とあるライトノベルにて、ヒロインの回想より

 なんでこんな事になっちゃったの。

 嘆きの声は誰にも届かない。

 暗闇の中で、彼女の叫びに答える者は誰もいない。

 助けは来ない。

 彼は死んだ。

 私の一番の王子様は死んでしまった。

 大好きだった。

 私を一番甘やかしてくれる、最高の王子様だった。

 なのに、死んじゃった。

 彼女は自分の体中を貫くような激痛に絶叫を上げながら、ただ、嘆く。

 何がいけなかったの?

 あの女を追放した事が間違いだったの?

 だってあいつは悪役令嬢じゃない。

 ゲームの中で散々ヒロインをいじめてきたじゃない。

 せっかくヒロインになれたから、逆ハーを楽しめると思ったのに。

 あの女、私をいじめるどころか卑怯な手段でみんなをあたしから奪って。

 あいつも私と同じ転生者だったの。

 原作知識を利用してヒロインから攻略対象を奪おうなんて最低。

 だから、学園からも、この国からもいなくなってもらおうとしたのに。

 なんで、どうして、という呟きはもはや声にすらならない。私のせいじゃない。あの男のせい。私を騙してこんなところに閉じ込めて————違う。あの男をたぶらかした悪役令嬢が、あのクソ女が悪いんだ。私はなんにも悪くない。


 全身から力が抜けていく。力ではなく血さえも抜かれていくような感覚がする。毛がちぎり取られていくみたいで、体を鋭いナイフで繰り返し刺されているみたいで、痛い、痛い痛い痛い痛い……


 私はヒロインになりたかっただけ。

 なのに、なんで。

 どうしてこんな事になっちゃったの?

 ○○○・ローズクオーツの干からびた頬を一粒の涙がつたった。

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