伊400戦記 日本自衛隊、竹島奪回戦! (なろう小説にもあり)

@vizantin1453

日本自衛隊、竹島奪還作戦!

 令和××年、混乱極まる日本国内にて、日本初の女性首相となった『笠間水江』総理は三年前に暗殺された元首相『幸田雪道』が掲げたコウダミスクを改善したカザマミスクを推進する。


 前政権が史上最低の支持率となった中、日本国民の大部分から期待を以て当選した笠間総理は、歴代の総理が目を背けていた事項を次々と実行する。


 抵抗勢力を実力で排除すると共に、日本近代に匹敵する事項を実施する。

憲法第九条の改正を実現した事でこの決定は、他国をも驚愕させると共に一部の国からは警戒の目を向けられる。


勿論、国民の九割が賛成したのは言うまでもない。


 笠間総理は、専守防衛を棄てて敵基地先制攻撃が出来るように自衛隊法の改正を試みるが流石にそれは保守党の中においても反対意見が目立ち断念するが一度、攻撃を受ければ即反撃に移り、敵基地潰滅を出来るよう何とか譲歩を勝ち取る。


 その後、笠間総理はカザマミスクを推進して“美しい日本”を取り戻す努力をしてその結果が目に現れるときに極左派のテロにより危うく命を落とす危険にあう。


 犯人は直ぐに捕らえられて背後関係を調べるとK国の指令を受けたことが判明する。

 しかも総理の行動を予め知っていて行動に移したのである。

 もし、正確なタイミングであったならば間違いなく爆死したであろうと判断される。


 内閣情報調査室の調べで親K国の議員による機密漏洩であることが判明したが野党勢力の邪魔で逮捕拘禁までいけなかった。


 その中で竹島(独島)近海を航行していた日本漁船がK国の艦艇に銃撃されて撃沈されてしまう。


 死亡者五名を出し当然、日本はK国に猛抗議するがK国の言い分が竹島(独島)は我国が昔から保有する領土であり違法侵入したので撃沈した故で国際法上、何も間違っていないと宣言してなしのつぶてであった。


 当然、日本国民は大激怒してK国許すなとの大合唱が起こり保守党も激怒したが野党を始めとする左派の強力な抵抗により、今回の事件を引き起こした責任は、総理にあると非難する。


 その中で笠間総理は、我が国の国民を違法に殺したのはこちらに対する宣戦布告と同様と捉えて総理権限で自衛隊の出撃を命じ、竹島奪回作戦を実施する。


 日本国民からはこの行動を大絶賛したが当然、左派のデモが連日、国会を取り巻いて暴動に近い行動をとる。


 その最中、佐世保と横須賀から第二護衛隊群と輸送艦“おおすみ”“しもきた”が竹島奪還の為に出撃する。


 勿論、港には罵声と怒号が響き渡り、戦争反対! と描かれた垂れ幕が翻ると共にシュピレコールが響き渡る。


 海上自衛隊の戦力と性能の差はK国海軍よりも遥かに上なので当初は直ぐに終わるであろうと思われたが突如、K国海軍の奇襲を受けて護衛艦一隻が撃沈されて輸送艦“おおすみ”も大破する。

 群司令官『片桐茂人』海将補も負傷する。


 この内情だが既に護衛艦内にK国やC国のスパイが乗員として乗り込んでいて破壊工作によってレーダーシステムが不能にされると共に防衛省の中にも詳細な作戦データーをK国に流しているスパイがいたので全てが筒抜けであった。


 護衛艦内にいたスパイは直ぐに捕らえる事に成功するがスパイは青酸カリを口の中に潜ませていてそれを噛んで自死する。


 スパイは各護衛艦の機関室をも破壊したので第二護衛艦隊群はあわや潰滅かと思われたがその時、海中にいたK国潜水艦二隻と海上にいたミサイル艦二隻が突如爆発して轟沈する。


 何が起きたか日本もK国も分からないが両国内で大騒ぎになる。


 その正体は、平行世界や時空を超越して時の旅人となっている潜水空母“伊400”の攻撃であった。


 『日下敏夫』少将が艦長を務める伊400は、六回目の平行世界においてこの世界に飛ばされたのであった。


 だが、伊400の必殺兵器である“荷電粒子砲”は致命的な損傷を得て使用不可能な状態で潜航システムも数々の最強の敵との戦いで故障して五千メートルまでしか潜航できなかったのである。


 晴嵐も又、エンジンシステムが故障して一機も飛ばす事が不可能になったが装甲のみは健在であった。

「今度は令和の時代なのかな? 自衛隊の護衛艦だったな?」


 日下が潜望鏡で火災を起こしている“おおすみ”を見ながら橋本先任将校に語り掛けると橋本は、日下と代わり潜望鏡を覗く。


「そうですね、護衛艦は残念ですが……輸送艦は何とか撃沈は免れたかと」

「助けに行きたいが突然、現れても敵と認識されるのがおちだな……」

「何とかこちらに手を貸してくれる存在を見つけないと」

 その時、ソナー室から緊急連絡が入る。


「アクティブソナーが放たれて正体不明の艦に探知されました!」

「魚雷ないし対潜ミサイルを探知したら急速潜航で躱す! 海底まで四千五百メートルあるがそこまで来るミサイルは存在しない」


 日下達は緊張しながら正体不明からの攻撃を待ったがそれ以降、何も反応はなく念のために潜航しようとしたときに通信室から無線信号を受信したとの事。


「……通信回路を開け、正体が分からなければ対処することが出来ない」

 通信回路を開くと旧日本海軍が使用していた無線周波数で飛び込んでくる。


「こちら日本海上自衛隊第一潜水隊群第一潜水隊所属“うりゅう”艦長『富下貝蔵』二等海佐です、危険な所を助けていただき感謝の極みです。貴艦はもしかして伊400でしょうか? 返答を御願いします」


 突然の無線内容はともかくこちらを伊400と断定したのだとすれば何故、この伊400だと思ったのか不思議な気持ちになる。


 日下と橋本は顔を見合わせると共に首を傾げながら無線で返答する。

「こちらは伊400だが貴官は何故、伊400だと思ったのか?」


 別の平行世界の令和時代に飛ばされた伊400は海上自衛隊壊滅の危機にK国海軍艦艇と潜水艦を轟沈させる。


 その直後、海上自衛隊の潜水艦“うりゅう”艦長『富下貝蔵』二等海佐に正体を見破られたのだがその理由を日下艦長が尋ねると富下が答える。


「私の代々の家系ですが皇室の奥深くに関わる仕事をしていて時空を超える潜水艦の存在を記した書物を閲覧しました。貴方達が別の世界で最高勲章を受章したことも詳細に記されています。ちなみにこの記録の主は昭和天皇です。どうやらどの世界へ行っても皇室に関しては一緒なのかもしれませんね?」

 富下の説明に日下達は唸る。

 嘘はついていないことは確実だが今、言われた事に戸惑うがここは彼のいう事を信じようということになり富下に出来れば伊400の修理と日用品の補給を要請すると快く応じてくれて佐世保基地にある今は使われていなく立ち入り禁止の有刺鉄線で囲まれている旧桟橋を教えてくれる。


 伊400は取り敢えず、厚意に感謝して教えてくれた場所に向かう。

 潜水艦“うりゅう”艦橋内では富下が笑みを浮かべて喜んでいた。

 その表情を見た乗員達は吃驚する。

 彼の笑みをみたのが初めてだからである。


「この時代に伝説の伊400が降臨したのだ……。今この時こそ、日本に巣食う売国奴やスパイ連中を一気に摘発拘禁逮捕出来る! 笠間総理に至急に報告せねばならないな」


 富下と笠間総理の間でホットラインが敷かれていて直接、話すことが出来るので艦長室に行くと直ぐに笠間総理に、ここ数時間の出来事を伝える。


 総理は防衛省や自衛隊に潜むスパイの存在は知っていたが抵抗勢力のお陰で何も出来なかったが今回の破壊行動で一気に摘発を決意する。


「今回の敵の攻撃により貴重な護衛艦を失いましたが幸いに死者は一人も出なかったのが奇跡ですがこの事は決して許すことは出来ません! 富下二等海佐に命じます、この世界に来た伊400に便宜を図りなさい! これより貴方の“うりゅう”は別行動を命じます。司令官には私から話しますので頼みましたよ」


 笠間総理の命令に富下は敬礼を以て応えると笠間総理は満足そうに頷いてTV通信を切る。


「初戦は敗れたが……次は勝って竹島を奪還する」

 潜水艦“うりゅう”は伊400を追って佐世保に針路を取る。


♦♦


 舞台は変わり、国会議事堂にて臨時国会が開催されていて貴重な護衛艦を失う失態を犯した笠間総理と防衛省大臣『直木阿弓』の罷免を野党が口汚く罵り喚きながら口角泡を飛ばして非難する。


「総理! 是非、応えていただきたい!! 総理の暴走でK国を怒らせた結果、我が国の貴重な護衛艦と若い命が失われたのですぞ! しかもK国の将来ある多々の若者を殺したのですよ? 殺人罪でもある! 即刻、辞表を書いて提出して頂きたい! その前にK国に土下座をして謝罪と補償をするべきだ! それから刑務所行きだ」


 最大野党“反戦党”の議員、李博文が喚き散らすと傍にいた野党の全員から辞めろコールの大合唱が始まる。


 この醜い大合唱の前でも笠間総理は余裕一杯の笑顔で聞いていて同じく直木防衛省大臣も苦笑しながら醜い場面を見ていた。


 その時、総理の元に秘書がやってきて耳打ちして何かを伝えると総理は頷き立ち上がるとマイクの前に行く。


 総理が話す内容を聞こうと野次が収まると笠間総理はゆっくりと落ち着いた声で大きく喋る。


「黙りなさい!! この売国奴集団の集まりが! 確かに護衛艦は失いましたが自衛官に関しては裏切り者以外、亡くなっていません! 先の戦いで機密情報を漏洩させたり私の行動予定をつぶさに流した卑怯者の名前も全てこちらで掌握しています。我が国民を慈悲なく殺したK国こそ土下座するべきです。竹島を奪還した後は貴方達売国奴を一掃しますので首を洗って待っていなさい」

 笠間総理はそういうと自分の席に戻っていく。

 この言葉は国会中継で全日本国民が街中や家庭で見ていた。


 日本各地で大歓声が起こり笠間総理を讃える言葉があちらこちらで聞こえるがTVを始めとする各種マスコミは非難轟々で彼女を言葉では言い表せない程、罵詈雑言が浴びせられる。

 この国会中継を見ていた伊400の乗員達も拍手の嵐で喝采していた。

「素晴らしいね、気持ちいい方だな。こういうのを見ると手を貸したいと思うのが人情という事だね」


 富下二等海佐が用意してくれたTV中継を見ながら日下は呟く。


「日下艦長、伊400に我が日本の最新鋭魚雷を差し上げますので受け取っていただければ幸いです」

 そういうと富下は最新鋭魚雷の性能を記した仕様書を渡す。

「勿論、首相は元より海上幕僚長や防衛大臣の許可をとっていますのでご遠慮なく」


 富下の言葉に感謝の意を表して日下は渡された仕様書を開き隅から隅まで丁寧に読んでいき感嘆の声を上げると横にいる吉田技術長にも見せる。

 吉田技術長も絶賛するぐらい優れている物であった。

「これを四十本頂けるのですね? 有難うございます、所で自衛隊の出撃状況はどうなっているのですか?」

 日下の問いに富下は頷いて海図を開いて説明する。


♦♦


 伊400がこの世界に漂流したその次の日の事、K国首都ソウル青瓦台大統領府にて『李静明』大統領はK国海軍首脳部を集めて会議を実施していた。


「我が国に日本の内情を教えてくれる人物から今朝、緊急電文が届いたのだが本格的に自衛隊を総動員して独島を侵略する作戦を立てたとの事で近日中にも海上自衛隊の艦船が出撃するとの事だ。その事について意見を頂きたい」


 大統領の言葉に会議場のあちらこちらから非難轟々と日本の悪口が出る。

「大統領、国際連合に日本の侵略を訴えて国連軍を組織してもらい日本を叩き潰す事を提案します」

「米国に日本の非を唱えて我が国の正義を説けばきっと米国も我が国に力を貸していただけるかと思います」

 その他、色々と対抗方法が出たが全て駄目であったのである。

 米国の反応は冷ややかで僅か数時間後に返事が来て在韓米軍は一切、動くことは無く日本と一戦を交える事はないと断言してくる。

 勿論、日本にも手を貸さず推移を見守るとの事で中立を宣言する。

 国際連合もC国やR国、米国と言った五ヶ国全部が拒否権を実施した為、K国の要請は無視されたのである。

 この凶報にK国マスコミは日本が金をばらまいて買収したと非難している。


 ちなみに先の戦いで海上自衛隊の護衛艦一隻を撃沈した事と大型輸送艦を大破させたことは大いに宣伝したが自国艦隊の被害は一切、報道管制を敷いていた。


「所で正直、日本の自衛隊に我が海軍は勝てるのか? 先日の戦いで潜水艦とミサイル艦を一瞬で失ったと言うではないか」


 大統領の真剣な言葉に第一艦隊司令官『謝恩人』海軍少将が立ちあがって自信満々に発言する。


「大統領、先の戦いで沈んだ艦船は所詮退役間近のボロ船でしたので何の心配もいりません! 先日、スキージャンプを設置改修完了した揚陸艦“独島”と我が国初の三万トン級軽空母も実戦配備完了になりいつでも出撃可能です! F35Bを五十機搭載していますので日本の空母“いずも”以上の搭載機を積むことが出来ます。F35Bは垂直離着機で電磁カタパルトが不要ですので機動戦においても我が海軍が先手を取れます」

 謝恩人が喋り終わると次に第二艦隊司令官『兆園名』少将が立ちあがり自信満々に日本何を恐れるかと啖呵を切る。


「先日、最新鋭の4千トン級の潜水艦十隻が配備されました。この潜水艦の性能はステルス塗料を塗っていてレーダー網には一切、かかりませんので直接、佐世保や舞鶴といった自衛隊の基地を奇襲攻撃できます」


 その他、各出席者がいかに我が軍の実力が海上自衛隊を上まわった事について自慢していたが退役間近で臆病者と蔑まれている『理公命』少将が反論する。


「貴方達、現実を見て物をいう事です。はっきり言って我が国の艦船は建造時から中抜き中抜きを経てカタログ性能よりも遥か格下まで堕ちています。最新鋭空母と聞こえはいいがF35Bの垂直離着陸する時に生じる高温を吸収する素材も中抜きされて一回ないし二回使用すれば最早使用不可能という体たらくを国民に晒します。潜水艦もそうですがステルス塗料と言っても私が調べてみたら粗悪な塗料でした。通常レーダーで直ぐに探知されるでしょう」


 この言葉は大統領を始めとする出席者の怒りに触れて大統領自ら少将の胸倉を掴んで引きずり部屋から叩きだす。

 そして一言、蔑んだ表情で答える。

「貴様は親日罪で全ての財産を取り上げて親族一同、非国民として発表するから覚悟しておけ」

 少将は何も言わず、立ち上がるとそのまま大統領府を出て行く。

 階級章を破り捨てて……。

 だが、彼は家に帰りつくことができずに警察に逮捕されて監獄に放り込まれる。

 『理公命』少将を放り出した大統領は海軍司令官に動員数を尋ねる。


「はい、第一・第二・第三艦隊と第九十一潜水艦戦隊・第九十二潜水艦戦隊・第九十三潜水艦戦隊・第九十五潜水艦戦隊・第九十六潜水艦戦隊・第九十七潜水艦戦隊を出撃させます! 日本は全軍を投入することはないでしょう。C国の動向をも監視しなければいけませんし」


 大統領は笑みを浮かべながら非常に満足な表情をしてふと今、思いついた事を出席者に言うと満場一致で拍手が起こる。


 その内容は、K国海軍の出撃状況から海上自衛隊護衛艦隊を叩き潰して撃沈する映像を全世界に公開してK国海軍の強さをアピールしようではないかと。


 既にK国の支配下にある日本国のTV局に命じて日本の惨めさを世界に晒すと同時に再び我が国に侵略しようとしている日本の非を打ち鳴らして正義は我国あると派手に宣伝して米国が本当は脆弱な戦力しかない日本と手を切って我が国と一緒に日本を叩き潰そうという提案を誘導するように命令することを決める。


 この大統領の命令はK国内のマスコミやTV局に通達すると共に日本のTV局にも大統領の指示を伝えるとK国の強さを讃える番組を作成しますとの返答が来る。


 だが彼らは重要なことを忘れていた……。

 それは緒戦に沈められた二隻の潜水艦と二隻のミサイル艦が同時に一瞬で爆散して吹き飛んだ原因を。

 この四隻の艦長は何が起きたかも知らずに戦死したのであった。


♦♦


ここは佐世保軍港第二護衛艦隊群旗艦“空母いずも”大会議室内にて各艦長達が集められて数日後に実施される竹島奪回作戦出撃に関しての最終作戦会議が開かれようとしていたが未だ開始される気配がない。


「遅い! 富下二等海佐、貴官が今日の司会者だろ? 未だ始めないのか?」


 イージス艦“あたご”艦長『博沼幸次』二等海佐がイラつきながら富下に噛みつくと横に座っている温厚そうな人物が博沼の肩を押さえながらおちつけと諭す。


「富下二等海佐、誰か待っているのか? 総監部の幹部達は東京に行っている筈だからここには来ない筈?」


“いずも”艦長『富永宗次』一等海佐が落ち着きながら富下に言うと彼は頷くと間も無くこの会議の主催者が到着しますのでもう少しだけお待ちくださいと言う。


「主催者ね……。富下二等海佐、貴官は皇室に代々仕える高貴な家柄出身の身だがそれと何か関係あるのかね?」


 護衛艦“しらね”艦長『坂田金時』二等海佐がギロリと大きな目を富下に向けて問うと富下は首を横に振り皇室とは一切、関係ない事を言う。


 その時、会議室に士官が入ってくると富下の耳に何か言うとその士官は敬礼をして大会議室を出て行く。


「お待たせいたしました、今回の主催者を紹介します」


 富下は会議室の扉を開けるとそこに一人の女性が入ってくる。

 その女性を見た時、全員が反射的に起立して敬礼する。


 日本国初の女性総理大臣『笠間水江』本人が入って来たのであった。

「(な……総理だと? 富下、貴様は何を考えている?)」

 護衛艦“くらま”艦長『浦桐彩光』二等海佐が心の中で悪態をつく。


 富下の事を彼は非常に毛嫌いしている。

 それはともかく笠間総理が用意された演説台に立つと先ずはありきたりの挨拶をする。

 その話を聞く十二人の艦長。


ちなみに第二護衛艦隊群の編成だが先日の攻撃で護衛艦を失って退役したばかりの護衛艦を至急、復帰させて組み込んだのである。


「第二護衛隊」

空母“いずも”

イージス艦“あたご”

護衛艦“しらね”(退役したばかりの護衛艦)

護衛艦“くらま”


「第六護衛隊」

護衛艦“もがみ”

護衛艦“みくま”

護衛艦“くまの”

護衛艦“すずや”


『第一潜水隊』

潜水艦“うりゅう”

潜水艦“どんりゅう”

潜水艦“こうりゅう”

潜水艦“かりゅう”


今回の作戦に参加する攻撃艦艇でその他に航空自衛隊も参加して竹島制圧用の揚陸艦も出撃する手筈であった。


 笠間総理が今回の出撃は全世界が見守る中で行われるので日本国の真の強さを各国に見せつけると共に今までの受け身防衛ではなく積極的に国を護る防衛に舵を切る事を話す。


 殆どの艦長達が真剣な目をして聞いている。

 彼らは先日の笠間総理が国会で宣言した内容に大喝采したのであった。

 それは勿論、殆どの自衛官が喝采したのである。

 一通り激励が終わると次に彼女の真の目的が話される。

 彼女は順を追って伊400の事を時系列にて話していく。


 勿論、参加者は総理の言葉を信じると言うか何を言っているのだろうと思っていて頭の中が???状態になっていたが総理がその伊400の艦長と副長が外に控えているので挨拶をするとの事で話を終わる。


「(はあ? あの女総理、遂に頭の脳みそが虫に食われたのか? まあこの狂った話の内容を総書記様に報告せねばな)」


 富下の案内で二人の旧日本海軍第一種礼装をした男性が会議室内に足を踏み入れると一瞬で会議室内の空気が激変する。


「な、何なのだ!? 闘気と言うか……この歴戦の強者のオーロラ?」

 十二人の自衛隊の猛者が震えあがると共に、足が竦んで一歩も動けなかったのである。


 例えると世紀末伝説世界で駆け出しの下端が闘気全開の覇王『ラ〇ウ』の前に出た感じである。

 二人の男性が皆の前に立ち敬礼をして自己紹介する。


「初めまして、先ほど笠間総理の紹介にあった伊400艦長『日下敏夫』海軍少将です。横にいるのは先任将校『橋本以行』大佐です、短い間ですがこうして直に皆様とお会いした事は光栄の極みです」


 日下と橋本の挨拶から始まった内容だが今回、この世界に漂流してきた事と自分達はこの違う世界出身でそこから実に四十年間もの時を旅してきたことを話す。


 あらかじめ用意していた過去の映像を記録した空間投影スクリーンにて上映する。

 

「まあ、信じろと言うのが無理だと私も承知していますがこれが真実です。それよりこれから始まる日本の将来が決まる大事な戦いですので気合を入れていきましょう」


 この場にいる艦長達は黙って頷くしかなくこれが真実か虚実かどうかわからないが少なくとも目の前にいる二人が只者ではないと実感する。


「……日下少将閣下、私は護衛艦……昔の旧軍で言えば軽巡洋艦クラスですが“もがみ”艦長『浦見宗利』二等海佐です。大先輩に向って恐れ多いのですが御無礼をお許しください。今聞いた話によるとK国海軍との戦いは一時間以内で終わらせて竹島奪回作戦終了まで半日? こんな事、可能なのでしょうか?」


 浦見二等海佐の言葉は他の者達も一緒であり当の笠間総理も唖然としていた。


「この私達が貴方達の目と耳の役割を果たしましょう! K国海軍の出撃艦艇及び空軍の全ての現地点の座標をリアルタイムでお知らせします。貴官達はそれを基に対艦ミサイル等に情報を入力して発射するだけで大丈夫です。撃ち漏らした艦は私達で処理致します。勿論、自衛艦に向かってくる敵のミサイル等も全て撃ち漏らした場合、こちらで対処します」


♦♦


K国海軍軍港“釜山”にてK国主力艦艇数十隻が順次、出港しようとしている。


この出撃の為に、盛大なセレモニーが行われて何と大統領以下数十名の高官が出席している。


勿論、この様子をK国マスコミは、K国全土は元より、日本国内の在日K国人にも見えるように日本のTV局にも応援として放映させている。


「今、釜山からアジア第二位の強さを誇る艦隊が出撃しようとしています。残念ながら日本政府は強硬手段を収めないで再び侵略行為を働こうとしているのです。私は日本人ですが心境としてK国に勝ってほしいと思っています。でも、自衛隊の方々も無事でいて欲しいと思っています。この愚かで世界平和を脅かす現総理こそあのナチスのヒトラー以上の残虐な指導者です。今回の独島防衛戦に成功すれば独裁者総理率いる“保守党”は一気に転落します。アジア平和の為にK国海軍に是非、勝って頂きたいと思っています。自衛隊の皆様もサポタージュをして欲しいと思っています。何も平和を脅かす総理に尻尾を振らないで欲しいです。恥ではありません、K国と永遠の友好を保つには戦わないことが必要なのです。私の意見ですが独島はK国の領土と断言します! これで一旦、釜山からの放送は終わります」


 人気アナウンサーの涙ながらの言葉は左派系統の人達が涙を流しながらそうだ! そうだ! と気勢を上げる。


 この時点で、釜山から僅か二十キロ地点の水深七十メートルの所に伊400が停止していて既にK国海軍全艦艇の位置と潜水艦の位置をも把握していたのである。


 完全ステルスモード及び光学迷彩シールドで覆われている小型ドローン十機が黄海や日本海を縦横無尽に飛んでいたのである。


 TV放送を見ていた日下が珍しく憤慨していてそれは橋本も同じで他の乗員達も同じ反応であった。


「何を言っているのだ? あのアナウンサーは? ふざけるも大概にしろと怒鳴ってやりたいよ」


「嫌だ嫌だ、この世界の日本のマスコミはあんな感じなのか、富下二等海佐が言っていたが殆どのTV局はK国やC国の影響が強いのか」


 日下と橋本の会話を聞いていた西島航海長が言葉を引き継ぐ。


「これはこの竹島奪回戦が終わっても先ずは国内の引き締めが必要ですね? 必ず米国を始めとするC国、R国のスパイ合戦が激しくなると思いますが笠間総理は大丈夫なのでしょうかね?」


 日下は西島の言葉に頷くが案外、そんなに深刻にならなくてもいいかもしれないぞと言うと西島は首を傾げる。


「笠間総理と話したのだが総理は既に奸忠の輩を殆ど把握しているようだ。取り敢えず五千人の反乱分子を逮捕拘禁すると決めていて勝利後、直ぐに実施するとの事だ」

 西島が感心したような感じで唸る。


「あの女傑、確かに凄い闘志をお持ちのようだしやるかもね。だが、俺達はこの世界にどれだけ存在するのか分からないですからね? 見届けるのは無理ですね」


「……そうだな、この世界の日本は沢山の問題を抱えているな。尖閣諸島に北方領土問題か、考えてみるとあの日本本土決戦後の世界が一番、ましなのかも」


 日下は過去の事を思いだす。

 日本民族の存亡をかけて日米を始めとする男たちが血で血を洗う壮絶な戦いを経て掴み取った平和……。日本も米国も本土が壊滅状態まで荒れた。


別の令和時代から来た有泉龍之介達との共闘、朝霧会長との邂逅、不屈の魂と闘魂を持った石原莞爾達との出会いを経て日本はアジアの盟主として平和を確立していった世界。


 日下は自分達の時間で言うと四十年前の事を思い出す。

 だが、直ぐに首を振りながら過去の思い出を振り払う。


「過去は過去だ、それより今この世界の時を生きる私達はこの戦を完勝させる事だ! 諸君、頼むぞ」


 この日下の言葉は艦内全部に放送が流れている。

 大歓声が沸き起こる。

 その時、CICから連絡が入る。


「艦長!! K国海軍出撃です! 釜山と斉州島からK国艦艇が出撃です。本土の空軍基地も出撃体制に入った模様」

 日下はゆっくりと頷くと大声で喋る。

「これより殲滅作戦を実施する!」


 釜山からK国海軍の中でも主力を誇る第一艦隊が出航して直ぐに第二艦隊が続き第三艦隊が威風堂々と出撃していく。


 そして最後尾から改良してスキージャンプを設置した強襲揚陸艦“独島”が出航する。

 斉州島からはK国初の最新鋭空母“無名”がフリゲート艦十隻を護衛として出撃していく。

 この勇ましい? 様相をK国内はもとより在日K国人、親K国議員等が拍手と声援を以て讃えている。

 最早、K国を讃える様相を隠さないで堂々と振舞う国会議員等を見ながら保守党の議員や愛国心溢れる人達が憎悪の目で睨んでいた。


 この時、伊400の存在を知らない各国の判断だが最終的には日本が勝利を掴むだろうが短くて一週間、長くて数週間かかるだろうと分析していたのである。


 勿論、情報収取の為に各国の潜水艦等がうじゃうじゃ存在していたが伊400の存在は誰も捉える事は出来なかったのである。


「そういえば……あの護衛艦隊群の護衛艦“くらま”の艦長? だったかな、C国に腰を振る売国奴が打った無電はきちんと処理したか?」


K国艦艇が大歓声の元、送り出されたとは反対に呉軍港から出撃する潜水艦や護衛艦を見送るのは左派の人達による罵詈雑言が書かれた横断幕を振りながら罵っている様子であった。


 岸壁から離れる護衛艦を映しながらTV局の人気アナウンサーで綺麗な女性がマイクを持って喋る。


その内容は、罪もないK国の若者たちを殺戮する為に出撃していくことやアジアに対する侵略行為を反省せずに再び同じ過ちを繰り返し罪もない女性達が慰安婦に堕とされて酷い目にあうことを中継する。


 温かい見送りではなく罵詈雑言が飛び交う出撃で自衛官達は握り拳をつくり泣き叫びたいのを耐え忍んでいる。


 潜航開始した潜水艦“うりゅう”艦内では乗員達が悔し涙で泣き叫んでいた。

 この状況は他の水上艦艇も同様である。


 富下艦長はふと日下艦長との会話で未だ普通の潜水艦であった伊400がパナマ運河攻撃に出撃する時に沢山の人々が大声で出撃を祝福してくれた事を思い出す。


「……羨ましいね、特攻という二度と帰れない出撃だけど誰一人罵ることなどなかった昭和の時代……ある意味、幸せだと思う」

 だが富下は直ぐに感情を切り替えて悔し涙を流している乗員達に喝を入れる。

「貴様達、何をベソかいているのだ!? そんな暇あれば敵よりも早く敵を見つける事に専念しろ!」


 富下の迫力に乗員達が一瞬で心境が切り替わり飛ぶように配置場所に飛んで行く。


「(……泣きたいのは俺も同じだよ、日下さん達が羨ましい)」

 佐世保基地から曳航船の手伝いで日本初の空母“いずも”が後進しながら港を出ようとしていた。


 その他の護衛艦も次々と出港していくが見送りの方は呉軍港と同じく罵詈雑言の嵐が飛び交いTV局が日本政府を非難する放送をしている。


 第二、第六護衛隊の自衛官達が悲しい目をしながら陸地を眺める。

 護衛艦“しらね”後部甲板上で飛行隊長の『仙石孝弘』一等海尉とパイロットの『羽柴道長』一等海尉が悔しそうな表情で陸地を睨んでいる。


「災害支援時は大歓声を以て見送ってくれたのだが戦いに行くときは罵詈雑言か、全く割に合わないな。こんな見送りされるために自衛隊に入ったわけではないのに」

 仙石の言葉に羽柴も頷く。

 防衛大学校の同期生であり十五年間、タッグを組んでいた相棒同士であった。


「だが、それはこの道に入った時から覚悟していただろ? 災害派遣でのちやほやに慣らされていた俺達も馬鹿だった」


「……それもそうだな、自衛隊は戦う為の組織だから。所で話は変わるが俺達対潜ヘリの出撃はないみたいだぜ? 全て水上艦艇で対処するそうだ」


「馬鹿な、空からの探索こそが見つけやすいのにか?」

 二人の会話に艦長の坂田が甲板上に出て来る。


 慌てて敬礼する二人を制して横にいくと陸地を見ながら二人に聞こえるように喋る。


「俺も信じられないがこの戦、これから数時間以内に決着がつく! いや、一時間ぐらいかな? 勝利の美酒でも用意しておけばいい。それに今日は金曜日だな」


 そう言うと坂田は格納庫内に入って行きそこから艦橋に向かう。

 残った二人は顔を見合わせたが???であった。


「艦長がそう言ったのだ! なら、そうしようではないか?」


 海上自衛隊艦隊の集結地点は対馬沖であるが既に自衛艦隊は各自、伊400から送られてきたリアルタイムでの情報を基に新型対艦誘導弾“天照”に情報をインプットしている所であった。


 このミサイルは十菱重工業が開発したミサイルだが射程距離二千キロを誇る超射程対艦ミサイルである。


 前々政権で消費税等の大増税でこういった兵器を取り揃えたのだが当時は日本全国で時の政権が批判にさらされていたのである。


 護衛艦“もがみ”ではCICで操作をしている『原田宗次』二等海尉が訳が分からないが艦長の指示で対艦ミサイルに情報を入力している。


「一体、何が起きているのだ? 敵を探知できていないのに入力か?」

「さあな? 所で知っているか? 艦長が会議から帰ってきたとき、元気がなかったように見えたが気のせいかな?」

 二人が話をしている間にも艦は外洋に出て対馬方面へ向かう。


「藤堂司令官、横須賀幕僚本部より入電! 1000時に……え? ……新型対艦ミサイルを全弾発射しろとの事です」


 ちなみにこの命令書は日本全国の港に駐留している護衛艦やイージス艦にも伝えられて新型対艦ミサイルを搭載した艦船は全て1000時に全弾発射しろとの事。

 勿論、停泊中にも係わらずに。

「……そうか、分かった! 後二十分後か」


 藤堂は富永艦長に外に出て空気を吸ってくると言い艦橋から甲板に出る。

 艦載機F35がずらりと甲板に並んでいる。

 整備士とパイロットが一緒になって整備と各種機器の確認を行っていて誰もがやる気満々であるのが分かる。

 だが、藤堂は複雑な気持ちでそれを見ていた。

「今の戦争はどちらかが先に見つけたほうが勝利の美酒を呑める確率があがるのだが今回の戦いは初めから勝敗が決まっている。全K国海軍艦艇、潜水艦全隻の所在地点を全て把握? チートを過ぎた化け物だあの伊400という潜水艦は」


 彼は護衛艦の各艦長達が日下達に会う前に会ったのだが歴戦の強者と言うか足が竦んで動けなかったのである。

「しかし大東亜戦争時はあれが普通だったのかもな」


 一方、護衛艦“くらま”では浦桐艦長が険しい目をしながらミサイルの装填確認を実施していた。


「(あの日下と言う男、危険すぎる! 総書記様率いるC国にとって邪魔な存在になるがどうしたらいいのだろうか? 簡単な性能を聞いたが世界中何処捜しても存在しない性能を持つ……。C国に寝返らすか? 奴も所詮は人間、女や金に執着するに違いないが……。まあ、今はその潜水艦の探知能力を見せていただこうか! それにK国は最近、反抗心が見られるゆえに躾が必要だ!)」


 浦桐は純粋な日本人であったがC国にすっかり嵌まり総書記『趙金平』に心酔していたのである。


 そう、彼はC国のスパイになったのであったが日下の目には誤魔化すことが出来なかったのである。


 これまでの情報は特別な暗号でC国に全て送ったつもりだったが全て伊400により吸い取られてC国には一切、情報が行かなかったのである。


その日、日本全国の軍港に停泊している護衛艦やイージス艦、陸上に配置している対艦地上ミサイル、各自衛隊基地や米軍基地内の日本がコントロールしている対艦ミサイル発射塔から轟音と共に収納されている筒の前面を破って国産ミサイル及び従来から使用されているハープーンが放たれると共に上昇していく。


 基地周辺及び港のすぐそばで生活している市民達は早朝からの轟音で何事だという風に驚く。


 SNSではミサイルが轟音と共に上昇していく動画等が流れていて#戦争のタグがトレンド第一になる。


 日本全土の各地から放たれた対艦ミサイルは第一波攻撃に三百発である。

 勿論、この攻撃の許可をしたのは笠間総理で現在、防衛省大臣や各閣僚達と共に防衛省市ヶ谷庁舎 A棟の地下1階から4階に設置されている 、中央指揮所にいたのである。


 自衛隊指揮通信システム隊中央指揮所運営隊の責任者が笠間総理の元に来て在日米軍から何事だと状況を聞いてきたと聞くと笠間総理は応える。


「今日がこの日本の新たなる旅立ちと決意表明だと返事をして下さい」

 笠間総理の言葉に責任者は敬礼をして自分の席に戻っていく。


 レーダー等全ての監視機器を運用統括している責任者が来て困惑した様子で未だ敵をも捉えていない中、何をお考えに? と聞くと総理は静かに笑みを浮かべて只一言、「勝利を掴むのです」


 総理の言葉に閣僚を含む大臣たちは何も言わなかったが皆、???である。

「総理、第二波攻撃? 用意整いましたが?」

 オペレーターの言葉に笠間総理は頷くと発射命令を出す。

 再び日本各地から先程と同じくミサイルが轟音を上げて上空に消えていく。

 SNSではミサイル発射の様子が最初から動画で流されていて“ツイッター”や“フェイスブック”はもう戦争の会話についてもちきり状態であった。


 この発射の様子は在日米軍では全て把握しており人工衛星が詳細に捉えている。

 それと米軍もK国海軍艦艇の九割の所在地を掴んでいた。

 横田基地司令部では『アーノルド・サザン』大将が険しい表情で八百インチの大モニターでミサイルの到達地点を凝視していた。


「閣下、信じられませんが……自衛隊が放ったミサイルは我が軍が把握している全てのK国艦艇に向かっています。このままいけば各艦艇に三~四発命中する確率ですが……?」


 サザン大将がう~むと唸り声を出した時にオペレーターから第二波対艦ミサイルが放たれました! と連絡が来る。


「おい、舞鶴基地から放たれたミサイルは見当違いの方向へ向かっているのだがあの方面にはK国艦艇はいるのか?」


「いえ、数時間前は探知していませんが……調べます」

 オペレーターが人口衛星を操作して精密再確認すると驚きの表情で答える。

「K国初の国産空母とフリゲート艦十隻が存在します!」

 大将は底知れぬ何かの恐怖に捕らわれる。

 それは自衛隊の存在ではなくその背後にいる何か得体のしれない人智を超えた何かに恐れを抱く。


「日本に我が国同様の探査能力はない筈だしそんな報告は何も聞いていない! この自衛隊の背後には何か別の存在がある」


「するとK国の中に裏切り者が?」

「いや、そんな単純な事ではない! 大使館に連絡して女傑首相や防衛大臣のここ数週間の行動を全て徹底的に洗うのだ! 何時何分に何処に行ったのか、トイレは何時に行ったのか? 何でも構わない、秒刻みで彼女らの行動を探るのだ!」

 大将の命令に参謀達が駆けまわっていく。

 椅子に深く座り直すと腕を組みながら考えに入る。


「もうこの戦いの結果は分ったが……その後だな、日本に手を貸している何かが存在している。宇宙人か? それとも未来から来たタイムトラベラーか? この件は私だけ抱え込むには大きな事案だ、大統領に進言するか……と言ってもあの体たらくの爺さんには無理だな」


 現在の米国大統領『ジョージ・パルカス』は一般には報告されていないが重度の痴呆で現在の業務は全て女性副大統領『レナルド・ヒラリー』が政務を仕切っていたのであるが彼女は現実的な思考でタイムトラベルや宇宙人等の存在を一切、信じていないので大将の言葉も破棄されてしまうのは確実であった。


「まあ……今となっては日本は我が国と同盟関係は切れないし自衛隊単独では運営は不可能だ。米国から離れる事はないと思うが探知能力が我が軍に匹敵するのは好ましくないな、何か対策を考えないといけないが……まあ、この時間は結末を楽しむとするかな」


 そう言うと大将は再びモニターを凝視するが先ほどの緊張さは無くなっていた。

 同時刻、伊400発令所でもミサイルの着弾点は把握している。


 何しろ、全ての座標を把握しておりそれを各自衛艦隊や陸上基地等に知らせて均等に標的に対してインプットを指示したのである。


「水雷長、一番から八番までに魚雷を装填して発射口を開口しておいてくれ。自衛隊が打ち漏らした艦を仕留める」

「了解しました、敵潜水艦十隻に対してはどう対処を?」


「富下さんに座標を伝えているから魚雷に情報をインプットすれば後はホーミングで標的にいってくれる。万が一、漏らしてもこちらで対処するから問題なしだ」

 この同時間、サザン大将と日下少将の言葉が偶然にはもる。

「命中まで二分!」


♦♦


一方、大声援を受けてK国海軍艦艇は威風堂々と出港していく。

この様子はK国マスコミは元より日本のマスコミも黄色い声援を上げて見送っていて人気急上昇アナウンサーも今日と言う日が日本とK国の本当の友好が生まれる日だと喋る。

 釜山を出港したK国艦艇は沖合にて第一、二、三艦隊が複縦陣の隊列で航行開始する。


 先ずアジアの中でも最強の艦の一つであると言われている“世宗大王”(セジョン・デワン)”を先頭に“栗谷李珥”(ユルゴク・イ・イ)・“西厓柳成龍”(ソエ・ユ・ソンニョン)が波を毛立てて航行する。


 この世宗大王急駆逐艦はイージスシステムを搭載しており日本を始めとするイージス艦と同じ部類である。


 この三隻に向かい合って平行に航行するのは“広開土大王”(クァンゲト・デワン)  “乙支文徳”(ウルチムンドク)・“楊万春”(ヤン・マンチュン)の三隻でK国初の駆逐艦でK国民にとってシンボルと言っていい存在である。


 そしてこの六隻の背後にそれぞれ三隻ずつ張り付いている。

 “忠武公李舜臣”(チュンムゴン・イ・スンシン)・“文武大王”(ムンム・デワン)

“大祚栄”(テジョヨン)・“王建”(ワン・ゴン)・“姜邯賛”(カン・ガムチャン)

“崔瑩”(チェ・ヨン)


 そしてその上下左右にコルベット級二十四隻全てが張り付いて輪形陣の形を作っているのである。


 そして最後尾にK国の精神的拠り所と言うか国民艦として慕われている強襲揚陸艦“独島”(トクト)がいた。

 そして別行動として斉州島から出撃した新型空母一隻とフリゲート艦十隻が出撃したのである。


 “世宗大王”艦橋で『李金城』少将はモニターに示されている各艦艇の光点を見ながら満足そうに頷くと横にいる副官に楽しそうな声で語る。

「烏山空軍基地から“F15”二十機、“F2”二十機、“F35”が十五機離陸したとの連絡が入った!」


 少将の言葉に副官が少しだけ心配そうな表情で質問してくる。


「既に艦隊の位置が日本に知られていないでしょうか? そこが心配ですが」

 副官の言葉に少将は頷くがそこは心配はないと言う。


 艦長の話によると日本の護衛艦にC国のスパイとなっている艦長がいるのだがC国を通して日本艦隊の位置が送られてくる手筈だということ。


「現在、日本艦隊は未だ佐世保基地を出撃した所で他の艦艇の集合も遅れているという。だから未だ心配しなくてもいい」

 艦長の言葉に副官は安堵するともう一つの疑問があったので質問する。

「所で何故、“独島”が出撃したのですか? 独島に新たに兵力を?」

 副官の質問に艦長は首を横に振りながらその答えを言うと目が飛び出るばかりに驚いて口をパクパクしていた。


「対馬を電撃的に制圧ですか! それは凄い事です」

「副官、一つだけ間違えているぞ! 対馬も遥か昔から我が国の領土だ」


 その時、イージスシステムが警報を知らせる。

「か、艦長!! 三時の方向からミサイル六十発探知! ああ!! 五時の方向からもミサイル三六発、九時の方向から百発探知!!」

 悲鳴にも似た叫び声が艦内に響く。

 艦長が怒鳴り迎撃命令を出す。

「全防空兵器、撃て!! 迎撃せよ」


 二十ミリバルカン砲が全艦から弾幕のように各方向から来るミサイルを迎撃していき三十発を撃ち落とした時、バルカン砲が突然、機能停止する艦が続出する。


「何が起きた!?」

「……砲身が焼き切れました! どうやら粗悪品のようです!」

「……ば、馬鹿な!! こんな事、あってたまるか!! こんな結末、認めないぞ!」

「艦長!!! ミサイル当艦に突っ込んできます、命中まで十秒!!」

 悲鳴を上げるオペレーターの叫びに艦長が叫ぶ。

「衝撃に備えよ!!」

 艦内の全員が何かに捕まると同時にミサイルが命中する。

“世宗大王”の艦橋に二本のミサイルが命中して爆発する。

 艦橋にいた艦長以下全員が吹き飛び肉片となって飛び散り戦死する。


 炎が立ちあがるとその他の艦艇にも次々と命中して爆発していき一瞬で真二つに折れて沈む船もある。

 そして悲劇はまだまだ序の口である。

 第一波のミサイル攻撃で半数の出撃艦艇は爆沈してその中には“世宗大王”(セジョン・デワン)”を始めとして“栗谷李珥”(ユルゴク・イ・イ)・“西厓柳成龍”(ソエ・ユ・ソンニョン)が各五発のミサイルの直撃を受けて消火活動する以前に船体が真ん中から折れて轟沈する。


 そして十分後、第二波のミサイルが襲い掛かってくるが既に対空システムは崩壊していて無情にも次々と残存艦艇に突っ込んで爆発する。

 コルベット艦は一瞬で爆発炎上して轟沈する

 “忠武公李舜臣”(チュンムゴン・イ・スンシン)一隻のみが自艦に迫るミサイル全機を撃ち落とす快挙を見せる。

 だが、その幸運もそこで終わる。

 伊400が放った二発の魚雷が船底で大爆発する。

 何が起きたか分からないで “忠武公李舜臣”(チュンムゴン・イ・スンシン)は三つに割れて乗員全てもろとも轟沈する。

 そして最後尾の強襲揚陸艦“独島”にも十発のミサイルが直撃して爆発する。

 独島は木っ端微塵に爆散して跡形もなく海の底に残骸が沈んでいく。


「ふむ、K国艦艇は全滅だな! この時代の戦争は俺達が生きて来た昭和の戦争とは違うのだよ。誰よりも先に発見してステルス機能を持つ長射程ミサイルの波状攻撃で殆どの戦がそれで終わりなのだ」


 日下がドローンから送られてくる映像を見ながら呟くと高倉も頷き次は潜水艦と航空機ですねと言うと日下も頷いてレーダースコープに表示されている“うりゅう”を見ながら呟く。


「さあ、自衛隊の潜水艦の性能を見せていただこう」


♦♦


その日、全世界が沈黙した。

その日、全世界が日本の力を思い知った。

全世界のK国人が茫然として現実が受け入れず時が経つにつれて何が起きたかを理解して泣き叫ぶ。

 先日のK国海軍壊滅の映像は全世界に放映されたのである。

 途中、日本とK国のTV中継は消えたが米国やC国・R国等のTV局は初めから終わりまでを生中継としていたのである。

 何しろ、未だ釜山から僅か数キロ沖合の所で無数の対艦ミサイルの波状攻撃の豪雨が襲い掛かり港で手を振って見送っていた数々のK国民の眼前で彼らの自慢の海軍艦艇が大爆発して全艦が轟沈するといったのを見てしまったのである。


 僅か数十分の出来事だったがこの日をもって全世界のK国民は泣き叫ぶと共に誇りある心が崩壊してしまったのである。


 大統領は悪夢を見た数十分後、桟橋で心筋梗塞を突然引き起こして苦悶の表情をしながら絶命する。


 世界中のTV局では特番組が組まれて日本各地の軍港や基地から発射される無数のミサイルの映像やK国軍艦艇が爆発炎上して轟沈していく様子が流される。


 K国潜水艦隊も又、伊400からの正確な位置情報を掴まれており、詳細な位置が自衛隊潜水艦隊に送られていき各艦が対潜魚雷にインプットしていく。


 “うりゅう”CICでオペレーター達が元気がない様子で次々と打ち込んでいるのを見て富下二等海佐は乗員達の気持ちが分かるので複雑だった。


「俺達がまだ探知していない潜水艦を既に探知していて詳細な座標をも分かる……本当に凄い艦だな、いや……乗員の能力かもな」


 準備完了出来た“うりゅう”以下四隻の潜水艦から二四発の魚雷が放たれて出撃しているK国潜水艦全隻が破壊されて海底に沈んでいったのである。


 航空自衛隊の方でも伊400から送られてくるK国戦闘機一機ずつの位置がリアルタイムで送られてきてパイロットはそれを長距離対空ミサイルに入力するだけであった。


「何なのだ? この戦いは……」

 日本では未だ主力戦闘機であるF15Eイーグル戦闘機パイロット『源田栄』二等海佐が唸る。

 新田原基地出撃数時間前から膨大なK国軍機の詳細な位置を示した情報が洪水のように送られてきていたのである。

 出撃命令が下り九州方面の日本自衛隊機が出撃すると同時に鳥山空軍基地から出撃した大編隊の情報が送られてきて管制官室で各機にそれぞれ振り分けていく。

 その情報を対空ミサイルに入力していき後は引き金を引くだけである。

「隊長、ミサイル射程距離に入りました! 無人偵察機グローバルアイから大編隊を探知したと」

「……正確無比なのが気に食わんが今は勝利の事のみ考えるのだ! 全機、発射」

 自衛隊機から次々と長距離対空ミサイルが放たれていく。

 ちなみにこの情景も米国やR国・C国の人工衛星が詳細に捉えていてその映像を見た各首脳部は仰天する。

「馬鹿な!! 未だ会敵すらしていないし無人偵察機がK国空軍編隊の離陸を確認しただけなのに……」


 この波状ミサイル攻撃により出撃したK国空軍機は九割が撃ち落とされて他は引き返すと言うか退却していく。


 僅か一時間以内の事でK国空海軍は事実上、消滅したといってもよかった。


 輸送艦“しもきた”“くにさき”が竹島奪還後に設置する数々の防衛機器を積んで佐世保を出港して四時間後に到着予定であった。


 その竹島を奪回する為に世界でも五指に入る程の日本が誇る精強部隊、第一空挺団が空中機動作戦、即ち航空自衛隊の輸送機(C-1・C-130H・C-2)からの落下傘降下による空挺作戦(エアボーン作戦)を展開する。


 プライドをズタズタに切り裂かれたK国では大統領の急死で混乱状況に陥るばかりか軍の指揮系統も大いに乱れてしまい終止がつかなくなっていた。


 竹島に駐留しているK国軍も自軍の艦艇が一瞬で爆沈していく様子を見たので一気に戦意喪失に陥り無断離脱を計る者達も出たが司令部も又、パニック状態になっていたのでそれを阻止する気も起らなかったのである。


 間も無く水平線から日本軍機の大編隊をキャッチした竹島守備軍は全てを放り投げて準備していた航空機に乗って竹島を放棄したのである。


 第一空挺団が降下した時には竹島は全てが放棄されていて無人状態であった。


 罠を警戒して各所を点検したが何も無いのを確認して日章旗をポールに上げようとしたときに未だK国国旗が寂しそうに靡いていたのである。


「よほど急いで撤退したのだろうな、誰かあの旗を降ろして丁寧に折りたたんで外交ルートで返却してもらおう」

 隊長の言葉に一部の者達から不満の声が出たが一喝で黙らす。


「彼らと同じ恥ずかしい事を我々がやるのか? 例え、敵対している国でも国旗と言うのは神聖な存在なのだ。それをわざわざ我が国が自分達を貶めることは無いのだ」

 一人の空挺団員がポールの所に行きK国国旗を降ろして日章旗を上げる。

 日章旗が満悦な表情で靡いているのが彼等にも伝わる。

「万歳!! 万歳!! 万歳!!」

 あちらこちらで大歓声が起こる。

 戦後まもなく不法に占拠された竹島が日本国自身の手によって奪回した瞬間であるがこれで全てが終わったわけではない。

 日本初の女性首相の手腕が今まさに試されようとしているのである。


竹島を奪回終了した一週間後、日本は米国を仲介としてK国と仲直りをしたがK国内では未だショック状態から立ち直れない国民が大多数で連日、反日を叫んで理解不能な事ばかりしていた者達も魂を抜かれた状態で茫然とするのみである。


 今までのK国人は全世界規模でいかに自分達が優れていて日本を見下す態度を取っていてそれが度を過ぎて世界中の人からドン引きされているばかりか自分達がいかに素晴らしいか勘違いして下に見下している国では無礼し放題であった。


 だが、自国の海軍と空軍が一瞬でこの世からなくなり心のよりどころである竹島(独島)もいと簡単に奪回されてしまい自我が崩壊して特に若い世代は自暴自棄になり酒や麻薬に溺れていく。


 日本に住む在日K国人も又、同じでついこの前のような自意識過剰の塊が見事に砕かれて大人しくなる。


 SNSでももっと国力を上げて日本に復讐戦を挑もうという呟きは一切見られなくなる。

 それから最も変わったのはC国やR国の領空内侵入が殆どと言っていい程、減った事で一週間の内、一回ぐらいまで激減する。

「よほど怖くなったということだな」


 防衛省は領空内侵入の激減の理由を伊400から送られてきた位置情報探知システムのお陰だと決定する。

 実は、その設計図を日下は富下二等海佐を通じて設計図を渡したのであった。


 この設計図はかつていた前の世界で作られたものでこの世界には存在しない巨大会社“朝霧コーポレーション”が制作した物であり日下は日本の為に譲渡したのである。


 奪回した竹島は数日の内にK国以上の強靭な兵器で守護している。


 島根県では早速、竹島が戻ってきたことによる大イベントを開いて大盛況で終わり厳正な抽選で選ばれた人が竹島日帰りツアーを組んで改めて領土の大切さを学ぶ。


 政治面ではスパイ防止法案が制定されて即、適用になった時点で、笠間総理による長年にわたる不正行為や売国行為をしていた公務員を始めとする国会議員を逮捕して実刑を以て、喜界島に新たに作られた政治犯収容所に収容されて愛国心教育を叩きこまれることになる。


 逮捕された規模だが、まだ数百人程度だがこの実施によることで今回の総理の本気度が分かり今まで売国的行為をしていた者達は総理に土下座をして許しを乞うた結果、重度の売国的行為をした者は喜界島送りになり中小程度は官報に氏名を掲載されて懲戒免職で終わらすのであったが彼らの末路は悲惨だろうと推測する。


 この独裁的行為は一部の者達には恐怖政治として映ったが大多数の日本国民はこの決定と実行に喝采をしたのである。

 低迷していた与党政権に対する国民の支持率が一気に跳ね上がり実に96%の総理支持となったのである。


 改めて御礼をしようと思った笠間総理を始めとする各々は次に日下達が現れたら食事会の出席を訪ねようとしたがそれから日下達の姿ばかりか伊400もいなくなり今まで通じていた無線も繋がらなくなった。


「ああ、行ってしまったのですね! 今度は何処の世界へ行きつくのでしょう?」


 富下二等海佐は“うりゅう”艦橋から今まで伊400が停泊していた桟橋を見つめるがそこには何もなかったのである。



PS

竹島奪回編、終了……次作は先進諸島の危機です。相手はC国になります

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伊400戦記 日本自衛隊、竹島奪回戦! (なろう小説にもあり) @vizantin1453

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