第54話
そも、怪異とは何か。人間に害を成す超常現象及びその化身を指す。人間にとって無益或いは有益な超常現象及びその化身は、妖精だの神様だの様々な名で呼ばれている。
主体は、人間だ。
だから怪異は人間を滅ぼしたり殺し尽くしたりはしない。世界を滅ぼすと恐れられている怪異とて、本当に世界を滅ぼすなんてしない。怪異は人間の認識ありきの存在なのだ。
よって、怪異は時に人間の味方になる。敵の敵は味方とはよくいったもので、人間の脅威に対して怪異は敵となる。
「こーゆーのもワンショットキルとかいう?」
「バカがよ」
響き渡るのは踏切の警告音。赤色の警告灯が、世界を塗り替え切り替えた。不開踏切、開かずの踏切と呼ばれる怪異が、充のスマートフォンの画面をジャックしている。そんなスマートフォンのカメラを、充は目前の新興神へと差し向けた。
刹那、新興神を襲う衝撃。それは、厭魅と呼ばれる呪いの真似事。充のスマートフォンに映る画面と、新興神が存在する時空を繋げる荒業だ。不開踏切が使役する幽霊電車に轢かれた新興神は、バラバラに引き裂かれて散らばった。
「ネコオトコ君より暴力的で素敵だな……仕事も早いし……寡黙な仕事人って感じがする……」
「向こうはお前のこと割と嫌がってんぞ」
「オレは愛してるのに!?」
「片想いってヤツだな」
ネコオトコの妄言ではない。不開踏切の化身は女性体で、チャラい男を嫌っている。充は見た目も言動もまぁまぁチャラい。そういう訳であった。
「そっかー……この愛が通じたらいいなぁ、やっぱラブレターとか? どこ住み? てかSNSやってる?」
「東京都のどっか、青い鳥やってる」
「今はアルファベットの二十四番目でしょ!! ていうかそれネコオトコ君のプロフじゃん!!」
「俺もお前のこと割と嫌がってる」
「オレはこんなに大好きなのに!?」
ばっ、と大袈裟に腕を広げて嘆く充。その先の手に握られたスマートフォンのカメラが、ざらりと新興神の欠片を舐め撮る。と、ひくひく痙攣していた欠片たちが改めて轢き潰された。
とあるカルト宗教で信仰されていた新興神、それは教義に定められた通り、それを創り上げた人間の望む通り、人類滅亡のために蠢いていた。が、それも今夜で終わり。三体の怪異たちは、新興神の肉片を踏みつけて立ち去った。
OcculTriggerReverse とりい とうか @gearfox
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