第37話 戦隊ヒーローって、勇者に似てるよね



「とうっ!」



 戦隊ヒーローよろしく、飛び蹴りで格好よく外に飛び出す。前からやってみたかったんだよな~。



「しぃっ!」



 すると、正面に居た男が、短く吐いた声をともに鉄斧を振り下ろしてきた。が、難なくショートソードで受け止め、弾き返してやる。



「うおぅ!?」

「甘い!」



 バランスを崩した正面の男の顔面に左拳をお見舞いしてやると、「がひっ!?」と顔を押さえ倒れ込む。



 倒れ込んだ男の腹に馬乗りになって、腹にも拳を落とし込んで意識を刈り取ると、今度は横から槍が突き出された。



「しゃぁ!」



 そこそこ速い突き。だがそれも、首を反らして難なく躱すと、目の前を通り過ぎようとしていた槍を掴み取る。そしてグイっと引っ張り込んだ。



「──おいっ!? がはっ!」



 クンっと引っ張られた槍の男の、がら空きになっていた鳩尾みぞおちに一発入れて、こちらも夢の中へとご案内した。



「ナイルの突きを掴み取るなんて、どんなバケモンだよっ!」



 少し離れたところで、ゼンデが驚いている。あれ、やり過ぎたか? ってか、あれくらい出来ないのかよ。レベル11の立花さんだって出来るぞ。……もしかすると、この世界の人間はかなり弱いのか?



「くそがぁ!」



 悪態をついたゼンデが、落ちていたショートソードを拾い上げると、俺へと向かってくる。そして、ヤツの間合いに入るや、剣を横に薙いだ。



「遅ぇ!」



 その横薙ぎを、一歩引いて簡単に躱すと、そこから一歩踏み込んでゼンデの顔面を殴りつける



「なっ!? がふっ!?」



 握っていたショートソードをあっさりと手放したドーンは、馬車を曳いていた馬の所まで飛んでいき、馬に当たってドサリと地面に落ちる。突然のことに驚いた馬が、いななき暴れていた。



「ふぅ、もう居ないかな?」



 額を手で拭う。大して疲れてもいないが、癖みたいなもんだ。



 ショートソードを鞘に戻すと、山小屋の中が静かになっていることに気付いた。あっちももう終わったのかな?



 壊れ割れた窓に近づき、中の様子を窺うと、立花さんの周りに、男たちが仰向けうつ伏せに倒れ込んでいた。



「……さすがに殺してないですよね?」

「はぁ? 当たり前じゃん。私が人殺しなんて真似、するわけないじゃない!」



 勇者の剣をインベントリに仕舞いながら、立花さんが口を尖らせた。

 あー、これはいずれ盗賊かなんかが出てきて、人を殺すことに抵抗があるとかなんとかのフラグが立ちましたねー。まぁ、今は良いか。



「そうですよね。さて、ではこの人たちを縛っちゃいましょうか」



 山小屋の片隅にちょどよくロープがあったので、これで縛ってしまおうと、ショートソードで適当な長さに切って、立花さんへと渡す。



「なんで私が」とプリプリ怒る立花さんをまぁまぁとあしらいながら、外で倒れている護衛も山小屋の中へと運び入れ、手足を拘束していった。



 全員を縛り終えたところで部屋の中央に集める。その中には、立花さんをこの山小屋まで連れてきた猫背の男の姿もある。その手はかなり鬱血していた。縛ったのは立花さんだが、他の人に比べ、強く縛られている気がするが、気のせいだと思おう。

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