開幕前に
誰も当選ならず
オリンピック出場おめでとうと舞莉矢ちゃん、奈緒ちゃん、遥華ちゃんからそれぞれ個人ラインで送られてきて、その半面、オリンピックの抽選に応募したが全日程で誰も当選せず落胆している事も併せて送信されてきた。
前回のオリンピックで蒼唯が優勝したことが今回の抽選の高さにも繋がったのかなと自負をしている。抽選に応募してくれたということは少なからず蒼唯や日本の団体戦を生で観たいと思ってくれているということ。抽選は運だからこればかりは文句を言っても仕方がない。
隣のベッドで幸せそうに寝ている里奈ぴょん、朝早く目覚めたのは蒼唯だから特に起こすことはせずにここで寝たら自分が起きられなくなりそう。特にすることもなく里奈ぴょんの寝顔をずっと眺めていた。
しばらくして里奈ぴょんが目覚め、欠伸しながら顔を洗う。身支度をして練習場に行くために日本代表のメンバーと合流をする。調整で短時間の練習を終えてホテルに戻ろうとしていると仕事終わりの遥華ちゃんに遭遇する。
蒼唯と里奈ぴょんが手を振ると気がついてくれ、車を停めてハザードを点てて早く乗るように促される。とりあえず乗り込み、ドライブに行こうに連れて行ってくれる。
代表選手として何か制限がある訳ではなく、門限を守れば基本的に自由だ。まだ陽が高くある場所に行きたいと考えていた。
蒼唯、そして里奈ぴょん、日本代表がどのような場所で試合をするのか確認したいからと遥華ちゃんにお願いをして会場の下見をしたいと場所を伝えて近くまで行ってもらうことになる。
近づいてくるとやはりオリンピック会場になることもあって街も付近も賑やかで屋台の出店が準備されているところが多くある。そう思うと身に沁みる。
試合会場付近からホテル近くまで車で走らせると夕暮れになり、少し早めの晩御飯を食べようかなと話になる。遥華ちゃんと会えたのも前に蒼唯の地元掛川で会って以来となる。
人よりも大きい胃袋を持つ里奈ぴょんにも満足してもらえるように現在地周辺で食べ放題のお店を遥華ちゃんに探してもらっていた。するとお値打ちの焼肉屋を見つけた。
普通コースを注文をタブレットで注文をするがハングル文字が全く読めず、食べたいものを遥華ちゃんに伝えて注文してもらう。おんぶにだっこでゴメンねと謝る。スマホのアプリで入れて翻訳しようにもちゃんと反応しない。
蒼唯ちゃんと里奈ちゃんが元気そうでよかった。舞莉矢ちゃんと奈緒ちゃんと3人で全日程、個人戦と団体戦の抽選に応募すれば少なからずどれか当たるだろうし全員で行けなくても1人でも行けると思ったけど全滅には困った。
喋りながらお肉を焼きつつ取り分けもしてくれている。何から何までしてもらっていて謝ってばかりの蒼唯と里奈ぴょん。現地で観れなくてもテレビで中継やってたらみんなで応援してくれたら嬉しいな。
お店を出てホテルまで送ってくれてまた会おうね、大会が終わったら絶対にみんなで会おうと約束を交わした。
不安な思い
オリンピック前、最後の練習を終えて翌日発送休養日で朝ってから個人戦から試合が始まる。蒼唯は体力を温存するためにゆっくり寝て休養日はホテルで何もせずにいようとしていた。
緊張しているであろう里奈ぴょんを和ませてあげようと考えていた。だが里奈ぴょんの表情を見るとそんな悠長なことを考えている場合ではなかった。
突然泣き出して過呼吸になってしまう。
蒼唯はフロントに言ってスマホの翻訳で水をもらって部屋に戻る。落ち着くまで喋らないように伝えてずっと傍にいる。深呼吸して、しばらく様子を伺っていた。
手を挙げてあおいたん、もう大丈夫だよ。ありがとうと話していた。ハンカチを渡して涙を
過呼吸になる前に何を考えていたのか話せる範囲でお願い。蒼唯に出来ることなら何でもする、友達として同じ日本代表のメンバーとして力になりたい。
「情けないよね、何が日本代表になりたいだよって自分に言いたい。そこを目指して来る日も来る日も練習して、遠征してチームの底上げをしたいって感じだよね。日本代表に選ばれたことは素直に嬉しい、だけど今度は選ばれた者として日本を背負って戦うのが怖くなってきて……」
泣くのを堪え、振り絞った声でそう語る里奈ぴょん。誰よりも傍にいるのにも関わらずそれに気がつけなかったことに悔いていた。重圧に耐えようと頑張っていた。
里奈ぴょんを抱きしめて頭を撫でた。
「いつも笑顔でいてくれてありがとう、気づいてあげられなくてゴメンね。日本代表を背負うことの大変さは蒼唯も分かるよ、なった人しか分からないことだからそれは誇りに思わなきゃ。いつまでも泣いてたら個人戦で蒼唯に勝てないよ。一緒にアーチェリー界を盛り上げよう」
再び涙を
やっと勝負師の目に戻ってもう大丈夫だなと思ってベッドで眠る。蒼唯、里奈ぴょん共に気がついたら半日くらい寝ていてお互いに笑いあっていた。
困ったこと、悩んでいることがあったら何でも言い合おう。口にするのが難しかったらラインで文字として送ってくれればいいからと伝えた。その言葉そのままあおいたんに返すねと友達の絆が今までよりも深まった。
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