区切りの付け方
どうするか
蒼唯にとって目標としていたオリンピック優勝を果たした。身体が動く限り生涯現役としてやっていきたいという気持ちは当然ある。弱くても叩かれるが強くても叩かれるのが世の中。
強いとまた三島蒼唯が勝って面白くない、周りの選手は何をしているのか。公式戦や世界大会ではシードして決勝まで当たらないようにした方がいいと言われる終い。
もうするべきことを終えたからこのタイミングで引退をして後進の育成やブラック企業で働く人たちを救うために会社を設立していくのもありだが蒼唯としてはまだアーチェリーから身を引くつもりはない。
個人的にはオリンピック連覇してアーチェリー選手と言えば三島蒼唯と真っ先に出てくる選手にならなければ。知名度が上がって街を歩けば声をかけられるくらいの選手にならなければ辞めても次のステップに進めない。
誰かに相談したいし、急にアーチェリーを辞めるとなると横須賀食品のコーチ陣が必死に止めに来ることは容易に想像が出来た。話は聞けても最後に決めるのは自分になる。
自分の人生を歩むということは自由だが責任が伴う。
タイミングの見極めが難しい。オリンピックで連覇もしたいし、全てのアーチェリー選手を対戦して勝ちたいという出来るのか出来ないか分からない野望も持っていた。
オリンピックを制して半年、あるテレビ番組の収録に呼んでもらった時に次の目標について聞かれる。普通ならば次のオリンピックを目指して練習を再開したと言うところだが、蒼唯は違った。
「オリンピック連覇を出来るのは蒼唯しかいないので負けたらアーチェリーから引退する。全てのアーチェリー選手、蒼唯を倒せるように正々堂々勝負するように」
この発言の意図としては蒼唯も毎日のように練習しているがテレビや雑誌に出てアーチェリー界を席巻しているが次世代という選手が出てきておらず、日本選手も他にもいるよと世界に知らしめるためにも勝つ気持ちでいる。
独占状態は競技においてよくない。ちゃんと試合をして代表になっているのに真剣にやってないから、八百長で勝っていると思われては寂しい。だからこそ他の選手にも頑張ってもらいたいと敢えてネットで炎上するような事を言って奮い立たせようと考えた。
寮に戻って同部屋の同期からあの発言は事実なのか、コーチ陣から呼ばれて横須賀食品の選手としてだけでなくて日本のアーチェリー界の宝なのにオリンピック連覇出来なかったら辞めるって言わないでくれ。考え直して欲しい。
想像していたようにネットは炎上をしていた。
オリンピック連覇出来なかったら辞めるって出来て当然みたいに言うな、メディアでそんな偉そうなことを言ってるけど練習をしているのかと過熱をしていた。
色々な意見があって当然だと思うが何も見ていないのに勝手なことばかり言うな、練習を見てから物を言えと思う。
ウェルカム
急いでいる時や予定がある時以外は試合後、しばらく会場でゆっくりしている事が多いがその時超えをかけてきてくれて教えてほしいと言われれば教える。
だが、試合後に声をかけるのが申し訳ないと思っているのか誰も蒼唯さん、ちょっとお時間よろしいですか、教えてほしいのですがと来る子は全くいない。そんなに怖いのかな、話しにくい雰囲気が出ているのかなと考えていた。
横須賀食品アーチェリー部内でレベルアップをするためにチーム対抗戦を不定期に行っていた。ずっと練習するのも大事だが成果を確認する場も必要だからといつからか始まって部員たちも知らされず突然対抗戦をするために常に気が抜けない。
対抗戦で負けたからといって何か懲罰があるわけではないが負けて嬉しいことはない。試合後に同期が点数のアベレージが高いけどどうしたら数字を上げられるか聞かれた、
言葉で伝えるのは難しく弓矢を持って角度やタイミングを身振り手振り伝えると意外な答えが返ってきた。分かりやすく説明をしてくれるのは嬉しいけどいいのかなという子もいれば敵に手の内を明かすのは信じられないと賛否両論があった。
聞かれたら自分の培った技術を伝えたからと言って自分が負けるとは思わない。だからと言って自分が勝つために良くないことを教えて相手を
そう考えていたらある
来る者拒まず去るもの追わずの精神。コピーのように全てマネをしようと蒼唯のどのタイミングで放ち、との角度で打っているのか聞いてきた別のアーチェリー部の子がいた。
それを教えたところでタイミングも角度も常に同じではないため、あくまでも感覚の平均を教える。アーチェリー界が盛り上がるために三島蒼唯だけでなく、他の選手も出てくる必要がある。
独占状態はよくない、この対戦は好カードだから現地で見てみよう、テレビで観戦してみようとなれば今よりもアーチェリーに注目してもらえるのではないか。だから初心者であっても世界大会に出てくる選手と関係ないと思っていた。
ある日の試合後、お昼ご飯を食べて寮に帰ろうとしていたら蒼唯に声をかけてくれた。
中学生くらいの男の子が蒼唯のことを知ってくれていて勇気を振り絞って声をかけてくれてアーチェリーを始めようかなと思っているけど難しそうなイメージがあると話してくれた。
試合会場に戻って許可を得て個別レッスンを行った。
自分の道具を渡して入門的なことだが手取り足取り教えてあげる。
すると泣いて喜んでくれている姿を見て、嬉しくなった。男の子に友達にもアーチェリーのことを広めておいてねと握手をして寮に戻る。
自分のことを知ってくれているって言わるのは嬉しい。この様に小さなことからでも続けることが大事だと気づいた。
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