第5話 みんなの憧れ、冒険者ギルド!
山々に囲まれているせいか、たまに山の陰に隠れて陽の光がぼんやりとする中、俺たちはメイン通りを進んで行く。
朝一から歩いているというのに、思った以上には疲れてないな。これだけ歩いても疲れないんだから、ほんとレベルアップのステータスアップの恩恵は凄いよな。
「ねぇ、どこに向かってるの?」
屋台のおばちゃんとのやり取り中、少し離れた所に居た立花さんが訊ねてくる。
「とりあえず、冒険者になる為に冒険者ギルドに行きます」
「冒険者? 冒険者ギルド?」
「なにそれ?」と首を傾げる立花さん。そっか、冒険者とか冒険者ギルドって言っても分からないんだっけ。
「まず、冒険者というのはですね、困っている人の依頼を受けて解決する代わりに、報酬をもらう職業の事です。そして冒険者ギルドというのは、その冒険者が所属する団体の事です」
異世界といったらやっぱ冒険者だ! そしてその冒険者になる為には冒険者ギルドに登録申請する必要があるのだ。
「……ふ~ん。困っている人を助ける、ね。便利屋さんみたいな感じ?」
「……まぁ、間違ってはいないですけど」
平たく言えばそうだけど、夢も何もあったもんじゃないな。確かに冒険というよりもお手伝いって要素が強い事は確かなんだけどさぁ。
と、何故か抗議の目を向けてくる立花さん。なんだろ?
「あのさぁ、私たちに冒険者なんてしている暇、有ると思う?」
口調こそ大人しめだが、その顔からは『そんな暇あるわけねぇだろ? おおん?!』という圧が感じられる。そんな迫力出さんでも……。
「まぁ落ち着いてください。そこに行く理由は立花さんのインベントリにあるじゃないですか」
「私の……?」
自分を指差す立花さん。が、すぐに理解したのか「あぁ」と合点がいった様だ。
「そうです。ドロップアイテムです。それを売って旅の資金にしましょう。そうすれば、この先金策で余計な時間を取られないで済みますよ」
「まぁ、言われてみれば確かにそうかも」
立花さんには何度かドロップアイテムを売っている所を見せている。それが幾らになっているのかは知らないだろうが、ドロップアイテムがお金になる事は分かっているから、反対しなかった。
だがそれは方便でもある。本当の狙いは立花さんを楽しませる為。
冒険者になれば、この世界の色んな所に行くことになる。この世界の色んな所を知れば、立花さんももっとこの世界を好きになってくれるはずだ。
さらに俺が楽しめる! やはり異世界に来たのなら冒険者にならなくちゃいけない! それは義務だ!
「ね? だから行きましょう」
「……分かったわよ」
時間に弱い立花さんを何とか言いくるめる事に成功した俺は、屋台のおばちゃんに教わった冒険者ギルドが有る場所に向かって行った。
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