第3話 知りたい人を知ってる人

 お昼休み。午前中の授業はほとんど頭に入らなかった。どーせお前には男友達しかいないんだろうって思ったあなた。残念でした。一応、女の子の友達もいます。


 近所の女の子で、小学生から知っている吉田香(よしだかおり)。吉田はガサツな性格。カードゲームを一緒にしたり、缶蹴りをしたり、男友達のような奴だ。でも中学生になってからは、みんなの目を気にしているのかあんまり話さなくなった。廊下ですれ違うとたまーに脇腹を突っついてきたり、ちょっかいを出し合う。



 「かんばぁ!いぇいっ!」


 突っつきにしては強いんだよ!ちょっかいじゃなく、そこまでくると攻撃だぞ。


 「食い込むな。太った?」


 「うるせっ!あ、てかさ‥」


 あ、どうしよう。何にも情報がないから聞きようもないし、第一こいつに知られたら絶対茶化されるに違いない。んー‥。


 「なにっ?好きな人でもできた?」


 「ふぅげぇっ!?」


 「どっから出た、その声」


 「ち、ちげーわっ」


 「いやいや、わかりやすすぎでしょ」


 「ぉうふ‥いや、まぁ好きってわけじゃないんだけど、なんていうか、名前知らなくて」


 「一目惚れ?」


 「あー、いや、まぁー‥そうなる‥のかな。」


 「へぇー。じゃっ」


 「え!?そこまで聞いて!?」


 「ウソウソ(笑)その子のことが知りたいって??」


 「うーん」


 「誰?」


 「あー、、、知らなくて‥」


 「名前知らないの?それじゃわかんないよー。見た目がこんな感じでーとかさぁ。てか、名前も知らない子のこと好きになるかね」


 「いいだろ別に!てかまだ好きじゃないし!んー、あー。髪は肩くらいまでで、背は僕より少し小さくて‥」


 「?」


 吉田の後ろから、僕の方に歩いてくる彼女。目の焦点が“その人”に合い、景色がだんだんぼやけていく。横を通り過ぎ、視界から消える。


 「‥え、待って待って。もしかして」


 「‥そ、そう」


 「無理無理無理無理無理無理」

 

 半笑いで諦めとも呆れとも取れるように鼻で笑いながら言った。


 「いやいやいやいやいや、わからんじゃん」


 「無理無理無理無理っ!ぜっっっつたいむりっ!!!」


 「いやだって」


 「お前みたいな低スペじゃ無理だし、舞香ちゃん、顔面偏差値高すぎだからねっ!!!??」


 「舞香さん‥」


 「っっっちゃくちゃ可愛いし、頭いいし、絵上手いし、やばすぎだから。ほんっとむ‥」


 「友達なのっ!?!?」


 「うん!話してくれるとは思うけど、付き合うとかは無理じゃないかなー」


 「お願いっ!!!なんとか話すだけでもっ!!!」


 「うぇーーー。それは‥あっ、じゃあさ。神庭、本田くんと仲良いよね?」


 「本田?うん。ちょこちょこ話すけど」


 「じゃあさ、本田くんと仲良くさせてよ」


 「えっ!?本田好きなっ‥いでっ!!!」


 「バカかっ!!!声でけーよっ!!」


 「あぁ、ごめんごめんっ。え?まじで?」


 「こーかん条件。そうすれば、にーにーで話せるし変じゃないでしょ」


 「あ、まー、そうだけど。え、そしたらどうすりゃいい?」


 「うーん‥遊び行かない?って。」


 「はっ!?いきなり!?まだ知らないのに!?」


 「もーめんどいじゃん。てか、その方がインパクトもあるし?じゃ、よろっ」


 「えっ!?ちょ、えっ!?うそ」


 マラソン選手もびっくりするくらいの速さで、吉田は去っていった。何か犯罪を犯しても逃げ切れるだろう。


 「吉田と遊びいくんだけど、女の子2人いるから、もう1人男いた方がいいねってなって、よかったらって‥いやいや。いきなりすぎか。あーでも他に思いつかないからなー。もっとさ、LINE聞いたりとか、少しずつ話すとかさぁ‥」


 あああぁぁぁぁ!!!


 どうしたらいいんだろう。

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