第10話 魔法講座

 第三回、魔法講座が始まった。今回の講座内容は植物魔法、金属魔法、念力魔法、爆破魔法、付与魔法、神聖魔法についてである。


「まずは植物魔法からだー。いえーいパチパチー。」


「ワー。ドンドンパフパフー。」


 雑な合いの手を入れながら始まった魔法講座。植物魔法から習うらしい。


 魔法とはイメージであるといつも言っているが、イメージをすることで魔法を使用しやすくなる。だからまずは植物魔法について知り、イメージを膨らませることから始まる。


「植物魔法っていうのは植物を生み出すことも出来るけど、本質はその場にある植物自体を操作することなんだよ。だから植物魔法は植物についての理解を深めるところから始まるんだ。」


 てことらしく、今どうにかなるものではないらしい。時間をかけて学んでいきましょうってことらしい。……まてよ?ということは金属魔法も……


「残念だね。金属魔法も金属を操ることが本質だから今すぐどうこうできるわけじゃないよ。」


 なん……だと……?くそう、なんてこったい。いや、俺の今までの知識を使えば意外とどうにかなるのではないか?MPは結構あるから金属を生み出すことも出来たり……植物は金属に比べれば知識が少ないけど、それでも一般程度にはあるはずである。


「師匠、植物とか金属を生み出す魔法を教えてくれ。ちょっとやってみたいんだ。」


「まぁいいけど……そっか。異世界の植物とか金属とかの知識あるんだっけ。いいよ、やってみよっか。」


 異世界からの召喚者であることを教えているから楽にことが進んでいる。ちょっとやってみるか……


 なにを生み出してみようか……植物っつってもいいのが思いつかないな。でもまあ植物ってよりは野菜のが思いつきやすいかもな……野菜、野菜、野菜……そうだ!


「《我が体に宿る魔力よ、我が知識に根付く植物を生み出せ!》『植物創造プラントクリエイト』」


 俺の魔力が集まり、想像した野菜が形成され始める。赤く、丸い野菜の代表格と言っても過言ではない存在……トマトである。


「なにこれ?」


「トマトっていうんだよ。食べられるよ。食べてみる?」


「わかった。パクっと、もぐもぐもぐ……美味しいじゃん!すっご!」


 俺の創り出したトマトは結構おいしかったらしい。たぶんだが、想像したものと同じものが創り出されているから日本で品種改良された美味しいやつが出てきたんだろう。


「じゃあ次は金属でもやってみよう。《我が体に宿る魔力よ、我が知識に根付く金属を生み出せ!》『金属創造メタルクリエイト』」


 俺が想像したのはありきたりだが鉄である。ファンタジー小説とかに出てくるオリハルコンとかミスリルとか、ヒヒイロカネとかではなく鉄だ。まだ想像の域を出ないが、明確に想像できることからじゃないとなんか危ない気がするからな。


「これ……鉄?けどかなり純度が高いような……」


「純鉄って言って純度がものすごく高い鉄なんだって。」


「これ、ちょっと知り合いに頼んで武器でも作って貰おうかな。スイにあげるプレゼントにしよう。」


 ま、まじか……師匠の知り合いって結構いるのか?ここにずーっといるけど。とりあえず次行こ、次!


「えー、次ぃ?はーいはい。じゃあ次からは特殊属性に入っていくよー。まずは念力魔法から。一先ず体験してもらおっか。『念力サイコキネシス』」


 ふわっと俺の体が宙へ浮かぶ。これが念力魔法なのか……すげぇな。一度は使ってみたいと思ったことがある能力だ。


「この力は願いの力、念

いのり

を実現する力だ。まあなんでもできるってわけじゃないんだけどね。簡単に言うと見えない力を操る力……かな。今のも見えない手を操って浮かせてるだけだし。」


 師匠は一通りの説明を終えると降ろしてくれた。でもなるほど、見えない力を操る力、か。なんか難しそうだな。


「念力魔法と爆破魔法は一つの魔法しか使えない特殊な魔法だ。けど、その分突き詰めれば色んなことが出来るようになる。これも練習あるのみだね。まあとりあえず使ってみようか。あの石を浮かべてみよう。」


「はい!」


 指導を受けながらイメージを固めていく。見えない手を操って俺を浮かせた、ということは俺が石を浮かせるのも見えない手を使うってことか?想像しろ、俺が石を浮かべる姿を……


「《我が体に宿る魔力よ、願いに応え意のままに操れ!》『念力サイコキネシス』!」


 俺だけに見える魔力の手が出てくる。それをずずずーっと動かして石をそっと掴んだ。そして持ち上げてみる。


「お、成功だね。やっぱりスイは魔法が得意なんだね。いや、イメージがしっかりしてるのかな?」


 どうやら無事成功したみたいだ。魔法はイメージだと教わったが、本当にその通りだと思う。思ったように動かすっていうのが一番の難所だと思うから。


「次は爆破魔法。これはその名の通り爆発を起こす魔法だよ。これもさっき言った通り一つの魔法しか使えず、突き詰めてバリエーションを増やしていくんだ。見てて、『爆破ボム』!」


 師匠が手をかざした数メートル先で突然爆破が起きる。これが爆破魔法か。


「あとは爆破の規模とか種類とかを変えてくんだ。今まで一番イメージの力が大事になってくるかもしれないね。」


「やってみます!」


 イメージ、イメージ……イメージするのはグレネードか?ゲームは多少する程度だったが、それに出てくるグレネードをイメージするのが一番わかりやすそうか。


「《我が体に宿る魔力よ、万物を砕きすべてを破壊せよ!》『爆破グレネード』!」


「あら?」


 イメージ通り詠唱したらボムではなくグレネードとなってしまった。グレネードとその名の通りに師匠はすぐ起爆していたが少し時間をあけて師匠よりも大きな規模の爆破を見せた。


「スイ、イメージって大事だろ?」


「……そっすね。」


 今日のことは魔法を使う上での教訓となったのであった。

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