過去に戻れたら

オリンピック候補

最後の遠征

年末年始に再び掛川に帰省を考えていたが立春を過ぎてから都道府県対抗の予選が行われるため、横須賀に残って里奈ぴょんと練習しようと考えた。

今年は遠征あまり行けなさそうだねと話しつつ、団体戦として一緒に出られたら嬉しいね。年末年始は毎日のように練習場で弓を放ち、自分で得点、気温と湿度まで細かく記入をしていた。自主練をしつつもケガをしないように。

大会前で自らを高めるために練習していてケガしたので出場できないでは目も当てられない。他にもメンバーがいるし誰が出ても負けないとは思うがそこに加われないのは寂しいし悔しい。

蒼唯は寮から少し離れたパン屋さんを見つけた。そのパン屋さんの中に入るとポテチパンを見つけるの何故か無性に食べたくなり、パン屋さんで美味しそうなパンと買ってきて寮に戻る。

あおいたん、一緒に団体戦のメンバーに選ばれる様に頑張ろう。里奈が自分で言うのもおかしな話かも知れないけど去年は今迄よりも出来た手応えもあるし、週の平均や月の平均点数も日を追う事に上がっていると思う。だからこの都道府県対抗の団体戦のメンバーに選ばれたい。

里奈ぴょんの口から団体戦のメンバーに入りたいと自分から言うことはなかったのに自分から言うってことはそれただけ自信があっての事だろう。

選ばれる人数は決まっているが全員が団体戦のメンバーに選ばれたいと同じ目標に向かうことは大事なこと。当然だが蒼唯も選ばれたいし、誰にも負けるつもりはない。

成人式、都道府県対抗の団体戦のメンバーに三島蒼唯、横山里奈の両選手が選出されて正直嬉しい気持ちはあったが選ばれなかった選手もいるため、冷静に返事をするだけにとどめて部屋で蒼唯と里奈ぴょんと互いに握手を交わす。

横須賀食品は神奈川県大会をスーパーシードとして準々決勝からの登場となる。試合が行われる前は普段通り横須賀食品で練習をしていた。どこが勝ち上がってきても負けない様に鍛錬している。

横須賀食品にとっては初戦となる準々決勝は横須賀中央高校アーチェリー部、準決勝川崎自動車アーチェリー部、決勝横浜タイヤアーチェリー部に勝利して神奈川県代表に選ばれる。

初戦はまたもシードで2回戦の久留米アーチェリー部、3回戦霞ヶ浦（かすみがうら）アーチェリー部、準々決勝草加（そうか）アーチェリー部、準決勝磐城（いわき）アーチェリー部、決勝で高崎（たかさき）アーチェリー部とそれぞれ勝って初代チャンピオンに輝く。

全国の頂点に立って全員で抱き合ってトロフィーを掲げて写真を撮って横須賀食品の寮に戻ってそのまま居酒屋で飲み明かした。

連覇のためには

蒼唯の目標はオリンピック連覇、そのためにはまずオリンピックに選ばれなければその時点で連覇の夢は途絶える。そう思っていた時、同部屋の里奈ぴょんが話があると声をかけてきた。

何を言い出すのか怖い、蒼唯のことが嫌いだから別の人と変えて欲しいとかそういうことなのかと不安になるがそうではないかと伝えた。

それは絶対にない、あおいたんがいなくなったら悲しい。「かなシイタケ」だよ。相手してくれないと里奈死んじゃうよ。里奈ぴょんことかわいくないの？

絶対にないと言いきる辺りがスゴい。猫を被るではなくてうさぎを被る、なんて言葉はない。キャラが多すぎて渋滞してるからするならば1人につき1つにして欲しいもの。それで里奈ぴょん、話はというのは何なのか再度聞く。

構ってくれないと寂しいのは事実だよ。それはさておいて話というのはオリンピックの個人戦であおいたんと戦える機会があればいいな。その前にはまず里奈がオリンピックに選ばれなきゃいけないけどね。

オリンピックの最終候補地に韓国、スペイン、イタリア、アメリカが挙がって最終的に韓国と決まって里奈ぴょんが行きたがっていた韓国に決まって嬉しそうな表情をしている。また焼肉やキムチが食べたいと言うのかな。

ところが里奈ぴょんからの口からは違っていた。

大量にあるご当地グッズからあるものを蒼唯に見せつけてきた。それは種類の違うチマチョゴリのお人形だった。

もし里奈がオリンピックの個人であっても団体戦のメンバーに選出されなくても一緒に韓国に連れて行って欲しい。焼肉食べたい、キムチ食べたい、チマチョゴリを着たいからあおいたんの荷物持ちでも何でもするからお願いしますと頼み込まれる。

そもそも蒼唯もオリンピックの代表、個人でも団体戦のメンバーにもまだ選ばれていないのに連れて行って欲しいとお願いされても困る。今の時点でそれを言われてもな。

それならコネでも何でも使って選ばれるように根回ししてほしいと願う。理由が明確で偽りのない願望を伝えるのは逆に清々しい気がする。それにはまず候補選手にならないとオリンピックの経験のある蒼唯はそう考えていた。

しばらくしてネットで候補選手の名前が載っていた。

蒼唯はどうなのか、里奈ぴょんは候補選手として名前が挙がっているのか不安は思いを持ちつつ確認をする。

見ると横須賀食品から三島蒼唯と横山里奈の名前がある。里奈ぴょんにそれを伝えた上でホームページを見せるとこれまで以上に喜ぶ。

韓国オリンピックに出られるチャンスだ。チマチョゴリを着れる、焼肉にキムチが食べられると燥（はしゃ）いでいるがまだ候補選手段階で選ばれたわけではない。

自分がアーチェリー日本代表として韓国に行くかも知れないということを忘れないで欲しい。里奈ぴょんが落選して蒼唯だけで行ったら恨まれるし、試合後でも今から行くと言うような気が仕方ない。

豪（えら）く韓国行きを熱望している里奈ぴょんのためにも韓国オリンピックに出場して蒼唯の目標でもあるオリンピック連覇のために明日の練習以降も鍛錬しよう。