第8話 笑えない冗談
嘘だろ? いや、立花さんが嘘を吐くとは思えない。という事は、立花さんにも見えていないって事か!? なんで? どうして急に!?
「え、どうして!?」
「……あのぅ、そろそろ登録を進めてもいいですかね?」
「え、えぇ」
腑に落ちないものを抱えたまま〈鑑定玉〉に触れ、冒険者登録を進めていく。〈鑑定玉〉に出ている名前を、受付の女性が手元の紙にスラスラと書いていく。
「はい、これで『ミトモエイジ』さんと『タチバナイオリ』さんは、無事に冒険者に登録出来ました」
「これから宜しくお願いしますね♪」と、一礼する受付の女性。ひとまず、無事に冒険者になれたので、今は良しとしておこう。スタータスに関しては、後で
「では無事に冒険者となられましたお二人に、私から冒険者ギルドについての説明を致しますね」
そう言ってまたしゃがみ込み、カウンターの下をガサゴソと探る受付の女性。暗いから見つかりにくいのでは?
「あ、ありました」と取り出したのは、何やら色々と書かれている紙だった。何枚もあるけれど、この世界って紙は貴重じゃないのかな?
「こちらをご覧になりながら、少々お待ちくださいね」
受付の女性の女性はそう言うと、「少し失礼します」と俺たちの名前を書いた紙を持って、カウンターの奥にある部屋へと入って行った。
「あそこで座って読みましょうか」
部屋の端に3セット程テーブルとイスが置かれていたので、そちらに移動する。
紙を読むのでと、少しだけ明るくしてもらった室内は思った以上に広く、テーブルセットの他、二階に上がる階段もある。恐らくこの二階にギルド長とか居るんだろう。
テーブルで向かい合わせに座り、渡された紙に目を通す。冒険者にとっての心得やら、冒険者ギルドのルールなどが書かれているが、俺の知っている異世界ラノベに良くある設定と大差なかった。
「自分は大体知っているので、どうぞ」と、書類を全て立花さんに渡して室内を見渡していると、「あら、もう読み終わりましたか?」と、受付の女性がその手にはお盆を持ってやってきた。
「ある程度は読みました」
「駄目ですよ、しっかり読んでもらわないと。あとでここが分からないとか、ここが違うとかでトラブルになるのですから」
「問題ありません。それで、それは?」
「んもう」と可愛らしく怒る受付の女性が、持ってきたお盆から木で出来たブレスレットを取り出すと、テーブルに置く。
「お二人には、このブレスレットを支給します。こちらのブレスレットもエディソン博士が発明した物で、その材質で冒険者の力量が一目で判る仕組みになっています。冒険者にはランクがありまして──」
「──下はFから、上はSまでですか?!」
「え? えぇ、そうですけど……」
「渡した書類には書いていなかった様な」と、受付の女性が少し引き気味に首を傾けた。
「どなたか冒険者のお知り合いでも居らっしゃるのですか?」
「まぁ、そんなところです」
危ない。異世界の知識は立花さんだけに披露すれば良いんだった。あまりに嬉しくてフライングしてしまった。今後気を付けよう。
「それで、このブレスレットは、ランクが上がると自動で材質が変わるんですか?」
「いえ、ランクが上がっても変わりません。ランクが上がる度に、冒険者ギルドに来てもらう必要があります」
なんだよ、自動じゃないのかよ。なんで自動で変わる様にしなかった、エディソン!
「……読み終わったし」
静かに書類を読んでいた立花さんが、トントンと紙を纏めて受付の女性に渡す。
「お二人とも、もう理解されたのですか? 優秀なのですね」
渡された書類を受け取りつつ驚く受付の女性。まぁこの位の量なら、義務教育を受けていれば余裕だ。
「では、このブレスレットをお付けください。サイズの調整はこちらで致します」
渡された木のブレスレットを腕に嵌め、受付の女性にサイズを調整してもらった。
「これで、全ての手続きは終了です。お疲れ様でした♪」
こうして、俺と立花さんはあっさりと冒険者になれたのだった。
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