第14話 森の支配者

「『アンデット化』」


 俺は撃破した緑竜グリーンドラゴンに対して【アンデット化】を使用する。すると、緑竜の死体が溶けてなくなり、骨だけとなって動き始める。骨だけだからカランコロンと音が鳴るが、それ以上に威圧感を感じてしまう。


「名づけるなら骸骨竜アンデットボーンドラゴンってところか。」


 骸骨竜。そう呼称した骨の竜は俺の命に応え動き出す。この森の魔物を倒すために動き出したのである。


「お前もやりたいか。俺ももっとやりたくなってきたぜ。行くぞぉー!!」


 『風流操作エア・コントロール』という魔法を使用する。これは風の流れを操作することで高速移動を可能にする魔法だ。全体の風の流れではなく近距離だけなので風を操作するという効果から感じられるほどMP消費量は多くない。『風の靴』と合わせるとさらに相乗効果を発揮する。


「いぃっやふぅー!!」


 ちょっとテンションが上がって大声で叫んだ。気持ちいいね、これ!

 大声で叫んで少しすると、ドシンドシンと地が響く音がする。そしてその巨大な音を発しているものがどんどんこちらに近づいてきているのだった。


「おいおい、マジかよ……緑竜より強そうじゃないか?」


 ドシン、ドシンという音がどんどん大きくなり、その魔物は姿を現した。


「ライオン……いやでも尻尾は蛇だぞ……? 胴体もよく見たらライオンのものじゃないし……これってまさか……」


 地球にいたころ少しだけ見たことがある。神話とか、空想上の生物とか。中学生のときとかはそういうのにハマってた時期もあったからな……くっ、予想外のところで心にダメージがッ! ……はぁ、はぁ、はぁ。よ、よし。話を戻して。

 これはギリシャ神話に出てくるっていう『キマイラ』だ。獅子の頭と山羊の胴体、蛇の尾を持つ怪物。それがキマイラだ。こいつはそれと酷似している。


「神話の怪物、いいじゃん。戦おうぜ! 『凍華』! 『ロックスピア』!」


 たくさんの魔法を生成して先制攻撃をしかけた。『凍華』は氷の華を咲かせる魔法。咲いた華は爆発して氷を残す。爆発に当たったやつは当たった部位が凍結してしまうのだ。そして岩の槍を飛ばして物理的なダメージを与える。


「イメージだ、イメージを固めろ。剣じゃなく刀。今までよりも鋭く、強い刀を創れ。『サンダークリエイト』」


 イメージを口に出したように刀を創り出す。今までは剣は雷であった。魔法であった。どういうことかというと、普通の色ではなく雷の色で形が常に変わり続けていた。しかし今回は今までよりも一層イメージを固めた。すると、雷は完全に収束してバチ、バチと雷を纏った一本の刀へと変わったのだ。


「これは『サンダークリエイト』なんかじゃ収まらない、『収束創造』ってところか。」


 魔法を固めて物質を創造する、それが今回新しく手に入れた技術。これのおかげで俺の戦いはさらにもう一ステージ上に上がったのである。


「『雷変化トランス・サンダー』『付与・炎フレイムエンチャント』こっからが俺たちの戦いだ。始めようぜぇ!!」


 自身の体を雷に変えて移動速度を確保する。火を刀に纏わせることでこの刀は雷と炎の両方を纏っていることになった。


バッ!


 一瞬で裏を取って胴体を狙った。首を狙った攻撃は実力者には避けられるかもしれないという数は少ないけれど強者と戦ってきた俺の考えだ。しかしそれは余裕でかわされる。なぜって?それは尾の蛇についている目が俺を捉えているからだ。この全方位の監視をどうにか攻略しなきゃ勝ち目はないのかもしれない。


「『大津波ダイダル・ウェイブ』!」


 水を生み出してキマイラに向かわせる。水が効かなくても足を取られることは確かだ。そこを狙って足から削る!


「オラァ!!」


 水に足を取られたと判断した瞬間に胴体の上に移動する。そして蛇が俺を捉えたであろう瞬間、俺はキマイラの腹部へと移動した。これが俺の対キマイラ作戦、蛇を騙そう、だ。蛇だって死角ってのはあるだろうし、認識していたやつがすぐいなくなったら俺を追うのに時間がかかることだろう。その時間を有意義に使って足を壊す!


スパッ!!


 思ったよりも手ごたえを感じることなく、キレイに四つのうち一つの足を斬った。切り口は燃え、電撃が走っている。


「フッ!」


 移動して斬る、移動して斬る、移動して斬る、移動して斬る。斬るときに切っ先から電撃と炎を出して攻撃もする。もうすでにキマイラの体はボロボロだった。


「グオオオ!!!」


 キマイラが咆哮した。それと同時に口から炎を繰り出してくる。息吹ブレスか? その攻撃を避けるとキマイラから蛇が出てきて俺を睨む。はっ!まずい!


「『ロックウォール』!」


 すぐに壁を立てた。蛇の視界を遮るためだ。俺の予測だとあいつの攻撃で体が痺れたりなど状態異常にかかる可能性がある。神聖魔法が使えるなら回復できたかもしれないが使えない俺にあれを食らう選択肢はない。


「もう決めないとまずいな。この一振りに全てを込めて―『スラッシュ』」


 【剣術】スキルの中に含まれるアーツ、スラッシュ。一振りを加速させるだけのスキル。だが威力が十分な俺にとって、速度を高めるこのスキルとはとても相性が良かった。


「ぐぎゃぁおおおお!!」


 バタッとキマイラが倒れた。すると頭にアナウンスが流れる。


『レベルが上がりました。ステータスが上昇しました。』

『今までの行動を参照……スキルを獲得します。スキル【抜刀術Ⅰ】を取得。』

『特殊効果:渇望する肉体パワー・グリードを発動します。』

『キマイラのステータス・スキルを一部取得……成功しました。』

『スキル【視界共有Ⅰ】【合成生物キメラⅠ】を獲得しました。』

『レベルが上がりました。ステータスが上昇しました。』

『今までの行動を参照……スキルを獲得します。スキル【極限集中ゾーンⅠ】を取得。』


 ん? レベルアップが二回来てるな……多分配下の誰かだろう。ステータス開いてみるか。


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名前:夜桜 翠 レベル:64

スキル:【肉体回復Ⅳ】【対物強化Ⅱ】【魔力感知Ⅷ】【魔力操作Ⅹ】【魔力回復Ⅵ】【剣術Ⅴ】【竜鱗ドラゴニックスケイルⅡ】【竜息吹ドラゴニックブレスⅠ】【威嚇Ⅰ】【アンデット化Ⅳ】【並列思考Ⅱ】【闇魔法Ⅰ】【配下統率Ⅲ】【思念伝達Ⅱ】【二刀流Ⅰ】【飛行Ⅰ】【抜刀術Ⅰ】【視界共有Ⅰ】【合成生物キメラⅠ】【極限集中ゾーンⅠ】

HP:1872/2230 MP:520/4270

STR:612 VIT:598 AGI:599

INT:989 MIN:629 DEX:412

称号:【異世界からの来訪者】【森の支配者フォレスト・ルーラー


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 は?【森の支配者フォレスト・ルーラー】??

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