第38話 違い



 捕縛した男たちを一か所に集めていると、松明を持った立花さんが、「ちょっと見てくる!」と、荷車に乗った檻へと様子を見に行った。ギャルって思った以上に行動力が高いよな。いや、行動力が高いからギャルなのか? よう分からん。



「……ぅあ」



 なんて考えていると、目を覚ましたのか、ゼンデがうめき声を上げて体を捩じらす。そして、体を縛られていることを知ると、「ちっ」と舌打ちした。



「お目覚めですか?」

「……お前らはなんだ?」



 鋭い目で睨むゼンデ。さっき理由を言わなかったのに、言うと思ったのか? まぁ、こうして高速して邪魔される心配も無いし、別にいいか。



「ちょっと人助けをしてましてね。それでちょっとお邪魔していたわけです」

「は、それを信じろと?」

「別に信じてもらわなくても構いませんよ。それで? あなたたちはなんです?」

「……何に見える?」



 にやりと、口端を歪ませたゼンデ。こいつ、意趣返しのつもりか?



「まぁ、奴隷商とその護衛といったところですかね」



 あの時のシルクハット卿は居ないようだがな。



「──居た! 居たよ、御供さん!」



 ゼンデとつまらないやり取りをしていると、檻を確認しに行った立花さんが、興奮したように叫んだ。良かった、あの女の子が無事に見つかって。居なかったら、違う手間が増えるところだった。



「……なんだ、あの獣人が目当てかよ」

「はい、そうです」



 普通に認めた。まぁ立花さんがあれだけ興奮してちゃあ、誤魔化すことも出来ないしな。



「探していた人が見つかったので、連れて行きます」



 よいしょと立ち上がると、ゼンデが「はっ!」と小馬鹿にした様に息を吐いた。



「……なんです?」

「いやなに、人助けなんて言っておいて、やる事は盗賊と変わらないんだなって思ってよ」

「……え?」



 ゼンデが何を言っているのか、そして何を言われているのか理解出来なかった。俺たちが盗賊? なんで?



「なんですか、それ?」

「おいおい、否定してくれんなよ。俺らはあの獣人を、金を払って買ったんだ。ちゃんと金を払ってな。なのにお前らは、金すら払わずに、俺らからあの獣人を奪おうとしている。これのどこが盗賊と違うってんだ?」

「そんなこと──!」



 否定する言葉を探す。が、そんなものどこにも無かった。

 俺らのやっている事は、ゼンデの言う様に盗賊と変わらないのか!?



 ──いや、違う! 俺らがあの女の子を助けるのは、女神さまから頼まれたからだろ! それを忘れんな!

 あの女の子と救うことが魔王を倒す、世界を救うこととどんな繋がりがあるのかは知らん。が、きっと女の子を助けることが、しいてはゼンデを含む人類を救うことに繋がっているはずだ。だから俺たちが盗賊と同じなんてことは無いんだ。この世界の為の行動なんだから。



「ねぇ! 鍵が掛かっていて開かないんだけど!?」

「……御託は良いので、檻のカギを渡してくれ──」

「──ぐあっ!?」



 鍵を渡す様に手を差し出すと、突然悲鳴が上がる。



「え?」




 急いでそちらに視線を向けると、拘束していた男の一人が首から血を吹き出し、地面へと倒れ込んでいた。

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