第49話 ゴブリンジェネラル襲撃



「「ギャッギャッ!」」



 夕方を少し過ぎた、橙と青がせめぎ合っている空に、ゴブリンのバカ笑いが抜けていく。

 俺の宣言を、ゴブリンの親玉の傍に居たゴブリン達がバカにする笑い声だ。中には腹を抱えて笑っているヤツも居た。おいおい、人間の言葉が理解出来ないくせに大爆笑じゃねぇかよ。ほんと腹立つヤツらだ!



「ゴブリン、ジェネラるノ、オデを、ゴロす?」



 笑う取り巻きを手で制し、ゴブリンの親玉──ゴブリンジェネラルは俺を睨む。



「デギ、ナイ!」



 ドンっと、右足を高々と上げて下ろす。



「チイざい、ヤツが、ナニを、イウ!」



 ダンっと、左足を高々と上げて下ろす。



「ニンぞく、ヨワい!!」



 掴んでいた門衛の死体を放り投げ、「ガァア!!」とゴブリンジェネラルが一吠し、持っていたロングソードをその場で振り下ろす! 



「ぐっ!」



 なんつー声を出しやがる! 鼓膜が破れんじゃねぇか! 



「「ギャシャア!」」



 それが合図だったのか、取り巻き達が一斉に俺へと向かってきた! その数、十匹!



「「ギャギャッ!」」

「掛かってこいっ!」



 錆びたナイフやこん棒、矢を握ったゴブリン達が四方から掛かってくる。

 ソイツ等を蹴り飛ばし、殴り飛ばし、斬り飛ばす!



「ふっ!」



 ショートソードで腹を突き抜かれたゴブリンが、口から緑の血を吐き絶命する。

 その背後に潜んでいたのか、石斧を持ったゴブリンが唐突に現れ、俺の頭目掛けて振り下ろしてきた。だが──



「遅ぇ!」



 ゴブリンの腹に刺さったショートソードを、ゴブリンを蹴り飛ばして強引に引き抜き、石斧の持ち手ごとゴブリンの首を跳ね飛ばす! どこぞの三連星みたいな連携だが、俺には通じねぇよ!



「おらぁ! ドンドン来いよ!」

「「ギキャアァ!!」」



 挑発をかますと、怯む様子も無い残りのゴブリンが吠えながら掛かってくる! 

 それらを薙ぎ、斬り、殴り、蹴り、突き刺す。

 緑の血をかぶる様に浴びながら、次々と取り巻きを倒していく。ゴブリン如き雑魚が何匹来ようが、俺の敵じゃねぇ!



 そうして、全ての取り巻きゴブリンを倒し終えた俺は、緑に染まったショートソードをゴブリンの親玉へと突き付けた。



「おい、もう終わりか? なら、次はお前の番かな?」

「……」



 押し黙り、微かに震えるゴブリンジェネラル。なんだよ、チビっちまったか? ならとっとと帰んな──って、ミッションがあるから無理か。



「言ったろ、お前らを殺すってよ。ビビっちまったんなら、もう動くな。今すぐ楽に──」



 殺してやる、そう言おうとした時、ヤツの違和感に気付く。あれ、そんなに太ってましたっけ?



「──ギュウオオオォオオ!!」

「うおぅ!?」



 とんでも無い声量での遠吠えに堪らず飛び退く。だからそれを止めろって言ってんだろ!



 違和感の正体。今の遠吠えをする為に、ヤツは思いっきり息を吸い込んでいたのだ。だが何のために? もう合図を送る取り巻きあいては居ないじゃねぇか。



「何だよ、命乞いか? そんな大声で叫ばなくても、助けてやるつもりなんてこれっぽっちも──」



 肩をショートソードでポンポンと叩きながら、ゴブリンジェネラルへと近付いていく。また吠えられても大丈夫な様に慎重にだ。



 すると、破壊された教会からナニかが飛び出してきた! 



「うおっ!?」



 咄嗟にしゃがむと、頭の上をナニかが通過していった! 



「一体なんだ!?」



 急いで立ち上がる。キョロキョロと頭を振ると、ゴブリンジェネラルの横に、さっきまで居なかったモノが居た。

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