帰国

得たもの

数試合韓国で試合に出て、帰国の日に仁川いんちょん国際空港では家に長期間居候いそうろうさせてくれた舞莉矢ちゃん、通訳を務めてくれた奈緒ちゃん、運転手を務めてくれた遥華ちゃんが涙を流してくれていた。


それだけでなく1年にも満たないのに仲間として見てくれた仁川いんちょんアーチェリークラブの人たちから忘れないようにお手紙とチマチョゴリを着たお人形をプレゼントをしてもらう。それぞれ握手を交わして次は世界大会やオリンピックで会おうと約束をする。


連絡先を交換して定期的にラインをしよう。韓国行くことがあれば伝えるし、日本に来る機会があればまた連絡してと菜緒ちゃんを通じて伝えて羽田国際空港に飛ぶ。空の上でチマチョゴリの人形を見ていると韓国のことを思い出してで涙が出る。


ほぼ1年ぶりに横須賀食品アーチェリー部で練習をする。

周りから見て何か変わった様子はないようだが蒼唯自身、何かアニメやマンガで出てくるような必殺技を手に入れた訳ではない。だが雑音も何も気にしなくなった。


弓を離すタイミングや角度、真っ直ぐ飛ばすと言うよりも放物線を描く軌道にするにはどうしたらよいかと数値化出来れば理想に近づくのではないかと蒼唯なりに考えていた。


コーチに提案をするもののそういう機械があれば理想だが導入している国は限られた国とクラブしかない。理想があっても現実では中々難しい問題があると言われる終い。


その話を聞いて煮え切らないと感じる蒼唯は練習後に再びコーチに駆け寄ってそういう機械がないのなら放物線を図る機械と射弓測定の機械で数値化したらいいのでは。それがダメなら物理の公式を応用してみてはと伝える。


三島蒼唯個人として公式戦で勝ちたい、世界大会やオリンピックに出場したい気持ちがあるが自分だけのために提案している訳ではなくて横須賀食品として取り入れれば団体戦でも勝てるようになるし、底上げにもなる。


その他にもその機械があるならば横須賀食品アーチェリー部に進もうかなと後身の入部にも繋がるのではないかという思いでもあった。意見を伝えると検討しておくだけ。


たとえ若手で成績が伴わなくても勝負師である以上、負けは許されない。広告塔としてアーチェリーで勝ち続けることが蒼唯に出来る唯一の役割。その役割を果たすためにはどうしたらいいのかを考える必要があると自負をする。


まず目指すは横須賀食品アーチェリー部のエースとして勝利に貢献して公式戦で勝つのが当たり前、世界大会に出場して負けないようにしてオリンピックでも勝てるような選手になれるようになりたいと段階を踏めるようにしたい。


避けるために

蒼唯には個人として、横須賀食品のメンバーとして結果を出すために常に鍛錬をしている他にどうしても負けられない理由がある。


それはずっと弓道、そしてアーチェリーとしてやって来ているためケガをせず少しでも息の長い選手として活躍しなければ地獄の会社員生活が待っているためだ。


全てが全てブラック企業ばかりとは言わないがまた就職ガチャに外れてしまうと体調を崩して病院送りになると危惧をする。


自分の与えられた仕事が終わっていないのならば残業するのは分かるがその時に残業代を請求しないようにタイムカードを切ってからサービス残業を強いる。


終わるはずもないのにも関わらず上司の仕事を振って自分は帰って人に仕事をさせる。終わった仕事を提出すればまるで自分がしたかのように手柄を持っていく。


それはおかしいと波風を立てれば逆らうな、上司の言うことは絶対等とパワハラをする。呼ばれてもいない上、時給も発生しない接待やムダな飲み会に付き合わされては会社の方針に文句を聞かされる。聞くだけで意見は述べられないという拷問。


キレイでかわいい女子社員を見つけては自分の私利私欲のために好き放題しているのに誰にも言うなよ、口外したら分かっているだろうなと脅迫をする。


社員が肉体的なケガや精神的に追い込れて潰れようが関係ない。それでフラッシュバックして自分で殺めてしまってもお構いなし。


平謝りの謝罪とお金を払えばいいと思っていて人何ていくらでもいるから潰れたら他の人を雇えばいいだけの話だと勘違いしているブラック企業は捜せばどれだけあるのか。考えただけでも恐ろしい。


会社員生活をしないためにも絶対アーチェリーとして結果を出さなくてはならない。まず日本でアーチェリーといえば三島蒼唯だと知名度を上げる必要がある。世界大会に出られる実力をつけてオリンピックに出ると強い気持ち。


目的はオリンピックで金メダルを獲得すること。そしてオリンピックに出たとして数々とメディアでハラスメントに苦しむ人たちのために声を上げられる所は社内だけじゃなくて労働基準監督署(通称労基)という機関もあるよと大にして言いたい。


自分が被害に遭ったからこそブラック企業撲滅のために人肌脱ぎたい。ハラスメントをしてまで売上至上主義では誰も働き手がいなくなるし、そういった所は最終的に買収されるか倒産のどちらかの道を歩むことになる。


弱いものが泣き寝入りするような世の中ではダメ、時間はかかってでも労働基準監督署に斡旋あっせん出来る会社や営利団体であっても作れればなと将来のことも考えていた。


アーチェリー選手としてだけでなく三島蒼唯としてこの理不尽の世の中を変えたい。だからこそまずは自分を知ってもらう必要があるなと強く感じていた。

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