この場所に

ギャップ

かわいい制服を着て憧れの島田女子高校に電車で通うことになり、どんな出会いがあるのかと楽しみで仕方がなかった。女子校だからみんなお淑やかで華やかなイメージだが実際はどうなんだろうと思いつつ電車に揺られていた。


体育館に入って周りを見渡して全員女子、当たり前だがその光景に新鮮さを感じつつ入学式を終えて教室に向かう。何人か喋れる中で馬が合わない人とはあまり関わらないようにしよう。


陰湿なイジメに遭遇しないように気を付けなれれば、そして親切心からお山の大将を潰そうとしたらケガをする可能性があるから気をつけなければ。それで何度後悔したのか。


授業が終わりそのまま弓道部に向かって練習をしていると周りの人のレベルに驚く。仲間と切磋琢磨していければ自分自身もっとレベルアップできるなと感じていた。


弓道部は全国各地から有望な選手を獲得していることもあって寮生活している生活している生徒が多く、自宅から通っている生徒も蒼唯以外にもいたが同じ方面から通う人がおらず寂しく感じていた。


6月に行われる新人戦に蒼唯は個人戦、団体戦ともに出場のをしてどちらでも優勝を飾る。初めての大会の活躍したこともありエース格として島田女子高校を引っ張る存在となる。


電車通学で誰とも喋らずどこにも寄らずに家と学校の行き来って寂しいな、電車を待つ間に散策しようと考えた。すると知らなかっただけで裏道にはコンビニがあってかわいい洋菓子屋やお肉屋さんにコロッケやハムカツが格安で販売されている。小腹が空いている時に丁度いい。


部活後に寄ることが日課となり、通い組の何人かで洋菓子屋やお肉屋さんに週に何度も行くようになって大会前や結果を残したと伝えると差し入れとしてシュークリームやコロッケを差し入れしてくれることが多々あった。


その中でも驚いたのは一体値段がいくらするのか分からない大きなホールケーキやサーロインステーキの塊をもらった時は嬉しさよりも申し訳なさを感じていた。


ここまでしてもらって負け報告は出来ないと通い組にとっては試合の原動力となっていた。弓道部の名門の島田女子高校は勝って当たり前と言うのが周りの見方だ。


その中でプレーをするのは大変だが名門にいるものとして団体戦の勝利、そして個人の勝ちに関われることは素直に嬉しいしやりがいを感じていた。


これで舞莉矢ちゃんが加われば鬼に金棒だがいつ来るのかな、一緒にプレーしたいから島田女子高校に来たのにと電車の中で呟いていた。来た時なためにもっと学校周辺や駅周辺のお店を虱潰しらみつぶし探そうと決めた。


ダブルエース

夏休み、弓道部の練習と大会で気がついたら終わっていた。それだけ充実していたのかなとも感じていた。次第に島田女子高校弓道部宛にファンレターや差し入れが届くようになって嬉しく感じていた。


中には個人宛に送られている子もいて、スゴい知名度だなと話し合っていた。え、男の子?いいな、羨ましいと話し合うくらい部内は仲がよくてフレンドリーでいる。


始業式で学校に行くと転校生が新たなクラスメイトになるとウワサが広まっていた。その名は「森舞莉矢」で偶然にも席が隣同士になって自己紹介するとアメリカでも静岡に弓道のスゴい子がいるって聞いていたよと盛り上がっていた。


少し喋った所で考えた。

舞莉矢ちゃんに会いたくてこの高校に来た、過去に来たのは舞莉矢ちゃんと一緒に弓道したいからだよと心の中では思っていたが向こうからしたらこの子何を言っているの、アメリカから来ることをどうして知っているのかと敬遠される点がいくつもあるために冷静に喋るようにした。


そして一緒に部室に行って練習をして帰る方向が同じだからと毎日学校を行き来する仲になっていてお肉屋さんや洋菓子屋を紹介するとよく足を運ぶようになる。

「右の三島、左の森」として島田女子高校弓道部を牽引することになる。


団体戦ではお互いに心強い味方だが個人戦で同校対決で舞莉矢ちゃんや他の部員と当たることがよくあり、その時は難しいが負けを譲るつもりはなくて真剣勝負で挑む。だが試合後に部室に戻ると気まずい雰囲気になりつつ反省会をして帰ることもある。


個人戦で同校対決が出来るくらい全国各地から精鋭が集まっていることが伺えるが極力戦わないのが理想だな。舞莉矢ちゃんとは他愛のない話をするくらいの関係性になって嬉しいがボロを出ないように気をつけないと。


ある日、学校に行って下駄箱に靴を入れようとすると何かが手紙が置かれていた。嫌がらせか決闘を挑むものが出てきたかどちらかだろうと思いつつも決めつけはよくない、時間をかけて書いてくれた人にそれは失礼になる。


教室に行って手紙を開くと丁寧な字で曲がらないように薄い線が引いてあって蒼唯さんを応援していますと綴られていた。返信を書こうにも宛名がないので難しい。


照れ屋さんでかわいいなと思いつつも誰か分かったらちゃんとお礼を伝えたい気持ちがあった。もっと頑張って三島蒼唯のファンだと胸を張れる選手になろうと決めた。


隣の席で覗き込む舞莉矢ちゃん。だが全く声を聞こえておらず下敷きで風を飛ばしてくれてやっと気がつく。蒼唯ちゃん、お客さんだよと廊下に行くように伝えられる。


小さくて華奢な子でザ女の子は恥ずかしそうにお手紙読んでくれたか聞いてくる。読んだよ、ありがとうと伝えて名前を聞こうとすると去っていった。何か悪いことをしたのかと思いつつ教室に戻る。


そのことを舞莉矢ちゃんに話す。蒼唯ちゃんの事が好きなのかもね。女子校って女の子が女の子に恋をするみたいなのあるからさ。応援してくれる子がいていいね。舞莉矢にまそういう子が現れるのかなと今にも泣きそう。


それはマンガの世界だけの話だと蒼唯はそこまで深く考えていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る