法は付与魔法のみ使っているが、普通に歩くよりもだいぶ違う。前はここまでじゃなかったと思うんだけどなぁ? ……俺の体が魔法に慣れて上昇値が上がった? いやいや、そんな早く上がるわけないっしょ。気のせいだな。
「すいませーん、今日もいいダンジョン教え……て?」
「ちょっと! こっち来て!」
「ちょ、ちょっと!?」
俺は協会に入るなりいきなり奥へと連れていかれる。この前魔力量とか魔法適正を測った部屋と同じ場所だ。
「報告にあったんだけど骸骨ってなに? 魔法にそんなのなかったよね? まさか……人間じゃないとか?」
「あ、これですか? 出てこい、カル。」
とりあえずカルだけを呼び出す。カルの姿を見た受付の人は驚きと恐怖で足がビクビクしている。
「これは……」
「俺のスキル、【
「そ、そうなの? これって元はどんな魔物か聞いても?」
「あ、はい。これは
「ぐ、
なんか顔がもう見せられないようになっている。なんかまずかったかな……まあこいつ怖いし、多分そんな感じだろ。俺は倒したからそこまで感じないけど。かわいいとかは思わないんだが。
「ジェイド君……だっけ? 君どこから来たの? そんな力もだけど、
「いえ、一人っすね。」
「そっかぁ……一人かぁ……」
なんかもう遠くを見つめている……え? こいつってSランクの魔物なの? まあそりゃ強かったけどさぁ……今じゃそこまでだと思うし……
「ふぅー……じゃあこれで決まりですね。」
「なにがですか?」
「あなたの二つ名ですよ。」
「二つ名?」
「はい。Aランク以上の冒険者には必ずついているものです。中ではBランクでもついている人はいますけど。」
そんなかっこよさそうなものが俺につくのか!!! やべぇ、めっちゃ楽しみ!!!
「そ、それで俺の二つ名はなんですか!?」
「あなたの二つ名……それは―《死霊術士》ジェイドです。」
し、《死霊術士》ぃ? かっこいいけど、かっこいいけどさぁ!! なんかもっとかっこいいものだと思うじゃん!!! 全属性使えるんだぜ!? 他のがあってもいいじゃんかさぁ!!
「この二つ名と共に明日、新たなSランク冒険者の登場を各地に知らせます。」
「あ……はい……」
目に見えてガックシしている俺をよそ目に淡々と作業を進めていく。
「あ、はい。なんですか? ……え?
「なんですか?」
「近くで発生した
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