第6話 知り合う前の人

 「おぉーうぃっ!!いつ見にくんだよぉーっ!ゆきちゃん、うちで待ってるゾゥゥー!!」


 「おうわっ。和。おはよっ。そういえばそうだった」


 「お前、、、まさか、、、乗り換えたのか!!!」


 「なにがよっ!?」


 「お前がゆきちゃんを忘れるわけないだろっ!!!飽きたのか!?違う子を見つけたのか!?!?なんなんだ!?見つけたんなら教えろっ!?」


 「お前も簡単に乗り換えんじゃねぇーかっ!てか飽きても乗り換えてもないよっ!!」


 「じゃー今週うち来こいよ!一緒に見ようぜ〜?」


 「あぁん、わぁーったよ、こんし‥あ。え、今週はちょっと」


 「やっぱり!!!お前だけは裏切らんと思ってたのに‥俺は悲しいぜ‥」


 「いやいやっ!違うって!そうじゃなくて、用があっていけないんだよ」


 「用ってなんだよ!俺という奴があるのにっ!!」


 「変な言い方するな!あー。えー、買い物。うん。買い物があって。」


 「そんなん、終わってからくりゃーいいじゃん」


 「1日かかるんだよ」


 「ほんとかー?まぁ、しゃーないな。来週は?

 「あ、来週ならいいよ。来週にしよう!絶対行く!」


 「言ったな!?よし!」


 和はいつでも明るいし、楽しい話をしてくれる。僕は何もできてないのに。とりあえず今週を乗り切れば気持ちも落ち着くかな。そしたらまたアニメもゲームでもいっぱい楽しもうっと!


 木の間から漏れてくる日差しがあったかくなってきた午前中の授業。頭も心もボーッする。ただただ時間が過ぎていった。


 昼休み。本田が教室の前に来る時間だ。はぁ、ど、どうしよ。どうしようっ。このどうしようは不安って意味のどうしようであって。可愛くて勉強もできて人気者の舞香ちゃんが、こんな奴と話してて楽しいのかなって。いや、吉田も本田もいるからなんとかなるかもしれないけど、僕が話している姿が全く想像できない。


 何もしてないから嫌われようもないんだけど、変なイメージ持たれるくらいなら最初から知られない方がいい。恥ずかしいとついウケを狙いにいっちゃう。こういうときに限って対してウケない。いや、いつもウケてないけど。あー、学校で最初に見たのは下駄箱だったっけ。いい匂いがしたなぁ。なんだか優しくて可愛い女の子って感じ。舞香ちゃんの部屋もあんな匂いがするのかなぁ〜。って部屋だけじゃなくて家の中全部かもしれないな。舞香ちゃんのお母さんってどんな人なんだろ。あんなに可愛い舞香ちゃんのお母さんだから、そりゃもう可愛いし美人だしなんだろうなぁ。‥って、やばっ。さすがにキモすぎるだろ。どこまで考えてるんだよ。本人ともまともに話せてないのに家とか親のことって。


 ‥っじゃなくて!!!行かなきゃ!!


 いつも通りの学校とは今日は違う。廊下はただの廊下じゃなく“初めて話す場所”になるからだ。移動のためだけに使う場所じゃない。ボーッと校庭を眺めるためだけの場所じゃない。いじめを思い出しながらトボトボ歩く場所じゃない。教室を出ると本田、吉田、そして‥舞香ちゃん。


 ‥え!?僕が1番最後っ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る