第3章 異なる人生
初心者として、慣れとして怖い
静岡体育大学を卒業をして初の県外、そして初の寮生活をすることになる。不安で押し潰されそうになっていたが舞莉矢ちゃんや弓道部の先輩や同級生、後輩からも何かあれば連絡してねと優しい言葉をかけられた。
そしてアーチェリーは何も知らない蒼唯、入寮して同部屋には同期が声をかけてきてくれた。その子は
里奈ちゃんからは分からないことがあれば何でも聞いてね。アーチェリー部のメンバーとしても同級生としてプライベートでも仲良くなれたら嬉しいなと優しい笑顔を見て信用してみようと思っていた。
初日からアーチェリー部として練習に参加していたが身体に染み付いたものは中々払拭出来ない。弓道とアーチェリーは弓を使用するという意味では同じだが全く違うと頭で理解していてもそれが出来ずにいる。
弓が違うから今迄の感覚では違う、的に当てればいいものから得点を気にしなくてはならない。そして射る目的、弓矢を引き直せるかどうかと慣れるまでに時間がかかる。その中でも弓の違いと引き直しが等が特に手に馴染まない。
蒼唯自身早く慣れるようにと来る日も来る日も何本も放っていたが周りの見方は違っていた。大学で弓道を成績残してもアーチェリーに変えるとこんなものか、三島蒼唯ってスゴいと聞いていたけど見かけ倒し、中には同じ弓矢を使っているのにどうしてなのと声も聞こえていた。
自分で頑張っていると言いたくない蒼唯だったが周りの見方がこんなにも違うのかと自分が思っていた以上に大きい。自分を奮い立たせるために大丈夫だ、焦らずゆっくりと深呼吸しながら呟いている。
ずっと弓道で時代を席巻してきた蒼唯だったが大学からアーチェリーを始めてそのままアーチェリー部に入ったこと練習相手で戦うと得点差は目を当てられないほど。どうすれば点数を縮められるのか、頭を下げて仲間に尋ねる。
だが聞いた全員が全員教えてくれるわけではない。弓道で時代を席巻してきたプライドはないの、
それを聞いて蒼唯は感じた。弓道で時代を席巻してきたと
上手くなるためならプライド何て邪魔なもの、だからこそアーチェリー部で成績を残している人に頭を下げて自分のフォームや改善点、どうすればよくなるのかを教えてもらおうとしていた。
断られても何度も何度も
諦めが悪いと寮の部屋に蒼唯を入れてくれた。
話を聞いていると蒼唯と同じように大学まで弓道をやっていて横須賀食品に入社してからアーチェリーに切り替えてオリンピックを目指していると話をしてくれた。
自分が苦労したからこそ自分で手応えを掴まなきゃいけない。蒼唯が積み上げてきた実績を知るからこそ教えたら自分が抜かれて立場がなくなることを恐れていたと話す。
この話を聞いて仮に個人戦ではそうかも知れないが団体戦で大事なのは個々の能力よりも絆や団結力が必要だと思うと話すと手のひらを返して惜しげもなく教えてくれた。
最初から素直に教えてくれればいいじゃないですかと冗談をいいつつ気がついたら就寝時間ギリギリまでお互いのことやプライベートを喋っていた。
実践あるのみ
先輩の部屋には毎日のように行って
何がよくて何が悪いのか、姿勢がよくても弓の引きが甘かったりと具体的に指摘してもらうようにお願いをする。少しずつ段階を踏みつつ人よりも多く経験を積みたいと出られる個人戦の大会には全てエントリーするくらいの勢い。
練習で精度を上げても実際に試合で出来なければ意味がない。経験を積むためなら最下位でもいいくらいな気持ちでどんどん試合に出て優勝した人はどういう選手で何点なのか、その違いはどのくらい差があるのかと見るべき所は沢山ある。
コーチにも見てもらいつつ行っているが完全に自分のモノにするには至っていなくてもどかしい気持ちでいる。相談をすると人のマネをしているだけではダメ、それをどう自分のやり易いようにするかを考えた方がいい。
それを聞いてマネをするだけではダメ、参考にしつつ自分のワザとして身に付けることが出来れば大きなアドバンテージになる。まだ初めて半年で徐々に慣れてきて得点も試合を重ねるごとに得点が高くなっていた。
命中率を少しでも上げるためにはただ何本も打つだけではなく、何か武器となるような物を見つけたいなと常に模索をしている。弓の引き具合を変えてみたりとやっているが中々自分の思ったようにいかない。
試合で毎回変えているせいかしっくり来ない。ならば数試合同じような弓の引き方でやってみるものの全く一緒にすることは出来ず若干狂ってしまう。後はどこを変えればいいのかと嘆いていた。
オリンピックに行きたいと弓道からアーチェリーに転向してよかったのか、今のままだとオリンピック出場出来るのに何年かかって勝ち続けることは出来るのかと不安は尽きずにいた。
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