第4章 あだ名で呼び合おう

振り向けば、いつも仲良しコンビ

同部屋にいる里奈ちゃん。何を思ったか突然仲良しの証としてお互いにあだ名を付けようと言い出した。今は学校で苗字呼びが主流であだ名を禁止されている所もあることを伝えた。


逆に何を言っているのかという顔で私たち社会人だし問題ないよ。それにあだ名って親しみを込めるものでそうでない人にあだ名を付ける人いないよと満面の笑みで答える。


親しみを込めてか……。横山里奈ちゃんで人懐っこいからと考えていて出てきたのが「里奈ぴょん」と「里奈たん」そもそもあだ名って決めて呼ぶと言うよりも自然の流れで呼ぶものではないのかなと考えていた。


三島蒼唯ちゃんだから、「あおいたん」って言うのはどうかな?ダメなら他のも考えるよ。そう言われたが悪くないとあおいたんを採用をする。次に「里奈ぴょん」と「里奈たん」だったらどっちがいいか尋ねた。


里奈ぴょんって何そのあだ名?めっちゃかわいい。ついぶりっ子したくなるような感じにしてくれて嬉しいと笑顔で答える。この笑顔に何度救われたかなと思っていた。


どこに行くにも一緒に出かけようと声をかけてくれる。

ご飯を食べる時も一緒、遠征の時も同じ部屋にしようよ、移動の電車やバス、飛行機でも一緒がいいとごねる姿を見ると何歳なのかと言いたくなる。


一緒に練習をしていて日本代表の団体戦に選ばれてもいいのになと思うくらい実力があるのに世界大会やオリンピックで一緒に戦えたらなと感じていた。


優しくて人懐っこい里奈ぴょん、練習でも誰よりもコーチの話を聞いて上手くなりたいという意欲が誰よりも伝わってきた。だからこそ聞きすぎてしまう場面もあって個人戦で勝てても団体戦のメンバーに選ばれずにいた。


入りたての時は蒼唯が初心者で里奈ぴょんに教えてもらうこともよくあったが実力を付けると立場は逆転する。とは言っても大学から始めて将来を嘱望されているということは少なからず実力はある。


余計なお節介だと思いつつも弓を放つ前に深呼吸したり、弓矢を放つタイミングや角度を変えてみてはと蒼唯がやってみてよかったことを教えると笑顔で抱きついてきてあおいたん大好きって言ってくれる。


もう愛おしくてかわいくて誰にでも人懐っこいからこそ悪い人に騙されたりしないかと見ていて不安になる。何かあったらスグに言いなよとかわいい妹のような存在。


結果が出なくて悔しい気持ちは分かるよ。自分のやってきたことを変えるのは怖いかも知れないけどまずやってみて。数試合やってみて馴染まないし結果が出なければ他の方法を模索するからと寄り添っていた。


一緒の代表

毎年行われる世界大会がイタリアで団体戦に横須賀食品から三島蒼唯と横山里奈と選出された。寮の部屋でお互いに喜びあっていた。努力が報われる姿を隣で見られて自分の事のように嬉しいなと蒼唯も感じていた。


里奈ぴょんに心得としてあくまでも内定だからケガをしないように気をつけないと、嬉しくて浮かれる気持ちになるかも知れないけどそれだと他の選手からの心象がよくないから気持ちを抑えるように。教えられることは伝える。


ずっと笑顔で頷いているからちゃんと聞いているのかと思うことも多々あったがいざ練習になると別人のように矢を射る。どっちが表の姿で浦の姿なのか傍にいても分からないくらい。切り替えが出来ているならいいかと見ていた。


毎日練習をしている姿を見ると前と明らかに違う。少し教えて数週間、数ヶ月で見違えるほど上手くなったように思えてやはり将来を嘱望されているだけあるなと感心する。


世界大会当日に揃っての団体戦。里奈ぴょんの表情を見ると緊張している様子が伝わってきてこれでは団体戦を勝てないと悟って試合前にくすぐりをしたりと和ませようと考えていた。


初めてだから緊張するのも分かるけどと笑顔で話しているとあおいたんありがとう。もう大丈夫だよと急にスイッチが入ったようにキリッとした顔になる。これで大丈夫だなと安心して試合に臨めるなと思っていた。


三島蒼唯、横山里奈の横須賀食品コンビの活躍もあって優勝を飾る。本場のイタリア料理を食べつつ観光しようとスグに帰らずピサの斜塔やスペイン広場等に寄って日本に帰国する。


飛行機、帰りの電車と寮に帰るのにずっと傍にいて欲しいと手を繋いでいる。疲れて蒼唯の肩に頭を乗せて幸せそうな顔をして眠っている。叩き起こすのも可哀想だなと最寄り駅まで肩を貸してあげていた。


最寄り駅に着いて里奈ぴょんを起こそうとすると既に起きていて次降りるから早く準備しないとねと笑顔で話しかけている。さっきまで人の肩で寝てたの知っているのかなと思うほど。


寮に戻って寝ようとするとあおいたん、寝れない。どうしようと困った子猫のような表情で見つめてくる。このまま放置して寝られるはずもなく前触れもなくしりとりが始まる。ちょっとしたら寝息が聞こえてくる。


自分から始めようと言って人を誘っておいて何も言わずに寝るのかと思ったが憎めないなと里奈ぴょんを眠る姿を眺めていた。いつもなら自分もスグに寝床につくがイタズラしようと少し起きていて寝相を動画で撮っていた。


そうこうしている間に蒼唯も眠気の頂点になり、朝に備えて眠りにつく。翌朝、スマホが鳴ってラインが届いていて確認をすると里奈ぴょんからかわいいねと送られてきた。


そのメッセージだけでは分からず里奈ぴょんにどういうことか聞いてみる。すると続けて動画が送られてきた。


それは蒼唯の寝顔動画が送れてきて同じ日にお互いにしているとは思いもしなかった。里奈ぴょんの喜ぶ姿を見ると動画を撮ったよ、送るねとは到底思えなかった。

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