第8話 進歩

「だったらなんで倒れたんですか?」


 俺は疑問に思ったことをそのまま聞いてみた。すると、師匠は頬を赤く染め、少し時間を空けてから答えた。


「…………ボクが、君のことが好きだからだよ!」


「……え?」


 今、師匠なんて言った?俺のことが好きって……え?好きってなんだ?ライク?ラブ?え、というか師匠って男じゃないの?え?



「……まって、君ボクのこと男だと思ってたの?」


「まさか……違うんですか?」


「はぁー……まさかボクが男だって思われてたなんて……そんなに女の子っぽくないかなぁ、ボク。」


「はい……すいません……」


 師匠が女の子だったなんて……でも確かに思い返してみれば女の子のような行動もあったかも……?うむむ……これは俺が悪い。で、だ。それを加味して考えてみよう。え?師匠は……いや、アスタは俺のことが好きだって言ったのか?なぜだ?なぜ……いや、これは俺が言うことじゃないのかもしれない。アスタは俺を見て俺を好きになったと言ったのだから。でも、確認しておくことがある。


「師匠じゃなくてアスタって呼ばせてもらうけど、その『好き』ってのはライクの方?ラブの方?」


「ッ!……そんなこと言わせるんだ……恥ずかしいんだけど……ら、ら、ラブの方……です……。」


「そ、そそうか。ああありがとう……」


 そう、なのか。ラブの方、か。正直、めっちゃうれしい。多分だけど、俺もアスタが好きなんだと思う。この前部屋まで運んだ時にドキドキしたし、今も心臓の鼓動がどんどん早くなってきてるのを感じる。俺は今まで誰かを好きになるっていうことがなかったけど、周りから聞いたことはあったからどういうものかは知っている。好きだって気持ちを認識した途端に色んな感情が湧きだしてくる。その中にはアスタにき、キスがしたいって気持ちもある。俺もその気持ちを確認したから勇気をもって口を開いた。


「アスタ……俺も、アスタが好きだ。だから、俺と付き合ってくれ!!」


 俺の一世一代の告白。今までしてるやつを見てきたことはあったが、みんなこんな気持ちだったのか……いや、相手からの気持ちがわからない分、俺以上に緊張していたんだろう。


「はい!喜んで!」


 アスタはうれしそうに俺の告白を了承した。俺たちはこれで晴れて恋人になった……のか?なんだか不思議な気分だ。嬉しい気持ちと気恥ずかしさが混ざったような複雑な気持ち。けど同時にこれからがとても楽しみになる。


「ね、スイ。今日は……一緒に寝よ?」


「えッ!?」


 どうやら、今日は簡単には眠れなさそうです。


♢♢♢♢♢♢


「ふわぁ~あ。おはよ、アスタ。」


 目が覚めた俺は隣でぐっすりと眠っていたアスタの頭を撫でた。すぐに服を着てアスタを起こさないようにベッドから出て朝食づくりを始めた。大体全部作り終わったころ、いつもなら自分で出てくるのだが、昨日の件があったからか起きてこなかったので俺はアスタを起こしに行った。


「朝だぞー、アスタ、起きて。」


「んー?やだー、まだ寝るー。」


「起きてこないと朝ご飯ないぞー。」


「ん~でもまだ寒いし~。あ、そうだ!ねぇスイ、シよ?」


 なっ!アスタ、朝から誘ってきやがるのか!?


「ちょっとだけだからぁ~ねぇ~?いいでしょ?」


 うぐぐぐ……誘惑に負けて俺はベッドの中へと入っていった。終わって戻った時にはもう朝食が冷めきっていたことは言うまでもないだろう。


「じゃあ今日は魔法の訓練だね。訓練中は師匠って呼ぶように!わかった?スイ君!」


「はーい、師匠。じゃ何をするんですか?」


「うーんとね、使えるようになったっていう希少属性の確認と、特殊属性をちょっと試してみようかな。あ、いつもの基礎練は忘れずにね!まずは氷魔法から見せてみてよ。」


 俺は師匠の言った通り次々と魔法を発動していった。その度に甘い場所や出来ていない場所を指摘され、直してからもう一回撃つ。昨日と比べたら確実に魔法の発動スピードや威力が上がり、消費魔力が少なくなっているのがわかる。最後には最上位魔法を見せて欲しいと言われ、撃った。見たことのない魔法のようで、取り入れてみたいから教えてと言われ教えると、すぐに俺よりもレベルの高い魔法を撃って見せた。これが素の実力なのか……と感動しているとこう言われる。


「こんなのは基礎練の積み重ねだよ。そもそもボクにこんな魔法を思いつく頭なんてないわけだしね。」


 なるほどな、俺と師匠じゃ基礎ステータスが違うってわけだ。ステータスが違えば魔法の種類は同じでも威力なんかは異なってくる。あとは魔力に親しんでいるかってやつだな。俺も基礎練習だけは欠かさないようにしよう。


「じゃあここからは君がまだ使えない魔法のお話だ。植物魔法に金属魔法、念力魔法、爆破魔法、付与魔法と神聖魔法だね。一つづつ実演しながら教えていく……って言いたいんだけど、神聖魔法だけはボクにも使えないんだ。ボクは悪魔だからね。けど教えるだけなら出来るから、頑張って!」


 まあ妥当だろう。悪魔が神聖魔法を使っている方がなんかイメージ違いである。教えてもらえるのは教えてもらえるらしいから頑張ろう!

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