第7話 訪問

♢♢♢♢♢♢


「止まれ!」


 門番は突然現れてこちらへ向かってきている人影が見えたので静止するように呼び掛けた。


「なにかな?」


「ここが誰のお屋敷かわかっているのか?」


「わかってるよ。だからここまで来たんじゃないか。じゃ、通らせてもらうよ~」


「おい!待t」


「うるさいよ、君。」


 門番は許可も取らず侵入しようとする輩を強引に止めようとしたが、いきなり侵入者から発せられた殺気によってガクガクと震えてしまう。


「下がってろ。」


「あ、やーっと出てきたぁ。久しぶりだね、ベルゼブブ!」


「はぁ、うぜぇな。アスタロト。」


 この屋敷は最高位の悪魔ベルゼブブの屋敷であり、そこを訪れたのは翠の師匠であるアスタロトであった。


「で?悪魔なんて全く興味のなかったお前が一体全体なんの用だ?」


「いやー、ボクにこの度弟子というものが出来ましてですね?その子の持ってた能力が君のものに酷似してるんだ。だからちょっと話を聞きに……ね?」


 アスタはここに来た目的を正直に告げた。


「はぁー、お前そんなことでここまで来たのかよ。なんだ、惚れてんのか?」


「は、はぁ!?そそんなわわけないだろ!?」


 いきなり変なことを言われたからか、アスタは驚き、体が熱くなってくる。顔もすでに真っ赤だ。


「はははは!!!そうかそうか!いやー面白いもん見れたから教えてやるよ。聞いてみな。」


「えーゴホンゴホン!じゃあ色々聞いちゃうよ!」


♢♢♢♢♢♢


「ただいまー。」


「あ、おかえりなさい。師匠。」


「ッ!……あ、ああ。今日は何をしてたんだい?」


「うーん、話したいのは山々なんですけど、とりあえずご飯にしませんか?」


「あ、ああ!そうだね。」


 師匠が帰ってきた。ちょうど晩御飯のタイミングだったので晩御飯にしようと誘う。……なにやら師匠の様子がおかしい。なにかあったのだろうか?でも俺が聞いていいことなのかはわからないし……とりあえずは見守るってか不干渉でいいか……?


「どうぞ、今日の晩御飯です。召し上がれ。」


「おおー!すっごい!スイ、料理出来たんだ!」


「いやー、まあ……ちょっとくらいなら?」  


 師匠が俺の料理を見て褒めてくれる。なんかうれしいのと恥ずかしいのが混ざった感じの感情だな……まあ悪い感じはない。


「じゃあ食べましょっか!いただきます。」


「いただきます。」


 俺たちはご飯を食べ始めた。最初の方は結構ご飯に集中してたけど、途中からは話が中心になった。


「じゃあ、さっきの続きって言うのかはわからないけど、今日どうだったか聞いてもいい?」


「はい!えーっと今日はですね、始めて最上位魔法を使えるようになりまして、色んな属性の魔法を試してました。」


「へぇ!すごいじゃないか!なら他の属性も色々やってみ始めてもいいかもね。」


 俺たちはそれから色んな話をして俺は洗い物を始めた。最近はMPもかなり増えてきて、日常にも魔法を使うようになってきた。これは元々教えられてたことで、魔法に親しむことが魔法の上達にもつながるからMPが増えてきたならどんどん使っていくべきなんだと。水魔法と風魔法を使ってすぐに洗って乾かすことが出来る。とっても便利だ。


「終わりましたよ。師匠。」


「お疲れ。」


 俺は師匠の隣に腰を掛けた。ん?なにやら師匠の顔が赤いような……熱か?


「師匠?顔が赤いみたいですけど……大丈夫ですか?」


「へ?あ、ああ!いやいや、全然、大丈夫……だよ。」


 なんか怪しい。ほんとに大丈夫なんだろうか?


「すいません、ちょっと見せてくださいね。」


 今ここに体温計なんて持ってるわけがないので俺は自分のおでこを師匠のおでこに当てた。


「うーん、特に熱はなさそうですね。一応氷出しましょうか?」


「ぷしゅー……」


 パタッっと師匠が倒れて俺の足に顔を乗せた。あっ……綺麗な顔だ……じゃなくて!とりあえず部屋にでも連れていって寝かせないと!けどそのまま動かさないと起こしちゃうよな……魔法か?でも念力魔法はまだ使ったことないし……風魔法しかないのかな。


「即興で魔法を創ってやる。『風の揺り籠』」


 風魔法で師匠を浮かせ、一応落ちても大丈夫なように手を添えておく。……なぜだろう、心がドキドキするような……いや、今は師匠を安全に運ぶことだけ考えよう。


「ここ……だな。よし、降ろすぞ。そーっと、そーっと、そーっと……出来た!あっやば……」


 無事にゆっくり降ろすことが出来て嬉しくなり、声が漏れてしまった。起きてないよな?早く戻ろう。なぜだかここにいると心が落ち着かないんだ。


♢♢♢♢♢♢


「おはよう、スイ。」


「おはようございます、師匠。」


 俺たちはいつも通りの挨拶を交わす。特に何の変哲もない、とは言わないかもしれないが、いつもと似たような一日が始まるはずだった。けれど、ここから色々変わっていったのだった。


「あ……昨日はありがとう……スイ。」


「いえ……大丈夫でしたか?」


「別に熱だったってわけじゃないんだよ。ボクら悪魔は風邪なんて引かないしね。熱も出ないんだ。」


 そうなのか。それはよかった。でも、じゃあなんで昨日は顔が赤くなったり倒れたりしたんだ?

 俺はその疑問をそのままぶつけてみた。それで返ってきた返事は……

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