第17話 大型新人

 あれー? もしかしてなんかまずい感じ? アスタも全属性適正は珍しいって言ってたしMPもアスタが悪魔でかなり多いからちょっと忘れてた……どーしたものかねぇ……


「なんだ! なにか問題でも起きたのか!?」


「支部長! かくかくしかじかで……」


「なんだと! 彼のランクはどうするべきか……」


「Sランクスタートでもよいのでは?」


「そうだな。すいません、魔法使い様。このオーブに触れてください。」


 お、おっと? 話の流れ的になんかスタートから高ランクっぽい? ま、まあ抗議して遅れるよりはそのまま流されていようかな……別に問題はないでしょ。


「……はい、大丈夫ですよ。特に犯罪歴などもございませんのでカードをお作りしますね。名前をお聞きしてもいいですか?」


 名前か、スイじゃバレるか? ちょっと捻ってみる? 翠……翡翠……ジェイド……ジェイドとかいいんじゃなかろうか。めっちゃ安直だがまあ時間稼ぎくらいなら出来ると思う。


「ジェイドです。」


「ジェイド様、ですね。少しお待ちください。」


 俺は十数分ほどその場で待っていると支部長と呼ばれていた人と俺の対応をしてくれた人が戻ってきた。


「これがジェイド様の冒険者カードとなります。身分証の代わりにもなりますのでなくさないようにお願いします。」


 俺は支部長の差し出したカードを受け取る。俺がもらったカードは赤く、光り輝いていた。


「では次は私が冒険者のランクについての説明をさせていただきます。冒険者のランクはF~Sランクまであり、それぞれ冒険者カードに使われている金属が違います。Sランクはヒヒイロカネ、ジェイド様のカードに使われている金属ですね。今ので分かったかもしれませんがジェイド様のランクはSランクです。」


 ふんふん、続きを聞いていてわかったことは、冒険者ランクが高ければ高いほど入れるダンジョンのランクが高くなるらしい。よかったのかもしれない。

 そして冒険者の使命はダンジョンを攻略して魔物がダンジョンから溢れるのを防ぐこと。ダンジョンを攻略するということはボスモンスターを倒すということ。ボスモンスターを倒すとダンジョンに溜まっている魔力が大きく減るんだとか。その魔力が溢れてしまうと地上にも魔物が溢れてきてしまうのだ。


「これで説明は以上となります。このあとはどうされますか?」


「ダンジョンに行こうと思ってます。どこかいいとこありますか?」


「それでしたら……少し先にBランクのダンジョンがありますよ。今ちょうどBランク以上の冒険者が出払っていてしまって……攻略をお願いしてもいいですか?」


「わかりました。そこの場所を教えてください。」


 Bランクのダンジョンとやらへ行くことにした。流石にSランクはクリアできるかわからないがBランクならクリアできるだろう……と信じたい。てなわけで早速出発だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前:ジェイド ランク:S

職業:魔法使い 魔法適正:全属性

所属:冒険者協会本部 貯蓄金額:なし

任務達成率:なし 達成任務数:0


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


♢♢♢♢♢♢


「ここがダンジョンか……」


 俺は言われた場所へやってきた。そこには簡易的に建てられたであろう建物と、その中の整備されたダンジョンへの入り口、資源と買い取り所があった。


「このダンジョンへ来られたのは初めてですか?」


「あ、はい。なんだったらダンジョン自体初めてです。」


 辺りを見渡している俺に対して職員のような人が声をかけてくれる。俺は聞かれた内容に対して答えるが、直後信じられないというような目で俺を見て言った。


「すいませんが、ここはBランクダンジョンですよ? 初心者が来るところではありません。たとえBランクやAランクから始まったとしてももう少し下のランクから始めるのが普通です。Bランクダンジョンからは難易度が跳ね上がるんです。それにあなたソロ、ですよね?ソロでBランクダンジョンに挑むなんてSランクでないと無理です。」


 お、おう……難易度云々の話は知らないが確かにごもっともである。でも最後のやつ、ちょーど俺Sランクなんだよなぁ……


「あ、これ冒険者カードです。」


「いや、だからもう少し下のランクから……ってええ!? Sランク!? でも任務達成率と達成任務数は0だし……ってことは数十年ぶりのSランクスタート!? す、すいませんでした……どうぞ……」


 なんか悪いことした気分だな……俺みたいなやつを心配するのはありがたいことだし、言ってることはその通りだからなぁ……ただ俺だったってだけで。でも気にしても仕方ないんだよな。行って来よう。


「じゃ、行ってきます。頑張ってくださいね。『雷変化トランス・サンダー』」


 俺は自身を雷に変えてダンジョンへ潜り始めた。だから職員さんの顔が赤くなってたことにも気づかなかった。


♢♢♢♢♢♢


「うわあ……これがダンジョンねぇ……結構暗いな。なら! 『ファイア』」


 俺は火魔法で手元に炎を出す。これで明かりを確保、だな。今ここに入ってる人はいないって言ってたよな? じゃあこれ使お。


「出てこい、お前ら。」


 俺が呼び出したのはアンデットたち。これでいい感じになるんじゃなかろうか。……待って、俺なにがお金になるかわかんねぇや! よっし、全部持って帰ってやらぁ!


「お前ら、倒した魔物は全部持っていくぞ。俺が魔法で持てる数も限りがあるから骸骨竜アンデットボーンドラゴン……なげぇな。名前つけようぜ。そうだな……カルだ。そんでカル、倒した魔物の回収、よろしくな。」


 俺は初めて魔物に名前を付けた。骸骨竜アンデットボーンドラゴンのカル、カラカラっていう骨の音から連想された名前だ。え? 骨にどうやって魔物の回収が出来るのかって? あ……まあどうにかするだろ。こいつら意外と頭いいし。


「じゃあ全員、行くぞー!!」


 こうして王都本部の大型新人による魔物大虐殺が始まったのである。これは後世に名を遺した大魔導士ジェイドの初めの一歩であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る