知らない世界

人とは違う

オリンピックを制したことによって三島蒼唯の名前、そしてアーチェリーというスポーツが日本や世界に知るきっかけになれたのかなと自負をしている。優勝してインタビュー発信をして、言葉をつむぐことをしてきたつもりでいる。


論より証拠ではないがどれだけ蒼唯がお悩みコーナーで答えたり、初心者にはこうした方がいいと述べてもその本人の結果が伴わなければ何の説得力もない。だからこそオリンピックで結果を残せてよかったと実感をする。


大学まで弓道としてやって来て実業団チームからの誘いが来ていたものの基本は仕事の傍らプレーをする所が多く、痛い目に遭った岩谷食品は弓道だけに集中出来る環境だが経営が悪くなることを知っているから断った。


アーチェリーだけに集中出来る環境を与えてもらい、勝手なワガママで武者修行として韓国行きを応援してくれたことは感謝以外の言葉が見つからない。そろそろ自分のいる世界だけではなく、外の世界を知ろうと考えた。


そうは言っても弓道やアーチェリー以外の知り合いなど居るはずもなく、寮で同部屋の里奈ちゃん聞いてみた。


それは単純明快。大衆居酒屋に行くことかな。大概の人は仕事終わりに行って仕事のことや上司の文句やグチとかを話していることが多いかな。今夜一緒に飲みに行こうよ。


美味しいご飯やお酒を提供してくれる居酒屋を知っているからさ。私たち門限もあるからあまり遅くまでいられないけど。


普段あまりお酒を飲むことが少ない蒼唯、あまり度数の高いお酒ではなくて低めのカクテルを飲みつつ、ツマミの定番のたこわさやからあげ、枝豆などを注文をする。


個室であっても隣の人の声がよく聞こえてくる。

聞き耳を立てるのはよくないと思いつつもどんな話をしているのか、自分たちの声を小さめにしながらお酒を飲みつつ食べていた。


他にも焼鳥やだし巻き玉子、ポテトフライを食べていると隣の席にいたら人たちが会計をしようとしていた。ここは自分たちが払うので、タクシー呼んでおきましたので次のプロジェクトに推薦してもらえると……。


この話を聞いてスグに上司と部下の飲み会だと分かった。

普通の仕事をしていたら気を遣うだけじゃなくてこびを売っている姿に気が休まらないだろうなと呟く。


そうだよ、蒼唯ちゃんのようにアーチェリーだけで生活しているメンバーは少ないよ。みんなああいう風にゴマ擦りをして自分は上司の味方ですよってアピールして出世していく様な悲しい世の中だよ。残念だけど。


蒼唯たちも会計を済ませてお店を出ようとしたら泣きながら飲み会に参加を強要されている子がいた。見るからにパワハラであり、セクハラでもあるなと思って殴りたい気持ちでいっぱいだった。


自分が手を出してしまってはまたケガをすると思ってとりあえず警察に通報してお店の人にも事情を説明して後は託す。全て片付けてから帰りたかったが門限があるため、諦めた。


部屋に戻っても心配していたが、翌朝に逮捕されたと報道されていて女の子のメンタルが気になっていた。スグにやり返してやろうと思う蒼唯だが、他人事ではないし気をつけないといけないと感じていた。


今から出来ること

体力と気力が尽きるまで引退するつもりのない蒼唯。それは自分で思っているだけでなく、寮に届くお手紙やテレビに出る時に送られてくるメッセージでそれが伺える。


弓道やアーチェリーの普及をするために教室を開きたい、そしてこの世からブラック企業に従事している人たちを救いたいと考えていた。


まず、人脈作りで色々な人と出会って話を聞いてみたいと考えてオファーをしてくれるテレビ局のスタッフさんや取材をしてくださる雑誌の編集者さんの話を聞いていた。


会社内で困ったこと、労働環境について聞いて答えにくいことはチャットで聞いたりしていた。色々メモをしながら悩みを解決するにはどうしたらいいのかと考える。


今は便利なものでスマホのアプリを入れればリモートで話したりチャットで会話をすることが出来る。だだから言えることは画面越し、言いにくいことはチャットと切り替えられること。


色々と社会勉強をしたくてどんな悩みを抱えているのか聞きたいと伝えると不平不満を言いたい会社員なら沢山いるよとテレビ局スタッフさんのコードを教えてもらう。


中々自分の話を聞いて他業種の人を紹介して欲しいとお願いすると寿退社されるのですかと聞かれた時には驚いた。まさか蒼唯に寿退社という言葉を投げられる日が来るとは思いもしなかった。


そうではなく、他業種の人はどういったことで悩んでいるのか聞いてみて統計を取ったら同じような悩みを抱えている人がいるのではないかと感じる。


ハラスメントで悩む人はきっと多くいるだろう。今の生活に充実しすぎてもう自分が未来から来て生まれ変わりだと忘れそうだがハラスメントのバイキングにいたからこそそこで悩んでいる人たちを救いたい。


蒼唯だけだろうか。何か目標を見つけて進んでいくとたまに原点って何だったのかを忘れてしまうクセがある。今は弓道やアーチェリーの普及とハラスメントで悩む人たちを救うためにまずは色々な人と話して悩みを聞こう。


時間は蒼唯が決めてしまうがそれでも悩みを話すだけでも気は楽になる機会になればと考えていた。

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