第6話 進化
「どうだった?今日の成果は。」
帰ってきた俺に師匠は話しかけてくる。俺は今日起こったことと、俺が召喚されたこと、そして追放されてここにたどり着いたことを話した。
「なるほどね。それで、その突然発動した特殊効果ってやつの詳細がわからないかボクに尋ねに来たってわけか。」
「そうです。」
師匠は数秒間「うむむ……」と唸って、口を開いた。
「ボクの記憶上、人間にそんな効果があるなんて聞いたことがない。」
「そうですか……」
「でもね、一人だけ、似たような能力を持つやつがいるんだ。」
「えっ!?でも今聞いたことがないって……」
「うん、人間には、ね。そいつはボクと同じ悪魔だよ。」
師匠曰く、悪魔の中でも最高位の悪魔。人々からは蠅の王として知られ、すべてを喰らい尽くした災厄。
その名も――ベルゼブブ。俺たちの世界でも暴食の名を冠する悪魔として広く知られている悪魔だ。俺の力は悪魔の力なのか……?
「まあ今までなかったってだけで能力としてある以上、人間にもいつか使うやつが出てくるかもしれないし、異世界からの召喚者って不思議な力を持つって聞くしね?」
わかりやすく顔に出ていたのか、師匠からフォローが入る。そうか……今こんなこと考えても仕方ないよな。俺と同じ能力を持つってことでいつか会いに行ってみたいな。
「じゃ、今日の訓練しよっか!」
「はい!」
♢♢♢♢♢♢
アスタSide~
夜が更け、アスタは居間にて魔力操作の訓練をしていた。魔力操作を鍛えることは魔法を撃つときの消費魔力の軽減に魔法を発動するスピード、魔法自体の精密操作に直結する。これだけは怠ってはいけないのだ。
「ふぅー、よしっ。日課は終わりか。『ウォーター』」
アスタはコップを取り出して魔法で飲み水を作る。そして椅子へと座った。
「スイのあの力、そして召喚者だという事実、確かめなきゃいけないことが出来たなぁ……」
アスタも水を一気に飲み干すと床についた。そしてどんどん夜は更けていくのであった。
♢♢♢♢♢♢
「おはようございます、師匠。」
「ん?ああ、おはよう。スイ。ボクは今日ちょっと出かけてくるよ。」
「え?あ、はい。わかりました。気を付けてくださいね。」
「当たり前さ!じゃ、行ってくるよ!」
そう言い残すと師匠はすぐに飛び出していった。扉を出たところですぐに魔力の反応は消えた。以前、師匠も全属性適正だと言っていたはずだから、空間魔法で転移したのだろう。今日は希少属性なんかの色んな属性の魔法の練習と魔力操作とかの基礎練でもしてようかな。
「魔法はイメージ……魔法はイメージ……」
魔法の発動はイメージだと師匠が言っていた。詠唱破棄は強くイメージしたその先にあるのだという。今までは師匠の魔法を模倣するだけだったが、イメージで魔法を構築できるようになれば自分で魔法を創り出せるのだ。
「《我が体に宿る魔力よ、すべてを凍てつかせる冷気となれ!》『
周囲の木々が全て凍ってしまう。なんだか辺りの気温もグッと下がったみたいだ。この威力……この規模……最上位魔法か!俺も最上位魔法を使えるようになったのか!ステータスの力ってやつかな。いやー、まさか漫画とかで見たことある技を使ってみようとしたらそれが最上位魔法だとは……いやはや、日本の文化も侮れないな。
「よーしっ、他の魔法でもやってみるぞ!!」
俺はこの森で師匠がいないときの使用を禁じられている火魔法を除いた基礎三属性から最上位魔法の発動を始めた。
やってみると案外簡単に出来てしまった。まだ一つずつしか完成していないが、水魔法は『
「次は希少属性!いってみよー!」
氷魔法は出来たので他の魔法を試してみる。まずは雷魔法からいってみよう!
イメージするんだ……雷ってものを、俺がどうしたいのかを。雷ってのは最速。つまりは敵を置き去りにするほどの圧倒的なスピードが武器になる。あと雷の武器って言ったら……電気による痺れ……感電とかかな。けど感電させるなら威力は弱めにしなきゃ意味がないというか……一旦外すか。ならスピードを前面に押し出した魔法がいいだろうな。ここをこうして……こうやって……こう!
「《我が体に宿る魔力よ、雷撃となって迸りその雷を持って敵を貫け!》『紫電一閃』!」
バチバチバチっと紫の雷が一瞬で遠くまで走る。この技が走った場所にはまだ雷が残っている。持続時間もちょっと長めっぽいな……強い(確信)。雷系統の魔法はもっと使えるようになってってもいいかもしれないな。
ちなみに、他の金属魔法と植物魔法はまだ発動できなかった。出来なかったってよりもイメージが固まらなかった?ってのが正しいかもしれない。雷と氷が発動できたのは地球でも漫画やら小説やらでイメージがあったからだろう。
「うーん、この辺は師匠に聞いてみるしかないか。」
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