8回裏 夢舞台
Bottom of 8th inning ―夢舞台―
3年生の卒業式から約2週間が経過し、世の中は春の陽気に慣れはじめ、街を行き交う人々の装いもいくらか薄着へと変化していった。
「抽選会お疲れ様。まさか、選手宣誓まで引き当てるとはね」
「本当だよ。こんなことなら、宝くじでも買っとけばよかった」
珠音の茶化しに、二神が大きく溜め息をついてベンチに腰掛ける。
選抜高等学校野球大会の対戦カードを決める抽選会が大阪市内で前日に執り行われ、珠音たち鎌倉大学附属高校硬式野球部はCブロック第1ゾーンを引き当てた。
「となると、大会3日目の第3試合か」
「吹奏楽部としては助かるかな」
浩平がトーナメント表を確認していると、吹奏楽部部長を兼ねる琴音が胸を撫で下ろす。
野球部員はホテルに宿泊して近くの高校のグラウンドや野球場を借りて練習に励むが、応援団までそういう訳にはいかない。
応援団は多くが試合の都度、それぞれの学校からバスを借り上げて遠征するため、第1試合ともなれば早朝に出発しなければ、とても間に合わない。
琴音は初戦までは吹奏楽部として応援団と、それ以降は野球部と行動を共にする予定になっている。
荷物の搬入や長距離移動のことを考えると、琴音としては少しでも時間にゆとりのある日程が望ましい。
「初戦の北信州総合高校に勝てば、2回戦は大会7日目の第3試合。順調に行けば、3回戦は大会9日目の第3試合だな」
浩平が日程表とトーナメント表を交互に確認する。
春分が近付き徐々に暖かくなってきたとはいえ、朝一はまだまだ冷える上に身体の動きも鈍くなりがちである。
「朝一からじゃないのは、選手としても正直助かるよ」
十分な休息がとれ、時間的にも陽が昇り気温の上がった時間帯にプレイができるのは、幸運といってもよい。
珠音としても、出来る限り慣れた環境でマウンドに登りたい。
「それに、昼間の試合なら”私たち”をたくさんの人に見てもらえる。ただ出場するだけじゃダメだし、精一杯プレイする姿を見てもらえなきゃ、意味がない」
所謂”センバツ”ともなれば、年度が替わる時期の季語とも言える程には全国的に知名度のあるイベントである。
テレビ中継も予定されており、視聴率も高い。
珠音とまつりがベンチメンバー入りしていることへの懐疑的な意見は表立ったものこそ少ないものの根強く、2人の耳に嫌でも入ってきてしまう。
「......見返してやる」
誰にも聞こえないよう気を遣ったつもりなのだろうが、案外ヒソヒソ声というものは、静かな空間では本人の思っている以上によく聞こえるものだ。
珠音のギラギラとした強気な発言に、浩平は視線を逸らして嘆息した。
開会式の前々日。
学校が主催した壮行会を終えた硬式野球部員を乗せたバスは、途中で数度の休憩を挟みながら運よく渋滞に巻き込まれることなく、新東名高速道路・伊勢湾岸自動車道・新名神高速道路・京滋バイパス・名神高速道路を西へと進み、甲子園球場最寄りにして名神高速道路の終着点である西宮ICに到着する。
球場と宿泊地は少し離れていることもあって本来は遠回りになるのだが、選手たちの希望を叶える形で鬼頭と運転手が事前に段取りを決めていた。
「お、あれじゃね!?」
大庭の声に、同乗する部員たちの視線が窓の外へと向かう。
一部は落葉しているため夏場程の鬱蒼とした様子こそないものの、球場の特長とも言うべき外壁を覆う蔦はハッキリと視認できる。
「やべぇ、俺たちホントに来ちゃったんだな!」
「いやいや来ただけじゃなくて、俺たちはあそこで試合やるんだからな?」
はしゃぐ大庭に対し、選手宣誓の原稿を確認しながら二神が溜め息をつく。
「いよいよだね」
「うん」
珠音の隣に座るまつりは表情こそ大きく変えていないものの、どこか浮かれた様子にも見える。
短く答えた珠音も、心臓の鼓動が高鳴るのを止められそうにない。
「私たち、甲子園で試合をするんだね。分かっていたつもりだけど、いざ目の前にするとドキドキするよ」
目の前には夢にまで見た高校野球の聖地が見え、自分たちは数日後にその舞台に立つのである。
浮かれるなと言われても、そう簡単に抑えることは難しい。
「やれやれ......」
鬼頭は溜め息をつくと、バスのスピーカーに繋げられたマイクを手に取り、不安全にならない程度に顔を出す。
「二神の言う通りだ。来て遠くから見ているだけだったら、ただの旅行に来た観光客と変わらないし、甲子園球場も観光名所にしか過ぎない。だが、俺たちはあそこを舞台にして、一つでも高みを目指す戦いに挑むんだ。浮かれる気持ちも分かるが、気を緩めないように」
部員たちは頷いて応え、再び視線を球場へ送る。
西日に照らされた甲子園球場はこれから繰り広げられる熱戦を暗示するかのように、その姿を赤々と輝かせていた。
賑やかな行進曲がすり鉢状のグラウンドで反響し、式典に華を添える。
プラカードを持った生徒に先導された各校の選手たちが右翼側ゲートより姿を見せ、ウグイス嬢の紹介を受けると球場に集まった多くの観客から暖かい拍手で迎えられる。
「や、やべぇ、緊張してきた」
「バスの中で見せていた余裕はどこかに置いて来たのか?」
相変わらず浮かれた様子の隠し切れない大庭は緊張も隠し切れない様子で、背番号「5」が小刻みに震えているように見える。
「そうだ、切り替えるんだ。この拍手は全て俺に向けられた称賛だよな!」
「それは空耳だな」
先頭に立つ二神が、呆れた視線を送る。
「この際だ、開会式で思い切り緊張しておけ。試合までに環境に慣れるためにも、な」
記録員を担当する夏菜を伴った鬼頭も、やれやれといった様子を見せる。
部員一同、珠音にまつわる一連の件もあり注目を集めることには比較的慣れている自負はあったが、4万人を超える大観衆の前に立つプレッシャーはこれまでの経験を上回るようだ。
「鎌倉大学附属高校の皆さん、よろしくお願い致します」
選抜旗を持つ二神が最先頭に立ち、その後方から副キャプテンを務める珠音と浩平を先頭とした2列の隊列を組む。
「よし、行ってこい!」
鬼頭の声援に背中を押され、プラカードを持った女子生徒に先導された18人の隊列がグラウンドに姿を現すと、紹介前にもかかわらず大きな拍手で迎え入れられた。
「鎌倉大学附属高校、神奈川、初出場」
ウグイス嬢のアナウンスが入ると、一段と声援が大きくなる。前を歩く高校と比べても、その差は明らかだった。
「凄いな」
浩平は雰囲気に圧倒されたのか、思わず小声を漏らす。
後ろを歩く隊列も少し動揺しているようで、腕の振りと脚を出すタイミングを何とか合わせているような状態だ。
「そうだね。でも、これは違う」
「え?」
その中でも、横を歩く珠音は表情一つ変えずに歩いている。
「あれ」
珠音が視線を送る方向から、他の高校などまるで気にも留めていないかのように、多くのテレビカメラと望遠レンズが向けられている。
高校野球の長い歴史の中で史上初めて公式戦に出場する女子選手を逃さず収めようというのだろう。
「浩平、私たちはまだ認められていないということだよ」
開会式の様子はテレビ中継されており、今この瞬間も隊列の中で一際目立つ小柄な体躯が全国のテレビ画面に映し出されているのだろう。
「どういうことだ?」
「この声援は私たちの健闘を讃えるものじゃない。パンダを見る視線と同じだよ」
珠音は一瞬だけ顔を歪め、すぐ元に戻す。
男子の中の紅一点(実際にはまつりもいるので、二点)。
もちろん全てではないが、鎌大附属に向けられている視線は珍妙な物に向けられる好奇のものに他ならない。
「(珠音はいつもこんな視線を受けていたのか)」
浩平は横を歩く珠音に再び視線を送る。
我関せず。
そう言いたげな表情の珠音は、ただただ前だけを見つめていた。
全32校が入場し、式典が開始される。
前年優勝校から優勝旗と優勝杯が、準優勝校から準優勝旗が返還され、大会主催者や来賓からの挨拶が続く。
「出場32校を代表して、鎌倉大学附属高校、二神勇翔主将が選手宣誓をします。出場各校の主将は、選抜旗を持って前に出てきてください」
アナウンスを受けると、二神は選抜旗を珠音に預け、隊列を外れる。
二神が前方に設置されたお立ち台に駆け寄るのに合わせ、選抜旗を掲げた各校の主将が前に出る。
「本物だ......」
「ちっさ」
隣に立つ身長180cmを優に超えるだろう体躯から思わず零れた言葉にも、珠音は全く動じない。
強豪校犇めく”センバツ”出場校の主将の中では、選抜旗を掲げる珠音の華奢で小さな身体は入場行進の時以上に小さく見える。
「宣誓!」
緊張の面持ちの二神は小さく深呼吸すると、覚悟を決めて読みこんだ原稿を力強い声で読み上げる。
「野球を愛する”全て”の人が夢見る甲子園。私たち選手一同は今、学校関係者、家族、友人に支えられて今日という日を迎え、幼い頃から夢見た舞台に立つことができました。私たちを応援してくれたたくさんの人たちのため、厳しい練習の日々を共に過ごした頼もしいチームメイトのため、そして、この舞台を目指している、男女問わず全ての未来の高校球児のために、試合が終わる瞬間まで持てる力を全て出し切って、正々堂々プレイする事を誓います」
宣誓に対する万雷の拍手に二神は少しだけ安堵したような表情を見せると、宣誓を見守った連盟会長にお辞儀し隊列に戻る。
続いて珠音が選抜旗を持って戻ると、二神に手渡す。
「2人ともお疲れ」
浩平が声を掛けると、二神は少々ゲッソリとした表情を見せる。
「”本物だ”とか”ちっさ”って言われた」
「態度だけは誰よりもデカいのにな」
一方の珠音は少々不機嫌そうな様子を見せ、両隣のチームの主将に睨みを利かせていた。
動じていなかったものの、その場ではあくまで”無視”していただけのようだ。
どちらの主将も視線を受けた瞬間にビクリと肩を震わせたあたり、珠音の眼力は相当なものなのだろう。
そうこうしている内に開会式が閉会し、選手たちはプラカードを持った生徒を先頭に駆け足で退場する。
「まぁ、何にせよ始まったな」
「そうだね」
浩平が珠音に声を掛けると、少々拗ねたような雰囲気の返答が帰ってくる。
「頑張ろう」
それでも、短い言葉の中には高揚感が垣間見えた。
「あぁ」
浩平は短く答え、前を駆ける小さな背中を見やる。
後ろからでは、その表情までは分からない。
「(ま、何だかんだ言っても、ワクワクしているんだろうがな)」
少年野球チーム以来、長年バッテリーを組む古女房である。
マウンドに立つ旦那の考えていることなど顔を見なくても分かってしまう。
浩平の考えている通り、珠音は期待に胸を膨らませた表情を見せ、夢見たグラウンドを力強く駆けて行った。
大会3日目の午後。
第2試合を戦う2校へ送られる声援を遠くに感じながら、珠音らはウォーミングアップを開始する。
「応援団も無事に到着したよ。開会式、みんな格好良かった!精一杯応援するから、みんなも頑張ってね」
鎌倉から応援団を引き連れてきたユニフォーム姿の琴音が室内練習場に顔を出し、ベンチ入りメンバーを激励する。
早朝集合に慣れないバスでの長距離移動もあり表情には若干の疲労感が出ていたが、それを感じさせないくらい明るく振舞っていた。
「ありがと。初回から飛ばすよ!」
珠音は激励を確かに受け取ると、浩平に声を掛けられブルペンに入る。
1回戦の相手は北信州総合高校で、珠音ら鎌大附属は後攻。
「舞莉先輩の話だと、決して強豪とは言えない相手だってね」
抽選会の後、二神は律義に関西旅行中の卒業生へ日程と対戦校を教えたところ、舞莉から北信州総合高校の情報が送られてきた。
「それにしても、何で舞莉先輩が長野県の学校のデータを持っているんだろう」
珠音と浩平は徐々に距離を開きながらキャッチボールを行い、肩を暖めていく。
「あの人を疑問に思い始めたらキリがないさ。何でも、知り合いが長野にいるとかいないとかで、卒業式の後にしばらく一人旅行していたらしい。二神が言っていたぞ」
「ふえぇ」
珠音は同じく横で投球練習を始めた二神に視線を送る。今日のゲームプランでは珠音は6イニング投げた後、二神と高岡に継投する予定だ。
「俺も驚いた。ホント、あの人のことはよく分からん」
一足先に投球練習を開始していた二神は、既に仕上げの段階に入っていた。二神の投球を、控え捕手の深瀬が小気味良い音を立てて捕球する。
「おぉ、気合入っているね」
「そりゃな、負けたくないし」
二神は深瀬へ「ラスト」と声を掛け、息を吐き出す。ゆっくりとした動作で振りかぶり、全力で投げ込まれた直球は、深瀬のキャッチャーミットを動かすことなく吸い込まれる。
「あと、俺の知り合いが北信州総合に通っていて、吹奏楽部に入っているんだ。今日はアルプススタンドに来ているらしい。対戦校とはいえ、知り合いの前で格好悪い姿は見せられないだろ」
「......それもそうね」
二神はクールダウンを終えると、ブルペンを後にする。
「それじゃ、エース。試合は任せたぞ」
「はいよ」
二神の激励に珠音はグローブをはめた右手を軽く振って応える。
「ねぇ、浩平」
暫く投球練習を続けた後、珠音はポツリと呟く。
「何だ?」
「二神の知り合いって、性別どっちだと思う」
「女」
「私もそう思った!」
珠音の疑問に浩平が食い気味に応えると、珠音も瞳を活き活きとさせて盛り上がる。
「いやー、二神も興味ないように見えて、何だかんだ男子だね。うんうん」
何だかんだで、珠音も女子である。人の色恋話は好物だ。
「ほら、人のことより自分だ。集中、集中」
「はーい」
浩平は”やれやれ”と首を振り、珠音にボールを返す。
長年バッテリーを組んできただけに、気分屋な一面を持つ珠音のコントロールもお手の物だ。
「(ホント、普段はふざけた性格しているくせに、一度ボールを持ってマウンドに立たせたら雰囲気が変わるな)」
珠音はボールを受け取る時は不承不承な様子だったが、短く息を吐き出し意識を浩平のキャッチャーミットに集中すると、目付きが一変して鋭くなる。
珠音に投球を促すと、構えたミットに綺麗な回転の投球が軽快な音を立てて収まる。
「ナイスボール」
珠音の真っすぐな視線は、試合の勝利のみ捉えていた。
第2試合が終了してすぐ、第3試合を戦う選手たちがグラウンドに姿を現し、両校が試合前練習を始める。
暫くして第3試合のスターティングメンバーが発表されると、球場内は大いに盛り上がった。
「まだ、試合始まってないんだけどなぁ」
室内練習場からベンチ脇のブルペンに場所を移したバッテリーが、試合前にも関わらず歓声を上げる観客に呆れた様子を見せる。
盛り上がりの要因は、正しく9番投手としてスターティングメンバーに名を連ねた珠音だろう。
高校硬式野球の公式戦に登板する史上初の女性選手の存在は、下馬評ではお世辞にも有力校とは目されない初出場2校の対戦カードを、大会屈指の注目度にまで持ち上げていた。
既にスタンドは満員に膨れ上がっており、設置されたカメラの台数も心なしか多く感じられる。
投球練習中も、好奇の視線は常に感じられていた。
「気にしても仕方ないさ」
「分かっているよ」
4番打者を務める浩平が苦笑する。
既に両校とも試合前練習を終え、グラウンド整備の様子を眺めながらベンチ前に並び、素振りを行っている。
「早くマウンドに上がりたいな。このままベンチに座っていたら、私はただの人形だもの」
珠音の様子は恐らく、現在進行形でテレビカメラにしっかりと抑えられているだろう。
「マウンドに立てれば、せめて動物園のパンダくらいにはなれるのになぁ」
「いったい何を言っているんだ」
3番打者としてスタメンに名を連ねた三塁手の大庭が、珠音のボヤキに首を傾げる。
「動いてないよりかは、動いている方が気は晴れるってことじゃないか?」
「たぶんそうだ」
同2番遊撃手の二神の指摘に、浩平が頷く。
「試合が始まれば大丈夫だ。こういう環境にも慣れている」
「そう願うよ」
浩平の視線の先には、マウンドをジッと眺め精神統一する珠音の姿があった。
間も無く、高校野球の歴史が変わる。
グラウンド整備が終了し、両チームの選手が一列に並ぶ。
第3試合を捌く審判4人が一塁側ベンチ脇に並び、主審の合図で両チームは本塁付近で相対し、礼を交わす。
球場内からは拍手が鳴り響き、それに後押しされるよう守備に就く鎌大附属ナインがグラウンドに散っていく。
「ピッチャー、楓山珠音”さん”」
ウグイス嬢の紹介で珠音の名前がコールされると、割れんばかりの拍手がマウンドに立つ小さな背中に向けられる。
他の選手が”くん”付けで紹介される中での”さん”付けが後日に場外でひと悶着を巻き起こすほどの異質さを、グラウンドで一番高い場所から球場中に放っていた。
最大4万7千人を超える観客を収容できる大きな球場では、珠音の華奢で小柄な身体は普段以上に小さく見える。
「プレイボール!」
主審が試合開始の合図を発すると同時に、球場にサイレンが鳴り響く。
浩平のサインに首を縦に振り、ゆったりとした投球フォームから投じられた”歴史的一球”は、打者の打ち気を削ぐような80km/h台後半のスローカーブだった。
「ストライク」
主審の判定一つに、球場が大きく湧き上がる。
通常ならば単なる一球に過ぎないが、珍妙な”見世物”とあっては話が違うのだろう。
「(過剰だな。珠音が変に意識しなければいいが)」
浩平は球場の様子へ素直な感想を覚え、マウンドに立つ珠音の様子を見る。
「......余計な心配か」
「どうした?」
心の声が思わず漏れ出したようで、主審に声を掛けられてしまう。
「いえ、何でもありません」
珠音は球場の雰囲気に呑まれることも、過剰に意識を割く様子もなく、ただ真っ直ぐと自分を見ていた。
浩平はマスクを付け直し、2球目のサインを出す。
「(直球で差し込むぞ)」
浩平のサインに珠音は疑うことなく頷き、左打者の内角に構えられたキャッチャーミットに目掛けて直球を投げ込む。
鈍い金属音と共に弱い打球が三塁方向へ転がり、三塁手の大庭が軽快に処理する。
「アウト!」
一塁塁審のコールと共に、球場はまるでアイドルのライブに押し掛けた熱烈なファンのような歓声に包まれる。
「ナイスボール。110km/h台前半だけど、上手く差し込めたな。驚いたような表情をしていたぞ」
珠音の投球で表示される”分かりやすい”数字は、高校野球の投手としては並以下といって間違いはない。
厳しい練習を自らに課してきたものの、17歳男女の体格と筋力量の差を埋めることは叶わない。
「作戦通り、いい感じだね」
持てる全ての技術を出し惜しみせず、ストライクゾーン全体を活用して相手に錯覚を与え、いかに遅い球を速く見せるか。
限られた条件の中で、打者を打ち取るために練り上げたピッチングスタイルの完成度を高め、いつでも自然に出せるような練習を重ねてきた。
まだ対戦打者は1人だが、浩平と考えた作戦はこれまで参加した大会と同様に有効と考えていい。
「このままの流れで行こう」
「うん」
少なくとも、北信州総合打線は打ち気にはやっている。
多少なりとコースが甘くなった所で、痛打を受けることはないだろう。
2人の狙いは面白いように当たり、次打者は初球のストレートをバットの先に当て、3番打者もボールが来る前からスイングして、簡単に追い込まれてしまう。
ゆっくりした投球フォームから思い切り左腕を振るが、小柄な体躯に男子と比べて見劣りする筋力量が功を奏したか、ボールとバットがコンタクトするポイントにコンマ数秒単位で投球の到達が遅れている。
打者はタイミングが合っていると錯覚するが、僅かなヒッティングポイントのズレからボールに伝わる力が減じられ、打球は鉄壁の守備陣に絡めとられていく。
「ストライク、バッターアウト!」
3番打者のバットが空を切り、首を傾げて投球の軌道を再確認する。
どの球種、どのコースに投げる時も、珠音の投球動作も表情も変わらない。
未経験者ならば当然のように思えることも、玄人相手になればなるほど細かな差が致命傷となる。
当然のことを当然のようにこなせるよう練習を重ねた珠音の前に、北信州総合の上位打線はスコアボードに0を記すと、球場は春を通りすぎたかのような熱気に包まれた。
両校無得点のまま試合は投手戦の様相を呈し、進んでいく。
「ストライク、バッターアウト!」
抑えた時の歓声が凄まじいものなら、”抑えられた”時の溜め息も凄まじい......とはいかなかった。
「なんか、当然って感じの雰囲気なんだけど」
この回の二人目の打者であった珠音が三振に倒れると、球場はどこか子供を見つめるような優しい視線を送ってくる。
「ナイススイング。なに、全く叶わなかった訳じゃないさ。バットに1回当たったわけだしな」
圧巻の投球を見せる投手楓山珠音に対し、打者楓山珠音の非力感は拭いようがなかった。
珠音の打撃スタイルは、以前に対戦した”左打席に立つ”茉穂のように、小兵らしく当ててシフトの隙間へ転がす技術を持ち味としたものではない。
無論、当てる技術は十分に持っているが、当初から転がすことに特化したスイングでは投球に力負けしてしまうのが関の山である。
一発勝負のトーナメント戦で、無駄にできるアウトは一つもない。
結果として、持ち前のミート力と小さな身体を余すことなく使い、大きなスイングで内野の頭を越すことを目指した打撃スタイルにたどり着いた。
「むー、次は打ってやる!」
珠音は膨れっ面をしているうちに、球場内に歓声と溜め息が同時に漏れる。
一番打者の南が放った打球を相手二塁手が後逸し、2アウトながらランナー1塁で打席には2番打者の二神を迎えた。
「行ったれ、キャプテン!」
「狙っていけ!」
味方ベンチからの声援を受け、打席に立つ二神が集中力を高める。
二神が繋げば、続く3番打者は何事にも器用な大庭、4番打者は部内一の強打者である浩平に繋がる。
凡打に倒れた所で次の回は中軸から始まるため、どちらにせよ得点のチャンスは大きい。
「......うぇ!?」
しかし、二神の打席結果は周囲の期待を大いに裏切った。
無論、悪い方ではなく良い方向に、そして過剰に、である。
巧打者タイプと(少なくとも体格的に)目される二神のバットがボールを真芯捉え、甲高い金属音が球場に鳴り響くと、球場は一瞬の静寂に包まれた。
打球はバックスクリーン目掛けて118メートルの距離をグングンと進み、フェンスまでの距離が縮まっても減速することなく、一塁側アルプススタンドからの声援に後押しされるようにむしろ加速していく。
本人も驚愕の表情を見せた打球は2.6mのフェンス高を悠々飛び越え、二塁塁審が右手で円を描くと、球場は一塁側の応援団を中心に割れんばかりの声援に包まれた。
「フェンスオーバーのホームランなんて初めて打ったよ!」
ダイヤモンドを一周してベンチに戻ってきた二神が、いつになく興奮した様子を見せる。
ランニングホームランこそ経験はあるが、人生初めての正真正銘な”ホームラン”を、まさかこの大舞台で打てるとは夢にも思って見なかったのだろう。
「いいじゃんいいじゃん。知り合いの女の子にも、いい所を見せられたじゃない!」
「あぁ......って、え、女!?どういうこと!?」
珠音の茶化しに二神が赤面して狼狽し、ベンチがさらに沸き立つ。
スコアボードに記された得点は2。
勝利の女神は試合の流れを生み出す水瓶を、鎌大附属へそっと傾けた。
試合は僅差のまま中盤まで進み、北信州総合には二神の本塁打で失った2点が大きく、そして重く伸し掛かった。
「ナイスピッチング!」
予定通りの6イニングを投げ終えると、珠音は大きく息を吐き出しベンチに座る。
持てる技術を全て駆使しているとはいえ、珠音のピッチングではそれなりに出塁を許すことを想定しないといけない。
張り詰めた緊張感の中で集中力を保ち、無駄な出塁を許さないよう細心の注意を払ってマウンドに立ち続けた珠音の体力は、流石に限界を迎えていた。
「お疲れ様、アイシングしよ」
「ありがとう、夏菜」
珠音は夏菜に付き添われてベンチ裏へと下がっていく。
全てではないが、一度ユニフォームを脱ぐ必要があるため、流石に人前でという訳にはいかない。
「楓山、よく頑張った。二神は次の回からいくから、戻ったら準備しておいてくれよ。伊志嶺もだ!」
「前の回から準備していますよ。いつでも行けます!」
「待ってました!」
6回裏の先頭打者である二神を送り出し、チームは円陣を組む。
「次の回からピッチャーが変わる。ピッチャーが変われば、流れも変わるもんだ。ここで点をとらないと、相手のペースになりかねない。何としても1点取るぞ!」
『はい!』
鬼頭の檄にナインが応える。
二神の本塁打こそあったが、それ以降は浩平が四球をもぎ取った以外で出塁すらできていない。
鎌大附属打線の執念に臆したか、それとも前の打席で想定外の本塁打を放ったことへの警戒からか、二神は一度もバットを振ることなく四球で出塁する。
1点が欲しい場面で、定石では犠打の指示を送るべきかもしれない。
「......浮足立っているな」
しかし、鬼頭は相手投手が少々落ち着きのない様子を見て、強行を指示する。
「(よっしゃ、俺が決めてやる!)」
サインを確認すると、大庭は意気揚々と打席に入る。
「大庭!続け!」
「おうよ!」
ベンチから送られる檄に応えるようにバットを構え、初球。
「......ってーっ!」
大庭の臀部に投球が命中し、鈍い音と思わず漏れた悲鳴が、一塁側ベンチにまでハッキリと聞こえてくる。
「いいぞ大庭!」
「おいしい、実に美味しい!」
大庭は患部を擦りながら、半泣きで一塁へ駆けて行く。
走者一二塁と、この日二度目の得点圏に走者を置いた状態で、打席には第一打席に中堅への安打、第二打席に四球と、相手投手の球筋がしっくりと見えている4番の浩平。
「あの、状況は?」
アイシングを装着した珠音がベンチ裏から戻り、顔を出す。
「......最高だ」
鬼頭は満面の笑みを見せ、珠音に打席を指さす。
浩平がどっしりとした構えで打席に入り、浮足立つ投手に投球を促す。
「みんな、チャンステーマ行くよ!」
一塁側アルプススタンドでは琴音が音頭をとり、男子部員が掲げたプラカードを見て吹奏楽部員は譜面をめくり、応援団は歌詞カードを取り出す。
プラカードに書かれた文字は、”珠音いろ”と名付けられた応援曲。
琴音を中心に野球部と吹奏楽部が合同で作り上げた野球部専用のチャンステーマは、ここまで鎌大附属打線が得点圏に走者を置くことができなかったこともあり、まだ一度も使用できていないでいた。
ようやく訪れた絶好の機会に、応援団も練習してきた成果をようやく披露できると気合を入れ直す。
琴音以外の応援団が全員着席し、琴音が大きく深呼吸をして緊張を解す。
「届け、届け、届けや届け。珠音色の思いを乗せて、今日の勝利へ思いよ届け」
琴音は大きく息を吸い込むと、普段の彼女からは想像の付かない程の声量で、そして彼女の透き通るような声がメガホンに乗り、耳に馴染みやすい音階のソロパートが紡がれる。
「届け、届け、届けや届け。珠音いろの思いを乗せて、今日の勝利へ思いよ届け。
進め、進め、進めや進め。珠音いろの翼で羽ばたき、今日の勝利へ突き進め。
掴め、掴め、掴めや掴め。珠音のいろをこの場に奏で、今日の勝利をこの手に掴め」
琴音の作り上げたリズムを応援団が男女二部合唱で受け取り、吹奏楽部とチアリーディング部が多いに盛り上げる。
琴音の作った応援曲は、高校野球の応援歌としては珍しい合唱曲として作り上げられた。
「な、何かちょっぴり恥ずかしいなぁ」
一塁側アルプススタンドから届けられる声援に珠音が右手で頬をかき、照れたような表情を見せる。
完成した応援曲の題名に自分の名前を入れたことを琴音から最初に聞いた際は、じわじわと湧き上がる恥ずかしさのあまり悶え死にそうになったものだ。
「珠音いろって何色!?」
披露会が行われた音楽室で思わず制服姿のままのたうち回ってしまい、色々見えそうになったのを琴音が必死にカバーする始末だった(琴音の俊敏性が知らず知らずのうちに野球部で鍛えられたのは、言うまでもない)。
「所謂、赤とか青じゃないよ。野球が奏でる音を”球音”って表現するでしょ。私たちの目指す野球が奏でる音は今までの野球とは違う訳だし、何かいい言葉がないかなって思ったら、珠音の”珠”も”美しく白い球”の意味があるんだもの。私たちは珠音に引っ張られてここまできた、”珠音いろ”に染まった野球選手。珠音いろは、私たちの野球そのものを表現しているんだよ」
甲高い金属音で、珠音の意識はグラウンドに引き戻される。
「あぁ、惜しい!」
夏菜が一塁線の僅かに右を抜けた打球に、悔しがる様子を見せる。
「浩平!いけーっ!」
珠音は瞬時にメガホンを手に取り、大声で声援を送る。
正面からの激励に浩平は思わず苦笑すると短く息を吐き出し、ジッと投球を待つ。
「プレイ!」
投手は大粒の汗を拭うと、投球動作に入る。
右腕からボールが放たれた直後、高めに浮いた投球に投手が焦りの表情を見せる。
「あっ!」
球場に鳴り響く甲高い金属音はアルプスからの応援曲にアクセントをもたらし、金属バットは球場に駆け付けた合唱団にグランド・ポーズを指示する指揮棒へと変化する。
「切れるな!切れるな!」
左翼方向に進む大飛球は一塁側からクレッシェンドのかかった声援に後押しされると、左翼ポール際に着地した。
球場中から割れんばかりの歓声が浩平へと送られ、アルプススタンドでは応援団が次打者の新3年生長峰の応援などそっちのけで大盛り上がりを見せている。
「ナイスバッティング!」
ダイヤモンドを一周しベンチに戻ってきた女房役に、珠音は握り拳を差し出す。
「お前ばかりに美味しい所を持っていかれちゃ、男が廃るからな」
「何それ、前時代的だな。世は令和だぞ」
「いいだろ、別に」
バッテリーは互い笑みを見せ、浩平は自身の拳を珠音の拳に合わせる。
大舞台で交わされた勝利の儀式は、初出場の鎌大附属硬式野球へ甲子園初勝利をもたらした。
試合終了後。
部員たちはベンチから用具を引き上げ、室内練習場に移動していた。
間も無く、鎌大附属の次戦の相手が決まる第4試合が開始予定で、次にこの練習場を使用するチームはいない。
「くそぉ、いいとこなかったなぁ」
大庭は地面に腰を下ろし、勝利の余韻に浸ることなく悔しさを口にする。
この日は4打席に立ち、1三振1死球を記録した。
「いいじゃないか、あのデッドボールは美味しい場面だったじゃないか。俺なんか4タコだぞ!」
5番打者の長峰は4打席で無安打と、目立った活躍を見せられていない。
「まぁ、そうだけども。でも、ヒーローじゃない」
大庭がモニターを確認すると、そこにはインタビューを受ける監督とチームメイトの姿があった。
先制ホームランを放ったキャプテンの二神、ダメ押しホームランを放ち且つ全打席出塁の浩平、先発投手として無失点の快投を見せた”大会史上初の女子選手”である珠音、そして途中出場で無安打ながらも守備を無難にこなした大会史上初の女性野手のまつり。
若干、メディアの作為的な面が見え隠れするチョイスではあったが、試合結果から導きだされるタレント性としては申し分ない。
「大丈夫、お前のケツデッドボールは傑作だった。たぶん、”熱盛!甲子園!”にはちょっとくらい映るさ!」
「ネタ枠じゃねぇか!」
賑やかでいられるのも、勝利を収めたからこそである。
敗戦していれば、チームメイトを待つ間の口数も少なくなっただろう。
「おやおや、大舞台の後だって言うのに、みんな元気そうだね」
「......えっ、舞莉先輩!?」
夏菜が声の方向に視線を向けると、舞莉が手をヒラヒラと振りながらやってくる。
「いや、ここ関係者以外立ち入り禁止じゃ......」
「え、これ見せたら入らせてくれたよ。先輩の手伝いってことにしてもらった」
舞莉が首から下げたカードホルダーには”記者”の文字が記されている。
「まだインタビュー組は帰ってきていないんだね」
「そうなんですよ。結構長引いているみたいで」
「まぁ、史上初の女子選手を擁し、且つ初出場で初勝利を収めたチームだからね。記者が色目気だつのも仕方がないか」
舞莉はやれやれといった様子を見せると、ポケットから紙を取り出して夏菜に手渡す。
紙にはゲート番号と思しき数字が記載されていた。
「これ、二神が帰ってきたら渡してやってくれ。お互いのバスの発車時刻まで、少しは時間があるだろから」
「分かりました。何か伝えておきますか?」
「そうだなぁ......幼馴染が待っているとだけ伝えてくれ。私のことは内緒でね」
「......幼馴染?」
夏菜がふと試合中の出来事を思い返す。
ホームランを放った二神に、珠音が何かを茶化していたような気がする。
「あぁ、あの時に珠音が言ってた”知り合いの女の子”ですね!」
「そういうこと。さて、私も自分の”目的”を果たしたことだし、退散させてもらうよ。みんな、次の試合も頑張ってね」
舞莉は用件を伝え終わると、早々に立ち去っていく。
ほぼ入れ違いのタイミングで、インタビューを受けていた面々がぐったりとした様子で合流してきた。
「あぁ、お帰り。長かったね」
「ただいま。もー、同じような質問をたくさんしてくるんだもん」
珠音は少々ウンザリとした様子で、インタビューの様子を語る。
どうやら、報道各局が独自の画を撮るべく似たような質問を並べてきたのだろう。
「今日の試合のことよりも、練習で大変な所とか、女子野球との差とか、関係ないところも聞いてくるし。まだ、私を1人の高校球児としてじゃなくて、何かの見世物として扱っているような気がする」
「珠音......」
不満気な珠音に、夏菜は苦笑を見せる。
まだ、世間にとって珠音は好奇の存在でしかない。
「次こそ、あっと言わせてやる」
全国の場で、しかも結果を残した上で改めて突き付けられた事実に、珠音は悔しさを露にした。
「頑張ろ、珠音。次こそ見返してやろう!サポートなら任せて!」
「ありがとう、夏菜」
夏菜は右手でサムズアップに、珠音は微笑み返す。
敗戦ならこれまでだが、鎌大附属は勝利を収めたため次戦がある。
この舞台に立ち続けられる限り、チャンスはまだ残っている。
「ところで......」
珠音は周囲を見回す。何故だかニヤニヤとしているチームメイトの様子に、珠音がまるで気持ち悪いものを見るような視線を送る。
「みんな、どうしたの?」
「いや、ねぇ」
チームメイトの視線の先には、荷物を確認する二神の姿があった。
「キャプテンも隅に置けねぇなぁと」
夏菜から大庭に渡った紙切れが、二神の手に届く。
「二神、荷物は俺たちに任せておけ」
「は?いや、何これ?」
中に記されているのはゲート番号と思しき数字のみ。
これだけ手渡されても、意味が伝わる訳がない。
「女が待っているぞ」
「......あぁ、例の知り合いの”女の子”か」
「――――っ!!」
大庭の茶化しに、珠音が情報を付け加えると、二神の顔が茹でタコのように紅潮する。
『40秒で支度しな』
『3分間待ってやる』
まるで準備していたかのように、部員たちはどこかで聞いたことのあるような名台詞をピタリと揃える。
二神は無言で簡単な身支度を済ませると、余りの恥ずかしさのせいか全力疾走で練習場の外へと駆け出して行った。
「ったく、勝手に動きやがって」
鬼頭は大きく溜め息をつくと、部員たちへ撤収指示を伝える。
こんな茶番ができるのも、無事に勝利を収めることができたから。
鬼頭もそれが分かっており、文句を言う口元もどこか緩んでいた。
結局、二神がチームへ再合流を果たしたのは、練習場を飛び出してから15分後。
お守りを片手に握りしめ、出発予定から12分遅刻で姿を現したキャプテンに、チームは今一度、大いな盛り上がりを見せた。
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