第18話 ダンジョンボス

「さーて、迷宮の攻略なんて小学生ぶりじゃないか? 小学生の迷宮ってよりか迷路だけど。虱潰しに進んでいくしかないか。」


 迷宮の攻略に心を躍らせるが、攻略の仕方を考えるのはめんどくさいのでどんどん進んでいくしかないんだよな。けど、複数の道があるならアンデットたちを行かせて【視界共有】があるから普通よりも攻略のしやすさは上なんだけどな。


「じゃ俺こっち行くから。お前らこっちで、残りのやつはこっちな。行け!」


 アンデットたちをチーム分けし、それぞれの攻略を開始した。俺は俺のルートに集中しようと思う。

 まず進んで見えたのは魔物だ。狼の魔物……しかし、あいつらほどじゃない。だーーいぶレベル的には下だろう。なら、簡単だな。


「『ウォータースピア』」


 並列起動マルチトリガーでの魔法発射。全員一発で頭を貫いた。ふぅ、終わりだな。


「めんどくせ。魔法使った方がはえーや。『風の靴』『風流操作エアコントロール』」


 迷宮の雰囲気というか、こういうのが楽しいから移動は走りか徒歩だったんだが、如何せん道が長い。『雷変化トランス・サンダー』だと周囲すら見えないが、この二つなら大丈夫。浮いて移動を速くするだけだからな。雰囲気を楽しめなくなるなんてことはない!


「よっしゃ、アスタとかも待ってるし頑張ろうぜ!」


 俺は俺の今出せる最速でゴールを目指し始めた。と、思ったところで二つ目のルートに行ったアンデットたちから連絡が来る。どうやら、そこに次へ進む道が、階段があったらしい。


「『雷変化トランス・サンダー』」


 雰囲気とかなりふり構わずとりあえずあいつらの下へ向かった。時間にして三分とかからなかっただろう。


「ナイスだお前たち。じゃ、次へ進もうか。」


 他のやつらも魔物をいくつか倒しているようだ。俺が倒したのと、ボスのも合わせればお金は結構稼げるのではなかろうか。


「下の降りる階段……この先から感じる力めっちゃ強いな。まあさっきのやつに比べればって話ではあるのだが。」


 俺たちは階段をぞろぞろと降りていく。その先には大きな広間があり、でかめの狼が待ち構えていた。


「お前ら手出すな。俺が一人でやる。『魔法力付与マジックエンチャント』『敏捷性付与クイックエンチャント』」


 付与魔法の二重発動。そこから俺は魔法を発動し始めた。目の前の狼を殲滅するために。


「『ウィンドカッター』!『ボルトバレット』!『収束創造』!」


 風の刃と雷の弾を放って出来た隙に氷魔法を固め、刀を創造した。


「そーらよっ!」


 付与魔法で上げたAGIによって狼の首を狙う。俺の魔法で怯んでいた狼は俺を見失い、そのまま首を落とされて死んでしまった。


「はえ?」


『レベルが上がりました。ステータスが上昇しました。』

『今までの行動を参照……スキルを獲得します。スキル【瞬走Ⅰ】を取得。』

『特殊効果:渇望する肉体パワー・グリードを発動します。』

『大狼のステータス・スキルを一部取得……成功しました。』

『スキル【嗅覚強化Ⅰ】を獲得しました。』


 あっけなく終わってしまった俺は情けない声を出す。大狼……それがあいつの名前か。ま、そんなことはどうでもいいか。大狼を倒したときに奥に魔法陣が出現したからそれに乗る。すると目の前がパアッと光り、目を覚ますと俺がいたのはダンジョンの入り口前だった。


「は、え? も、もう終わったんですか!? それにうしろの骸骨は!?」


「ん……おお、戻って来たか。終わったよ。買い取りってどこで出来る?」


「これがSランク……あ、はい、買い取りはこちらで出来ますけど……もしかしてそれですか?」


「うん。これと……これ!」


「わかりました。少々お待ちくださ、ってこれ大狼じゃないですか!」

 

 目を覚ました時にちょうど入り口で声をかけてくれた職員の人がいた。買い取りが出来る場所を聞いたが、どうやらここで出来るみたいなのでそのままお願いする。しかし、持ち込んだ魔物が大狼であることに気づくと驚きの声を上げた。


「大狼って……裏ボスですよ!?」


「裏ボス!? ……ってなんですか?」


「はぁー、やっぱり初心者なのね。裏ボスって言うのはね、ダンジョンが用意した近道であり罠なのよ。そのダンジョンのランクよりはるか上のランクの魔物を用意して近づいてきた人間を殺して養分にする。それが裏ボスの役目なの。」


 ひえっ! なんかやばいやつなんだな……でも結構簡単に倒せたけど……?


「……なに? なんか言うほどでもなかったな、みたいな顔してるけど。Sランクっていうのは規格外、世界で見ても5人しかいないとても凄いランクなの!」


 ほえ~、そんなすごいランクだったんだな。てか、実力もわからずに与えてよかったのかな?


「あ、これ買い取りお願いしまーす。」


「はい、すいません。」


 俺が再び買い取りのお願いをすると、流石は職員というところでしっかり切り替えてきた。あとは待つだけだな。ふんふふんふふーん。


「買い取り終わりましたよ。えーと、今回の買い取り金額は……金貨14枚です。」


「うえっ!?」


「大狼の素材は大変貴重ですので……それだけ高くなっております。そして、魔石の金額だけは別額となっておりまして。―なんと、金貨120枚です。お金は冒険者カードに入れておきますね。」


「……まじすか。家は借りれるだろ。ってことで、ありがとうございましたー!あ、戻れお前ら。」


 素材を持たせていたアンデットたちを自身の影の中に戻す。そして速攻でアスタたちの下に戻るべく、足を進めるのであった。


♢♢♢♢♢♢


「あ、スイ! お帰りー!」


「お、お帰りなさい! お父さん!」


「お帰り! お父さん!」


「金は稼いだ。じゃあ家借りに行こう。もっと金稼いだら家買おうな。」


 三人に合流した俺は早速家を借りに行く。じゃないと今日の家がないからな。さーて、行きましょうか。


「これとかがいいんじゃないか?」


「うーん、これは?」


「わ、私は二人にお任せしますっ!」


「お、俺もだ!」


 家のことなどわからなかったようで、シーナとグリムは俺たちに任せると言っている。うん、俺もよく分からん。けどなんかよさそうなのを選んでる。


「じゃ、これにしよっか。すいません、これでお願いします。」


「わかりました。身分証と料金月銀貨45枚お願いします。」


 俺が冒険者カードを差し出す。これは身分証になってると言っていたし、さきほど稼いだお金をこの中に入れたらしいのでこれで大丈夫だろう。


「はい、わかり……Sランッ……ふぅ、お預かりしますね。」


 俺の冒険者カードを見て驚いたみたいだが、プロってすごいよね。ギリギリ大声出さずにとどまったし。そんで色々手続きがあって、家を借りることが出来た。


「じゃ、行こうか。」


「うん!」


 父さん、母さん、俺も家を借りるようになったよ。色々頑張らないといけないことが増えてきたな。もっと強くなりてぇな。

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