第二幕 冒険者編
第16話 息子と娘
まさか……全部見られたのか!? まずいかもしれない……ど、どうするんだ?? アスタ……
「うーんそうだなぁ……君、孤児?」
「そ、そうですけど……」
「―じゃあさ、ボクたちの子供にならない?」
はぁ!?
「ええっ!? どういうことですか!?」
「ボクたちが君を引き取るんだよ。その代わり、君が今見たことは誰にも言っちゃだめだよ?」
「いや、でも……わ、私、弟がいるんです! 弟も連れて行ってくれますか……?」
「いいよ。一緒においで。じゃあその弟くんのところに行こうか。」
あれ? 俺の意思は関係ないの? 気づいたら子供出来てたんだけど。そんなことあっていいんですかぁ!? あの神官みたいなやつにあの魔法が見つかって利用されるとかになるよりはいいかな……そんなことになったら勝ち目がなくても全力で国を滅ぼしに行く自信がある。……思ってる以上に俺アスタのことが好きなのかもなぁ……
「こ、ここです……」
「やっぱりこういうところがあるよねぇ……人間ってホント変わんないんだから。っと、入らせてもらうよ~」
「だ、誰だ! お前ら! 姉ちゃんをどうするつもりなんだ!」
「ちょ、ちょっとグリム! 止めて!」
「あはは、大丈夫だよ。ボクたちは君たち二人を家族にするために来たんだ。」
俺たちが二人の家に向かうと弟くんが出てきてアスタに怒鳴る。まあ普通の行動だと思う。孤児である自分達のところに知らない二人組がいきなり訪ねてきたら驚きもする。そんでアスタ……それで大丈夫か? 謎に姉の方は信じてくれてるけど魔法とか使ってないよな?
「ほ、ホントなのか?」
「ああ、もちろんさ。ボクは約束を守る女だからねっ♪」
「お、女ぁ!? でもおpp」「死にたいのかい?」
「す、すいませんでした……」
いや、ちょろ! でも子供にそんな相手が悪かどうか判別するなんて難しいし、おいしい話があればついていきたくなるのはわかるが、騙されやすすぎるだろう。この世界にも詐欺師っているんだろうか? そして弟くん……いや、グリムくん。君ぃ……地雷を踏みに行くのは感心しないなぁ……俺も最初は男だと思ってた側だから強くは言えないけどさ。
「ふんす! まあいいけどね! で? 一緒に来るか、ここで暮らし続けるか。どうしたい?」
「わ、私は一緒に行きたいです!」
「お、俺も!一緒に行かせてくれ!」
「はい、じゃあ決まりだね! 今日からボクたちは家族さ。まずは名前を教えてくれるかい?」
「私の名前はシーナです! よろしくお願いします!」
「お、俺の名前はグリムだ! よろしくな!」
どうやら、シーナとグリムは俺たちについてくることに決めたらしい。素晴らしい即断即決、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね!
「ボクの名前はアスタロト。アスタでも、”お母さん”でも好きに呼んで!」
「ッ!……俺の名前はスイだ。よろしくな、二人とも。」
こいつぅ……これが目的か! ”お母さん”って呼ばれたいがためにこの作戦を一瞬で考えて実行に移したのか!? なかなか策士じゃないか……”お母さん”って呼んでって言うとき俺の方みてウインクしてきたし、確信犯だろ。
「「わかったよ……”お父さん”! ”お母さん”!」」
「「ぐはぁ!!」」
二人で揃って俺たちを”お父さん”と”お母さん”と呼んだ。ぐっ……なかなかどうして、威力が高いじゃないか……!
「ど、どうだいスイ……いいものだろう?」
「はぁ、はぁ、そう、だな……」
俺たちはかなりの大ダメージを負った。物理的な痛みではなく、”尊さ”という名の武器によるダメージである。
「どうかしたんですか!? お父さん、お母さん!」
「どっかから攻撃でも受けたのか!? お父さん、お母さん!」
いやもうこいつらわかってやってんじゃないかってくらい攻撃してくるじゃん! なんかもう死んでもいいんじゃないかなってくらい満足であります。
「い、いや、大丈夫だ。じゃあアスタ、二人の面倒見ててくれ。お金、稼いでくる。」
「わ、わかった。早めに帰ってきてくれ。」
俺はすぐに金を稼ぐべくダンジョンへと向かった。ダンジョンがどこにあるかは知らないが、その辺の人にでも聞けばすぐわかるだろう。このままあそこにいたら死んでしまう自信がある。
「すいません、ダンジョンに行きたいんですけど、どこにありますか?」
「ダンジョン? お前……冒険者か? それにしても装備が貧相だが……俺も詳しくは知らないから協会にでも行くといい。」
「ありがとうございます。」
冒険者? 協会? なんだかよくわからない単語が出てきたが、まず協会とやらに行けばいいのだろう? 余裕だな。
「いざ、協会へ! レッツゴー!!」
俺はAGI599を持って走り出す。アスタは完全にINTとMIN、MP特化で、AGIやSTR、VITは低めらしいからな。AGIとかだけを見れば俺の方が高いのだ。
「ここ……か? 冒険者協会!」
俺は大きな建物の前に立つ。近くに人に聞いてみてもここが冒険者協会で間違いないだろう。俺はスタスタと建物の中へ足を進めて行った。
「なにか御用でしょうか?」
「あー、えっと、冒険者登録? ってやつをしたくって。」
「冒険者登録ですね。わかりました。ではこちらへどうぞ。」
中に入っていくと受付の女の人に声を掛けられる。冒険者登録をしたいと伝えると、奥へ案内された。そこにあったのは大きな水晶だった。
「これに触れてください。」
「えっとこれって?」
「魔法の適正と魔力量の測定をする機械となります。」
魔法の適正と魔力量の測定器? よーし、触るだけでいいんだな?
ペタッ
俺が水晶へ触れると水晶が赤、青、緑、黄と光り、さらに水、レモン、深緑、灰、ピンク、赤と黄が混ざった色、紫、白、淡い緑、橙、藍色へと光る。そのあと水晶は黒く染まった。
「は……? え、は? ど、どういうこと? ぜ、全属性適正……それに魔力量もかつての大魔導士アルマ様と同じ色……? ば、怪物よ、支部長を、支部長を呼んで!」
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