第15話 支配者になった男

 は? 【森の支配者フォレスト・ルーラー】?? どういうことだ?


「―ん?」


 この称号を確認した瞬間、死の森から感じられる空気が変わった。そして森の全域を把握できるようになった。これがこの称号の効果なのか……? そういや詳細とか見れたか? 見てみよう。


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称号:【森の支配者フォレスト・ルーラー

効果:死の森の支配者となった証。死の森の全てを支配することが出来る。


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 死の森の支配者、ねぇ……支配することが出来るってどういうことなんだ? わかりやすい指針でもあればよかったんだがな……


ダダダダッ


 奥から足音が聞こえた。魔物か? 今ちょっと取り込み中なんだけどな。仕方ねぇ、戦うか。


「『収束創造』」


 刀を創って敵を待ち構える。……はずだった。なんと、魔物は俺を見た瞬間平伏の姿勢を見せたのだ。森の支配……? まさか! 俺が支配者であると感じているのか? これ、だいぶ有能かもしれない。けどこの森じゃもうレベル上げ出来なくないか? レベルアップ自体は出来るかもしれないが、抵抗してない敵を殺すのはなんか日本人としていけない気がする……


 俺は魔法を解除して創り出した刀を魔素に戻した。ちょっと一旦家に戻ろうか。……と、アンデットたちはどうする? 連れて戻るべきか? なんかどっかに隠れてたりできないのだろうか。【思念伝達】で聞いてみることにした。本人に聞くのが一番だからな。


「ふんふん、なるほどなるほど……え? 【アンデット化】の中に主の影に潜れる空間を創れる技があるって? うわ、クッソ便利じゃん。でもレベルⅢ以上じゃないと使えない? おー、今はレベルⅣか。行けるな。お前たち、戻ってきて俺の影に潜れ。」


 ちょっと待っていると全員戻ってきて次々と俺の影に入っていく。入られたときは不思議な感覚があったが、入られたあとは特になにも感じない。よし、帰りますか。


「『雷変化トランス・サンダー』」


 MPが余ってるからヒョイヒョイと雷の速度で家に帰った。


「ただいまー。」


「ん? うえっ!? いきなり反応が現れたけど!?」


 アスタがめちゃ驚いてる。『雷変化トランス・サンダー』使ったからか? それなら驚いても仕方ない……のか?


「ちょっと……な。時間いいか?」


 俺は今回の出来事についてアスタの……いや、師匠の見解なんかを聞くためにアスタを呼んだ。


「あっ……うん……」


 あれ? なんか顔がおかしいぞ? あっ……待って、俺が言った言葉……あぁそうじゃん、そう受け取られても仕方ないよなぁ……いやまあ違うんだけどさ。


「えーっとな、そのー、俺、この森の支配者になったらしい。」


「へ?」


 そのあとは俺の今日の出来事を話し始めた。こんなことはアスタも聞いたことがないらしく、先ほどの勘違いしていた態度を改め、俺の話を興味を持って聞いていた。そしてすべての話を聞き終わったあと、アスタからの質問攻めにあった。それに正直に答え、俺はアスタに質問をする。


「あのー、レベル上げってどうすればいいですか?」


 レベル上げが出来ない、それは俺にとって死活問題だ。それにここにずっといるわけにはいかないのだ。俺は地球からきた召喚者であり、みんなのことも気にはなっている。そしてあの神官、殺してやりたいという気持ちはないが、許すわけもないのだ。何か一つでも報いたいと思うのは当然だと思う。あんな普通に許せる心の広いやつのほうがおかしいんすよ。


「あー、そうだねぇ~。ダンジョンでも行ってみるかい?」


「ダンジョン?」


「ああ、ダンジョンさ。世界の各地で生まれるというダンジョン、地下迷宮だよ。そこには魔物がいて、宝箱があって、ボスがいて……そんな場所だよ。」


 ダンジョン! まさかこの世界にもダンジョンがあったなんて! 俺も少し読むくらいだからたくさん読む人よりはわからないけど、ダンジョンは知ってる。行ってみてぇ!!

「いってみたいのかい? よし、じゃあ早速引っ越しだな。けど、この場所も捨てる気はないよ。だってスイ、君はこの森の支配者なんだろう?」


「はいッ!」


「よーし、じゃあ始めるとしようか! 『空間転移』!」


 パチッと視界が途絶える。そして次の瞬間、視界が戻った先には豊かな町が広がっていた。


「あ、アスタ……ここは?」


「ここはボクの記憶が正しければ王都クロルフェ。神の国ダインの中心部さ。」


 俺たちが転移した場所は路地裏だった。空間魔法で場所を調べて、目立たないであろう場所に転移したんだとか。俺にも空間魔法の適正はあるからいつか使えるようになるんだろうか。もっともっと練習したい!!


「じゃあ早速物件探しといこうか。お金はボクたちならすぐにでも稼げるだろう?なんてったってボクたちは大悪魔アスタロトとその弟子スイなんだからね!」


「そうっすね。でもアスタ……お金がないと家って買えないし借りれなくない?」


「あ……そうかもしれないね……ごめんネ!」


 そういってアスタは舌を出してウインクをする。かわいい。……ってバカバカ!今はそういうときじゃないぞ。


「じゃあまずはお金を稼ぎに行きましょうか。」


「さんせー。」


「お兄ちゃんお姉ちゃん……誰?」


 ふぁ!?

 後ろから聞こえた声は少女のものだった。もしかして……全部見られた?。

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